こんにちは! 国際フィナンシャルコンサルタントの荒川 雄一です。さて今回は、一時に比べ、市場における影響力が低下してきたといわれる「ヘッジファンド」の最近の動向について、観ていきたいと思います。

ヘッジファンドの運用残高と現状
リーマンショック後には、大きく資産残高を減らしたヘッジファンドでしたが、数年前から徐々に資産残高を伸ばし、2013年の3月末には、2.3兆ドル(約285兆円)にまで増加しました。
ただその後、ヘッジファンドの主要顧客だった「年金マネー」の“ヘッジファンド離れ”が起こります。
昨年9月には、米国最大の公的年金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)が、ヘッジファンドでの運用から完全撤退を表明しました。また、今年に入ってから、オランダ年金の大手PPZWも、ヘッジファンドでの投資を取りやめています。
要因としては、
1)過去4年間、ヘッジファンド指数は、S&P500種株価指数の収益率を下回っている
2)総体的にヘッジファンドの報酬は高い
3)透明性並びに流動性が低い
といった複合的な要因が考えられます。
分かりやすく言えば、「今までは、透明性が低く報酬も高かったが、株式投資に比べ、安定的な収益を得られていた。しかし、よりコストの安い株式での運用を超えられないのであれば、必要ない」ということなのだと思います。
とはいえ、ヘッジファンドの運用残高が低下しているかというと、実は、そうではありません。
ヘッジファンドリサーチ社によれば、2015年6月末時点のヘッジファンドの資産残高は、2兆9690億ドル(約368兆円)と、この2年強の間に、残高を約30%も伸ばしています。
「???」
といった感じを受けるかもしれませんが、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の残高をみると、その「答え」が観えてきます。
今年6月末時点のETFの資産運用残高は、2兆9710億ドル(約368.4兆円)となり、初めてヘッジファンドの資産残高を上回りました。特に、今年の1-6月における資金流入額は、1523億ドルとヘッジファンドの約3倍となっているのです。
つまり、「いまだヘッジファンドに対する需要が完全になくなったわけではない。ヘッジファンドへの資金流入も増加している。ただ、それをはるかに超える投資マネーが、コストが安く、流動性も高いETFに向かっている」ということが言えます。
その最大の理由は、何と言っても“世界的な金融緩和”です。溢れんばかりの投資マネーが、ETFやヘッジファンドの資産残高を押し上げているのです。
従って、最近のファンド動向を表すならば、「ヘッジファンドへの需要はあるものの、ETFに対する需要のほうが大きくなっている」という見方が正しいといえるでしょう。
次回は、市場変化による“ヘッジファンド戦略への影響”を考えてみたいと思います。(執筆者:荒川 雄一)