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長寿時代の今は、どこの国でも医療費は大きな社会問題となっているのではないでしょうか。
オーストラリアでは医療費はメディケアといって国民健康保険で基本的に全額カバーされています。「基本的に」というのにはもちろん例外もあります。
今回はオーストラリアの医療システムについて紹介します。
目次
オーストラリアではGP(総合診療科)制度
診療のスピーディー化や医療費の削減を狙って、日本でも総合診療科が設立されてきていますが、オーストラリアのそれとは大きく違っているように思えます。
日本では総合診療科として総合病院内に設立されていることが多いようです。紹介状なしでの総合病院の受診を減らそうとしているのではなかったの? と少し矛盾を感じざるを得ません。
一方、オーストラリアでは何か身体に異変を感じて訪ねるところがGP(総合診療科)なのです。日本でいうところの○○医院です。
違う点は、「腰が痛いけど…整形外科にしようか、内科にしようか」などと迷う心配がないところです。
たいてい自分のファミリードクターを持っているので、問題があればそこを受診して、相談をするようになっています。そこで、必要であれば次の指示を受けることになるのです。
GPによっては国民健康保険の枠を超えて追加料金を取るところもありますが、多くのGPは国民健康保険を持っていれば無料です。
指示があれば、そこからレントゲンを撮りに行ったり、専門家を紹介されたりするわけです。薬は処方箋をもって薬局へ行かなければなりません。

専門医師になると料金が跳ね上がる
GPが専門家による診察が必要だと判断した場合は、スペシャリストとよばれる専門家を受診することになります。
ここでは多くの場合、国民健康保険の枠を超えて料金が発生します。スペシャリストによって、その料金も全然違ってきます。ですから、自分でスペシャリストを探す場合も少なくありません。
子供にアレルギーがあるので、アレルギーのスペシャリストにかかったことがありますが、簡単なアレルギーのテストと診察だけで2万円近く支払いました。
半分以上は国民健康保険で戻ってきましたが、あまり簡単には足を運べません。
また、子供が半年検診で小柄だと心配されて、小児科医の診察をすすめられたこともあります。
アジア人はオージーに比べて小柄ですし、3人目の子供で異常でないことに自信があったので、特に心配せずに、どのような経過をたどるのか試しに放っておいたことがあります。
半年ほど経ち、忘れていたころに、公立総合病院から電話がかかってきて、予約にたどり着きました(確か、その前に予約には時間がかかるから急を要する場合は救急外来を受診してねという内容の手紙が届いていたような気がします)。もちろん何事もなく診察は終了しました。
この時の診察は小児科専門の医師でしたが、国民健康保険の枠ですみました。公立の総合病院で診察を受けると、専門医でも基本は国民健康保険内ですむ仕組みです。
わが子は半年程度の待ちでしたが、近所の人は、手のマイナー手術を受けるために、すでに2年待っていると話していました。
不快症状が強くなければ、我慢強く待つこともできそうですが、中にはできるだけ早く受けたい診察や手術もあります。
そんな時に役に立つのが、プライベート保険です。
国民健康保険でカバーしない治療や枠外の料金を負担してくれる保険ですが、待ちが少なく、比較的にスムーズに治療や手術を受けられるわけです。
プライベート保険にもさまざまあるので、タイプによって何がどれだけカバーされるか、金額の上限、自費額などが変わってきます。
歯科治療はバカ高い!
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ここまで聞くと、オーストラリアの方が負担金が少なくて助かるような気がしますが、実はそうでもないのです。
特によく歯医者に通う人はオーストラリアには不向きです。
オーストラリアでは歯医者は基本的に国民健康保険が使えません。そして、歯科治療は高額なのが通常です。
日本では数回にわたって行われる治療もこちらではほとんどが1回で終了するので便利ですが、治療費が高いです。
したがって、歯科治療を受けるにはプライベート保険に加入していなければ難しいのがほとんどです。
そんなに歯科治療が高額なら、国民の歯磨きの習慣や意識はさぞ高いだろうと想像するかもしれませんが、日本に比べると低いと言わざるを得ません。
ならば、オーストラリアは虫歯の人ばかりでしょと思うかもしれませんが、それも違います。
日本のように歯磨きの重要性を子供に教育しているようには思えませんが、特に虫歯でトラブったという話を聞いたこともありません。
不思議ですが、その秘密は水道水にあります。オーストラリアでは虫歯予防のために水道水にフッ素が含まれているのです。
フッ素の健康問題はさておき、歯磨きをきちんとしない割に、虫歯の子供は少ないのは、水道水のおかげなのです。わが子も3人そろって虫歯がないのは、その効果が大きいのかもしれません。(執筆者:松下 歩)