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2005年11月、不動産業界のみならず日本国民を震撼させた耐震偽装マンション。あれから10年、横浜市内でマンションデータ偽装問題が発覚しました。「大手だから信用した」、「パンフレットに書いてあることを本当だと思った」と訴える当該マンションの居住者の怒りは、筆舌に尽くし難いものです。
みなさまは、どんな気持ちでこのニュースを受け止めているでしょうか。
うちのマンションは大丈夫だろうか?
こういう時に賃貸だと引っ越せるからいいよね。
マンションの人は意見がまとまらなくて大変。その点うちは戸建てだからね。
私はこの事件、お住まいになっている方の気持ちを逆撫でするようでとても心苦しいのですが、起こるべくして起こったと感じています。
私を含め一般市民は、ニュースを見ながらこう思ったはずです。
そこが、問題なんです。
戸建て住宅を建てるケースを例に、説明してゆきますね。
販売会社と施工会社の都合のいい関係
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大手のハウスメーカーに注文する場合、設計、施工、監理をワンパッケージとして契約することが一般的です。設計段階では、建て主と設計担当者がよく話し合いながら、建て主のイメージを図面に起こしてゆきます。
契約すると、建て主には間取り図が渡されます。実施設計図をもらえることもあります。施工は、提携している工務店や業者が行うことがほとんどです。設計図通りに施工が進んでいるかは、工事監理担当者がチェックします。
工務店に注文する場合はどうでしょうか。工務店とは工事契約を結ぶことになります。設計も引き受けてもらうこともありますが、多くは提携している設計事務所に依頼するか、建て主が設計士に個別に依頼します。施工する工務店は、提携する業者や建築士に工事監理を外注します。
おわかりいただけたでしょうか。
ハウスメーカーにおいて、設計と監理は同じ会社の人、施工は親会社にダメ出ししにくい立場の下請け業者という関係。工務店においてはそれぞれが提携関係か、ただ切り離されている関係。この中で、大切なマイホームが出来上がります。
日ごろ私が不動産についての知識や知恵を拝借しているビジネスパートナーは、「設計、施工、監理は三権分立」と教えてくださいました。設計=立法、施工=行政、監理=司法、というわけです。
求められる第三者による監理
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マンションなどの集合住宅であっても戸建て住宅であっても、買う人の多くは住宅建築に関しては素人です。
素人にできることと言えば、契約前の段階で複数の業者から相見積もりをとるくらいです。
工事の実施設計図よりもっと詳細な施工図を取り寄せたところでチェックのしようが無いし、建材と値段の相場もわからない。基礎工事や建築現場を訪問したところで、「わ~、すご~い」くらいしか言えません。何か不具合を見つけたとして、契約書や約款を修正するよう指示出しなんてできません。
行政の現場チェックもせいぜい2回、建築基準法と防火基準を満たしているかの確認程度。住宅保険が担保する構造材主要部分なんて、家が建っちゃってからではそう簡単に確認できないことは報道の通りです。
最初に戻ります。
「販売会社と施工会社、どっちが悪いの?」
今のところ、一介のFPである私には答えようもございません。多くの業者は、社の信用と社会的使命のためにもしっかりと三権分立し、建て主に満足してもらうよう日々努めていらっしゃるはずです。
ただ、設計と施工それぞれにおいて真っ当な第三者が監理に当たっていたら今回の悲劇は起こらなかっただろうと思えてなりません。(執筆者:古川 みほ)