平成27年8月14日にユーロ圏財務相会合が行なわれましたが、その時に最大860億ユーロ(約11兆8,700億円)に上る、ギリシャへの3年間の金融支援を正式合意しました。
これでギリシャの財政破綻は当面は回避され、世界の金融市場はしばらくの間、ギリシャ問題に頭を悩ますことはなくなりそうですが、本来は6月末の金融支援の期限までに解決すべきだったので、今回は本当に危なかったと思います。
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正式合意が遅れた理由は年金額の削減
正式合意が遅くなった理由としては、EUなどの債権団とギリシャ政府が、年金額の削減と税制改革で対立したことが挙げられますが、ギリシャ政府は平成22年から平成24年にかけて平均で27%、最大で50%も年金額を削減しました。
そのためギリシャ政府はもう十分に削減したと主張する一方、EUなどの債権団はまだまだ削減できると主張して、話し合いが平行線を辿ってしまったのです。
最大で50%も年金額を削減したのに更に削減を求めるのは、鬼のように厳しいと思いましたが、そんな厳しい主張をするEUなどの債権団でさえ、年金制度の廃止をギリシャ政府に求めておりません。
もし日本が財政危機に陥ったら、年金制度はどうなる?
もし日本がギリシャと同じように財政危機に陥り、IMFなどの国際機関から金融支援を受けた場合、年金額の削減を求められるはずです。
IMFに近い筋の専門家がまとめたとされる、ネバダレポートと呼ばれる日本再建プログラムには、「年金は一律30%以上カット」と記載されておりましたので、このくらい削減される覚悟は必要だと思います。
しかしギリシャのケースと同じように、IMFが日本政府に対して、年金制度の廃止を求めるとは考えられません。実際のところ上記のネバダレポートにも、年金制度の廃止を求める記述はありませんでした。
国家の財政危機で年金制度が廃止されるという話は、いかにも現実味がありそうですが、過去の歴史を見るかぎりでは、必ずしもその通りにはならないのです。
大手の金融機関が経営破綻に陥った際、「大き過ぎて潰せない(Too Big To Fail)」という言葉がよく登場しますが、平成24年の国民生活基礎調査の概況によると、高齢者世帯の総所得のうち69.1%を、「公的年金・恩給」が占めております。
このデータからわかるように年金制度は日本人にとって、大き過ぎて潰せない存在になっているので、日本政府は増税などを実施しながら、なんとしても年金制度の延命を図るはずです。
ですから年金制度はいずれ廃止されるのだから、保険料を納付しなくても良いという考え方は、止めた方が良いと思うのですが、生活費に余裕がなくて納付できない方は、住所地の市区町村の役場で免除申請の手続きを行います。
なお現在は平成27年9月末までの期間限定で、未納となっている国民年金の保険料のうち過去10年分を、さかのぼって納付できる「後納制度」が実施されておりますので、保険料の納付を滞納してきた方にとっては、今がそれを帳消しにするチャンスなのです。(執筆者:木村 公司)