先週の市場動向で一番のみどころとなったのは、6月10日の久々の “黒田バズーカ” 発射です。黒田日銀の過去を振り返ると、黒田バズーカと揶揄されるほどの強烈で、かつサプライズ的追加緩和政策が発表されたのは2014年10月31日でした。
今回の黒田バズーカは “逆バズーカ” 。円安を強力に推し進める黒田バズーカとは反対で、円安進行牽制ともとれる発言によって黒田逆バズーカが発射されたのです。結果、ドル円は2円近く急騰し、それに引きずられる格好で日経平均株価もずるずると下げていきました。
「更なる円安はありそうにない」
衆院金融財務委員会でこのような発言をした黒田総裁の真意は如何に? それを探るべく、今週の注目イベントと注意点を見てみましょう。
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目次
今週の注目イベント2つ
16-17日のFOMC
5月22日、イエレンFRB議長は講演の中で「年内いずれかの利上げは適切」と、利上げ時期に関して一歩踏み込んで言及しました。
その後発表された米・経済指標は市場予想を上回る数値が出ており、偶然なのか、それともお見通しだったのかは分かりませんが、少なくとも年内利上げXデーまでのカウントダウンが刻々と進んでいる印象です。
そのような状況下で開かれる、16-17日のFOMC(連邦公開市場委員会。アメリカの金融政策を決定する機関のこと)。
利上げ時期に関し、さらに踏み込んだ発言があるのか。サプライズで「6月利上げ」が発表されるのか。6月利上げの可能性は限りなく小さいと思いますが、仮に「秋頃/冬頃」または「9月/12月」という言葉が盛り込まれるようならば市場への影響は小さくないでしょう。
年内利上げXデーが近づいている今、投資家は万全の態勢を整えておきたいところです。利上げによって恩恵を得られると思われる株を仕込んでおくのは今のうち、かもしれません。(参考記事:アメリカ利上げXデーは近い? 利上げ前に仕込んでおきたい銘柄)
ちなみに、利上げ前に仕込んでおきたい銘柄としてリコー(7752)を挙げましたが、テクニカル的にもファンダメンタル的にも押し目買いのチャンス到来と見ています。参考までに。
18-19日 日銀金融政策決定会合
冒頭でもふれましたが、6月10日、黒田日銀総裁が円安を牽制するような発言をしたため、その一言が為替・株式市場全体にすぐさま波及しました。
ただし、甘利経済担当相がすぐに「円安牽制」であるという市場の見方を否定し、翌日には「黒田総裁の発言は不注意だ」という政府筋のコメントが報道されていましたので、黒田総裁の発言を別の角度から分析する必要があると思います。
いずれにしろ、日本の中央銀行にあたる日本銀行の総裁の発言は重い、というのを実感しました。たった一言がドル円相場を2円近く動かしてしまうのですから…。
したがって、黒田総裁の真意を知るためにも、18-19日の日銀会合、そして19日に行われるであろう黒田総裁の会見に注目です。会見ではあの一言が「円安牽制なのか」、質問攻めに合うと予想されます。会見場スタッフの方、黒田総裁がこまめに水分補給できるよう準備をお願いします。
ただ、黒田総裁が円安牽制のために「更なる円安はありそうにない」と発言をしたと、仮に真意が円安牽制だったとしても、黒田総裁がそれを認めることはないと見ています。
円安牽制だったと言えば、「異次元金融緩和=円安」を推し進めてきた日銀政策に矛盾が生じます。また、円安牽制宣言をすれば、今後の口先介入の効果が薄れることになります。ですから、多方面から見て、黒田総裁の発言は円安牽制ではなかったというのが結論になるのかと。
その点に留意しつつ、黒田総裁の会見に注目です。
まとめ
・FRBイエレン議長とFOMCがどこまで米金利上げについて言及するか
・日銀会合と黒田総裁会見で “黒田逆バズーカ” の真意を探る
今週は特にこの2点に注目です。(執筆者:堀 聖人)