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今、ちまたに空き家の問題が勃発しています。東京をはじめ、地方の各地域でその問題は深刻化しています。
その原因としては、子どもが親の家を継承して住まなくなった核家族化をはじめ、もちろん人口の減少もその空き家問題に拍車をかけています。さらには、空き家の問題の原因としては相続が発生しその遺産分割を共有持分で分割してしまったこともあげられるでしょう。
空き家問題の解決策として、一番、難しいのは、どうあっても「売れない」、「貸せない」、物件でしょう。この場合、自分で住むという用途がなければ、にっちもさっちもいかなくなるでしょう。
あげくには、固定資産税の軽減のため、崩れんばかりになった家を放置しているといった状態も見受けられるようになります。
反面、立地に恵まれていて「売ること」も「貸すこと」も容易な住宅なのに荒れ果てた「空き家」となっているものも見受けられます。何とでもできる条件の恵まれた物件なのに、何故…
このようなケースでその物件の不動産情報を調べてみると、権利者甲区に所有者が30人で共有しているといったことがあります。
そして、取得原因をさかのぼっていくと、ひいおじいちゃんの相続、おじいちゃんの相続、等々…何度かの相続を繰り返すたびに、相続人の共有持分で分割を行った結果、所有者が何十名といったケースが出てくるわけです。
こうなると、もう大変なことになってきます。貸すことも、売ることも、更には、壊すことさえ、共有者全員の合意がなければ、前に進みません。ただ、単に、立地に恵まれずに、「貸すこと」も「売ること」も出来なかったケースとは違うのです。
ただ単に、立地に恵まれていないケースの場合は、少なくとも、壊して更地にすることはできます。一応の空き家の対策とはなるわけです。ただし、共有持分の場合、壊すだけでも、相当の手間と苦労がかかります。
相続が発生したときには、とりあえず、共有で分割しておけば、全ての手続がスムーズに進みますので、つい、共有持分で分割しがちになってしまうかもしれませんが、のちのちの手間とリスクを考えた場合、共有での分割は御法度です。
やはり、相続には、事前の準備が大切です。できることであれば、遺言書、それも公正証書遺言を遺しておきたいところです。20年先、30年先も円滑にものごとがすすめられるように。備えあれば憂いなしです。(執筆者:荒木 達也)