
先日自宅の郵便ポストを開けたら、お墓の清掃とお墓参りの代行を行なう業者のチラシが入っており、そのチラシにはお墓の清掃を行なう、70代くらいの男性の姿が印刷されておりました。
おそらくその業者に、雇用されている方だと思うのですが、こういった商売だったら雇用される以外の選択肢も、選べる可能性があると思います。
つまり起業して個人事業主となり、お墓の清掃とお墓参りを代行する事業を、自分で経営するのです。
その理由として70代くらいの方であれば、先祖のお墓参りに何度も行ったことがあると思いますので、特に研修は必要ないと考えられるからです。
また家にある道具を使って、お墓の清掃とお墓参りを行うならば、開業資金はあまり必要ありません。つまり開業のために退職金をつぎ込んだり、借金をしたりしているわけではないので、仮に経営に失敗したとしても、失うものはあまりないということになります。
また定年退職後であれば、すでに老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給できる年齢に達していると思いますので、当面の生活費は年金で確保できます。
もちろん事業を継続していくのは大変なことですが、成功すれば会社員の時代には味わったことのない、やりがいを感じられると思います。
また定年退職後の起業はやりがいだけでなく、次のように節税と年金の増額に、役立つと考えております。
目次
老齢厚生年金との調整がない事業収入

60歳以降も厚生年金保険に加入しながら働いた場合、「老齢厚生年金の月額」と「月給+直近1年間の賞与の12分の1」の合計が、一定額を超えると、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止になります。
そのため老齢厚生年金を支給停止にしたくない方は、月給が一定額を超えないように調整したり、厚生年金保険に加入しなくても良い、パートやアルバイトなどの雇用形態で働いたりするのです。
具体的に月給をいくらに調整すれば良いかについては、ねんきんネットの「年金見込額の試算」を活用すると、ある程度の目安がわかります。
参考記事:「ねんきんネット」の活用方法 年金記録、年金見込額を確認&試算しよう
起業して個人事業主になると収入源は、原則として給与収入から事業収入に変わります。
この「事業収入の月額」と「老齢厚生年金の月額」の合計が、いくらになっても、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止になるということはありません。
つまり事業収入であれば、給与収入とは違い、いくら儲かっても老齢厚生年金は支給停止になりませんので、事業収入が一定額を超えないように調整する必要はないのです。
生活費の一部を必要経費にできる

年金受給者向けの節税法について紹介するため、以前にマネーの達人の中で、
節税が気になる年金受給者に「確定申告不要制度」は不要ですという記事を書きました。
この記事の中で紹介している節税法は、確定申告を行なうことが前提になっておりますが、会社員生活の長い方は、確定申告をやってこなかったので、抵抗を感じてしまうはずです。
しかし起業して個人事業主になると、税金の知識が増えていくので、確定申告に対して抵抗が少なくなると思います。
その他のメリットとしては、事業収入を上げるために使ったお金を、必要経費にできるという点になります。
例えば自宅の一部を事務所として使うなら、家賃、水道光熱費、電話代などを一部必要経費にできます。
定年退職後にパートやアルバイトで働く場合、これらはただの生活費ですが、個人事業主なら上記のように、その一部を必要経費にでき、節税に活用できるということで、その差は大きいと思うのです。
年齢制限がない小規模企業共済

公的年金の上乗せとして活用できる、公的な制度について調べてみると、「国民年金基金」、「個人型の確定拠出年金」、「小規模企業共済」の3つがあると思うのです。
小規模企業共済は一般的に、個人事業主や小規模な会社の役員の、公的な退職金制度と位置付けられております。
しかし事業を廃止した時などに支払われる共済金を、「分割(現在は年4回ですが、年6回に改正される予定)」で受け取ると、公的年金の上乗せになるのです。
その他にどの制度についても、掛金の全額を所得から控除でき、節税効果を期待できるなど、共通点は多いのですが、決定的な違いがあります。
それは掛金を拠出できる年齢の上限で、国民年金基金は65歳、個人型の確定拠出年金は60歳と、一定の上限があるのに対して、小規模企業共済には上限がありません。
つまり事業を廃止したり、死亡したりするまで掛金を拠出でき、掛金を拠出すればその分だけ、支払われる共済金、つまり公的年金の上乗せは増えていくのです。
ただ小規模企業共済は上記のように、個人事業主や小規模な会社の役員のための、公的な退職金制度になりますので、パートやアルバイトで働く方は加入できません。
ですから小規模企業共済に加入できるというのも、定年退職後に起業するメリットのひとつになると思うのです。
なお共済金を受け取る前に死亡した場合、配偶者や子供などが代わりに共済金を受け取れるので、死亡するまでに拠出した掛金が、掛け捨てになるということはありません。(執筆者:木村 公司)