マーケットは日々変化していますが、どうやら教科書どおりの動きにはならないようで、かなり政治色が強い状況になっています。
今のISIL(イスラム国)に関しても、その背景には米露対決があると思われます。
欧州のエゴが引き起こした中東紛争

そもそも中東紛争のきっかけは、第一次世界大戦の戦後処理にまでさかのぼります。
オスマントルコ解体です。
サイクス・ピコ協定・・・1916年5月16日に、イギリスの中東専門家マーク・サイクスとフランスの外交官フランソワ・ジョルジュ=ピコによって原案が作成された、イギリス、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマン帝国領の分割を約した秘密協定が問題の発端とされています。
戦勝国である三国が、自国の思惑でイスラム教の国々を分断させたのです。勝手に国境線を引いたわけです。
そもそもイスラム教徒にとっては、世界はひとつという発想があるそうです。ISIL(イスラム国)は、国境線を引かれたイスラム教徒の領土をひとつにしようとしているのでしょうか。だからイスラム国という国家が必要なのでしょうか。
第一次世界大戦後の中東に、当時の東西冷戦の要素が加わりました。中東に社会主義国が生まれました。それがサダム・フセインのイラクと、今のアサド政権率いるシリアです。
イラクは、アメリカにより、強引に政権は崩壊させられました。ロシアにとって、中東で残された親露国はシリアだけです。あれだけロシアがシリアを擁護するのもわかります。
社会主義は富の分配を行うことで国民を掌握します。イラクはそれがうまくいっていたわけです。シーア派であるフセイン政権下で、スンニ派イスラム過激派も封じ込められていましたが、フセイン政権崩壊後、押さえが利かなくなったことで生まれたのが、今のISIL(イスラム国)だといわれています。
いまのISILなどの過激派が出てきたのも、アメリカによるイラク戦争がきっかけとも言われています。
中東において、東西冷戦の間隙を縫って登場してきたのイスラム原理主義国イランです。
アメリカは親露国であるイラクやシリアも許せないのですが、別の意味でイスラム原理主義も許せません。イスラム原理主義のホメイニ師のイラン打倒に、天敵であるイラクと手を組んでまでもイランつぶしに動きました。イラン・イラク戦争です。
イラン・イラク戦争では、アメリカはイラク側に大量の武器兵器を供給しました。イラク側の前線部隊を率いていたのがオサマ・ビンラディン氏だと言われています。このときは、アメリカがビンラディングループを支援していたとも言われています。
イラン・イラク戦争後は、手のひらを返したようにアメリカはイラクに冷たくなりました。裏切られた感満載のオサマ・ビンラディン氏のその後行動の発端は、ここにあったのでしょうかね。
中東紛争は、欧州のエゴが引き起こし、米露対戦の戦場とされたことによる紛争とも言えます。
スンニ派とシーア派の分裂

スンニ派とシーア派の分裂も根が深いです。
610年、ムハンマドによりはじめられたイスラム教は、彼の死後4代目のカリフ(イスラム国家の指導者、最高権威者の称号)までは、正統カリフ時代として分裂はありませんでした。
この4代目カリフのアリー氏以降、カリフはムハンマドの子孫であるべきだと主張するシーア派と、血統に関係なく実力者を話し合いによって選ぼうとするスンニ派に分裂してしまいます。
それぞれ別のカリフを立てることで分裂は決定的となったわけです。
その後のシーア派の流れなど、詳しいことは省きますが、あるイスラム教徒の方は、両者のいざこざを「利権争い」だと言っていました。
石油が採れる領土を持つシーア派と、石油が採れない領土があるスンニ派、英仏露によって、勝手に線引きされた結果、中東国家間で、石油が取れる国と取れない国ができてしまいました。
シーア派の人は、自国領土で採れる石油を「神の恵み」と言っているそうです。
そこにアラブ民族やペルシャ民族という、民族の違いも絡んできて、中東問題を複雑にしているようです。
中東問題は解決はかなり難しいと言えますね。
そう考えると、世界マーケットにおけるテロの脅威は収まることはないのでしょうか。
殺戮はあってはならないことであり、テロは起こってはならないことです。
これからの世界経済を考える上では、テロと向き合っていかなければならないことになるのでしょうね…(執筆者:原 彰宏)