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子どもたちへの支援は、25年間必要
未曾有の大惨事、東日本大震災から丸5年が経った。
あの時、報道されていた衝撃的な映像を見て、「自分も何かしたい!」と突き動かされた人も多いだろう。けれども5年という歳月は、悲しいかな、震災をも風化させてしまう。
推定1800人。
東北3県で孤児、遺児(両親またはいずれかの親を亡くした)となった子どもたちの人数だ。震災の時にお腹にいた子が、全員、学校を卒業するまでには、およそ25年かかる。
その25年間、「大学及び専門教育への進学への学費」に的を絞って支援をしようという基金がある。その名を、「公益財団法人みちのく未来基金」という。
寄附全額を「震災遺児の学費」に充当する基金
この基金は、「カルビー」、「カゴメ」、「ロート製薬」の3社の経営陣が共同で設立したもので、2013年よりエバラ食品工業も加わってスタッフが派遣され運営されている。
一般の人から寄附されたお金はその全てが生徒たちの学費に当てられ、経費は運営4社からの寄附で賄われている。
奨学金は全額返済不要で給付され応募条件は「遺児である」、「高校を卒業し、進学先に合格」の2点、申請書類も非常にシンプルで3つしかない。現在、第4期生まで総勢434人が、この基金を使って、進学の夢を果たしている。(第5期生は105人の予定)
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みちのく生の今 ~年次面談より~
みちのく未来基金では、年に一度、みちのく生と基金スタッフが直接会い、面談することを約束している。そんな面談の様子を、みちのく未来基金の広報誌である「みちのく未来通信 第12号」から拾ってみた。
●高校教員になって「心を教える」ことを目標に、教育実習などに励んでいます。数学の知識を深めるために大学院進学も視野に入れて進路を考えているところです。 2期生男子(岩手県・大学)
●小さい頃からの夢がかない、4月から自動車整備士として働きます。より復興に貢献できるトラック整備士の道を選びました。 3期生男子(岩手県・専門学校)
●声優を目指して専門学校で学んでいます。2月に実施する舞台でたくさん笑う人の役を頂いたので、それに向けて練習中です。将来は私の姿や声で、応援してくれた皆さんに恩返しをしたいです! 4期生女子(岩手県・専門学校)
基本は、心の支援
みちのく未来基金の代表理事・長沼孝義さんは、こんなふうに言う。
みちのく未来基金には、若いスタッフもいるので、少し年上のお兄さんや、お姉さんが、遺児の話を聞いてあげるというのがすごく大事。『ああしろ』、『こうしろ』ということを、彼らは求めていません。
ただ、話を聞いて欲しい。誰かに、聞いて欲しい。友達には相談できないし、親のどちらかを亡くしているわけだから負担をかけたくないと親にも相談できない。ここのスタッフに話をしに来る子たちは多いですよ」
遺児が駆け込める場所ができて、良かった! 私がひとりの母親として震災の時に強く思ったのは、「我が子だけを呑気に育てていて良いのだろうか?」ということ。遺児たちの居場所をつくるという希望に共鳴し、微力ながら寄附をさせてもらっている。
圧倒的に多い継続サポーター
長沼さんは言う。「この基金のサポーターは、圧倒的に継続者が多いですね。毎月1000円、クレジットカード払いで決済するという方もいます」
寄附の方法は、銀行振込(七十七銀行/三菱東京UFJ銀行/ゆうちょ銀行)、もしくはホームページからのクレジット決済(頻度・金額は選択可能)がある。その他現金書留も受付している。みちのく未来基金への寄附は、寄附金控除の対象になる。
「子どもたちが、夢を捨てることなく、希望を持って前を向いて歩いて欲しい。この趣旨に賛同頂く方がいらっしゃいましたら、みちのく未来基金のHPを見て頂けるとありがたいです」(長沼さん)
(執筆者:楢戸 ひかる)