あまり考えたくない事ですが、誰でも死は避けることは出来ません。そして家族が亡くなる事は、今までの生活を根底から覆す衝撃です。
勿論、亡くなる日をあらかじめ知る事は出来ません。病気で余命告知される事もありますが、告知よりも早期に亡くなる事もあれば、告知よりもはるかに長生きする事もあります。また突発事故により亡くなる事もあるでしょう。
そんな誰にも訪れる死に対して、どんな心の準備をしておけばいいのでしょうか。
残念ながら私は宗教家でもなければ、心理カウンセラーでもありません。ましてや霊能力者でもありません。ただ言えることは、そして誰もが納得される事は、残された家族の生活を守り、今までの生活を維持していく事ではないでしょうか。その為にはどうしてもお金の力が必要ですし、いつか訪れる死とお金について考えておく事が必要です。
今回は事例として、妻が亡くなった場合について知っておきたいお金の力を考えてみます。
夫が亡くなった事例はよく見られますが、妻が先に亡くなった場合については比較的少ないので、あえて妻が亡くなった場合を考えてみます。
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もし妻が亡くなったら…
さて、死とお金について考える時、まず生命保険が頭に浮かんできます。皆さんも万が一の場合に備えて生命保険に加入されていると思います。
しかし、一家の大黒柱である夫には生命保険を準備しているけれど、妻にはせいぜい医療保険に加入しているのみ、もしくは葬儀代程度の保険に加入しているだけという家庭が多いようです。
確かに家庭の収入の大半を夫の収入で賄っている場合は、夫の死亡は家計にとっては大きな痛手となります。しかし、妻の死亡については夫の死亡と異なった対応が要求される事があります。
例えば一時的に家政婦を頼む必要があるかもしれません。同居の親の面倒を妻が見ていた場合には、親を施設に入所させなければならない事も考えられます。
勿論、葬儀の費用も必要でしょう。ちなみにその費用は全国平均で約200万円となっています。<日本消費者協会「第9回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」(平成22年)>
保障額の平均を見てみますと、世帯主の死亡保険金約1700万円に対して妻の死亡保険金は約900万円となっています。<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(平成24年度)>
遺族年金も含めて今の保険で大丈夫なのか検討を
この平均の死亡保険金が多いか少ないかは、それぞれの家庭環境は勿論ですが、次の遺族年金も含めて検討する事が必要です。
まず遺族基礎年金については従来、夫には支給されませんでしたが、平成26年4月以降に妻が死亡した場合、子供(18歳到達年度末までの子)のいる夫も遺族基礎年金を受け取れるようになりました。つまり父子家庭へも支給される事になりました。(遺族基礎年金の金額は定額で約78万円です。子供の加算あり。)
一方、共働き夫婦で妻も会社員であった場合は遺族厚生年金も支払われます。
ただし、夫(父母、祖父母)が受け取る場合は要注意です。
それは夫(父母、祖父母)については55歳以上で遺族の対象となりますが、60歳までは支給停止となるからです。(ただし、夫は遺族基礎年金の受給権を有するときは、60歳前でも支給されます)(遺族厚生年金の金額は報酬比例の年金額の3/4です)
生命保険は被保険者が死亡すれば、死亡保険金受取人に保険金が支払われます。その意味では確定したお金の力と言えます。
しかし、遺族年金の場合は死亡当時の子供の年齢、夫の年齢、保険料納付要件、被保険者期間等によって支給が左右されますので、確定しないお金の力と言えます。特に夫の場合55歳以上で遺族対象となり、60歳までは支給停止になる制約がありますので、この点からも改めて生命保険の検討が必要であると思います。
子育て世代で妻を亡くした夫と、子供が成人した後に妻を亡くした夫のその時の年齢によって遺族年金の支給が全く異なります。妻を被保険者とする生命保険が不十分な為、不確定な年金で遺族の生活が不安定にならない為にも、はたして今の保険で大丈夫なのか一度検討してみて下さい。
最後に、妻が亡くなった場合はどうしても夫が諸官庁や保険会社への手続きを日々の仕事もすすめる中で対応せざるを得ません。死亡診断書、戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、所得証明書、年金加入期間確認通知書等の書類の準備と仕事の同時進行です。
とりわけ年金加入期間の確認は、本人が亡くなってしまってからでは本人に尋ねる事もできません。生前から日本年金機構から届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を利用して、お互いの加入期間を再確認しておく事をお勧めします。(執筆者:松山 靖明)