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中年フリーターの問題については、以前にマネーの達人の中で、
「フリーターは400円、正社員は5,000円」で老後の備えを始めようという記事を書きました。
この記事の中で指摘しましたように、フリーターなどの非正規社員は正社員と比較して、次のように社会保険の加入率が低いのです。
健康保険の加入率:非正規社員52.8%、正社員99.5%
厚生年金の加入率:非正規社員51.0%、正社員99.5%
健康保険や厚生年金に加入しない方は、市役所などの窓口で手続きを行い、国民健康保険や国民年金に加入しますが、この両者には違いがあります。
例えば厚生年金に加入していた方が、原則65歳になった場合、国民年金から支給される老齢基礎年金に加えて、厚生年金から支給される老齢厚生年金を受給できます。
しかし国民年金に加入していた方は、国民年金から支給される老齢基礎年金だけしか受給できず、老齢厚生年金の上乗せはありません。
私はこれが中年フリーターの、一番の問題点だと思っていたのですが、実はもっと深刻なレベルの方がおります。 それは収入が少ないため、国民年金の保険料の納付をずっと滞納して、国民年金から支給される老齢基礎年金さえも、受給できなくなってしまうという方です
現在の日本は全ての国民が、何らかの公的保険や公的年金の対象となる、「国民皆保険(年金)」の体制をとっております。
しかし実際は保険料の滞納を続ければ、上記のように無保険(無年金)の状態になり、失業しても、病気やケガになっても、高齢になっても、各種の保険から何も受給できなくなります。
これは最悪の状態ですが、次のような公的年金の代わりとなる制度を活用すれば、一時的ではありますが、きちんと保険料を納付していた方と、同様の給付を受けられます。
目次
雇用保険の代わりになる制度
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雇用保険に加入している方が失業した場合、65歳未満であれば基本手当、いわゆる失業手当を受給できます。
しかし雇用保険に加入していなかった方の場合、この基本手当を受給できませんので、当面の生活費に困ってしまうと思うのです。
こういった方が利用したいのが「求職者支援制度」になり、ハローワークから指示された職業訓練を受けると、それを受講している3~6カ月の間、月10万円の職業訓練受講給付金と、訓練に行くまでの交通費が支給されます。
雇用保険の基本手当との違いとしては、本人や世帯の収入要件があったり、世帯の金融資産の要件があったりして、基本手当の受給より要件が厳しくなっております。
しかし単身の中年フリーターであれば、決して難しい要件ではないと思いますので、雇用保険に加入していない状態で失業してしまった方は、お近くのハローワークまで行き、求職者支援制度についてご相談下さい。
国民健康保険の代わりになる制度
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国民健康保険の保険料の納付を滞納した場合、市区町村は電話や手紙などで、納付を催促します。それでも納付しなかった場合には、いったん保険証を返還させ、数カ月で有効期限が切れる、「短期被保険者証」を交付するのです。
また短期被保険者証を交付した後に市区町村は、滞納者に書類を提出させ、災害その他の政令で定める特別の事情があるかを確認します。
もしそれがなければ短期被保険者証を返還させ、その代わりに「被保険者資格証明書」を交付するのです。
この被保険者資格証明書の交付を受けている間は、診療にかかった費用の全額を、病院などの窓口で支払います。
そして後日に市区町村に対して申請を行なうと、医療費の2~3割である一部負担金を除いた、医療費の8~7割が、特別療養費として払い戻されます。
ただ特別療養費から保険料の滞納分を控除してしまい、ほとんど払い戻しがない場合があるので、実質的には被保険者資格証明書を受け取った段階で、無保険と変わりがありません。
こうなると病気やケガになっても、病院などに行くのを躊躇するようになり、病気やケガをより悪化させてしまう可能性があります。
こういった時に利用したいのが、全日本民主医療機関連合会が実施している「無料低額診療事業」です。
この事業を通じて全日本民主医療機関連合会は、低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者などの生計困難者を対象にして、全国各地で無料または低額な料金の、診療を実施しております。
ただあくまで生活が改善するまでの一時的な措置ですので、継続的に利用することはできません。
免除申請すれば国民年金の代わりは必要ない
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雇用保険の代わりとなる「求職者支援制度」、国民健康保険の代わりとなる「無料低額診療事業」について紹介しましたが、国民年金にはその代わりとなるような制度は見つかりません。
しかし雇用保険や国民健康保険と、国民年金との間には、決定的な違いがあります。
それは雇用保険や国民健康保険から、保険給付を受給するには、それに応じた保険料を納付しなければなりません。しかし国民年金から保険給付を受給するには、それに応じた保険料を納付しなくても良い場合があるのです。
例えば国民年金の全額免除を申請して、それが認められた場合、保険料を納付する必要はありませんが、原則65歳になった時に、全額納付した場合の2分の1の、老齢基礎年金を受給できます。
ですからきちんと免除申請を行なっていれば、たとえ保険料を納付するだけの金銭的な余裕がなくても、その代わりとなる制度を探す必要はないのです。
この免除申請は郵送でも可能ですが、政府はマイナンバーを活用して、サイト上でワンクリックすれば、免除申請できるようにする案を検討しているようなので、今後は更に手間が少なくなると思います。(執筆者:木村 公司)