もうすぐホワイトデーがありますので、女性からチョコレートなどをもらった男性は、お返しに何を送るかを、考えている頃ではないかと思います。
しかし最近は男性から女性に対して、バレンタインデーにチョコレートなどをプレゼントする、「逆チョコ」という習慣があるそうなので、このような場合には逆に女性の方が、お返しに何を送るかを考えることになりますね。
世の中にはこの逆チョコの他にも、「逆プロポーズ」といった言葉が存在しております。
これらの言葉は共通して、一般的に男性が、もしくは女性がすると考えられていることを、逆の性別の方がやるから、「逆○○」になるのです。
それなら夫が病気で働けなくなった場合、もしくは脱サラして自営業を始めたけれども、なかなか上手くいかない場合などに、妻が働いて夫の生活を支えているケースは、「逆扶養」と表現しても良いかと思います。
しかし扶養が逆扶養に変わっても次のように、税法や社会保険(健康保険、厚生年金保険)の扶養の取り扱いにおいて、大きな男女差はないのです。
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目次
逆扶養と税法上の扶養
年末調整の前になると、パートで働く専業主婦の方は、夫が配偶者控除を受けられる年収103万円を超えないようにするため、労働時間を調整する場合があります。
また年収が103万を超えてしまった方は、夫が配偶者特別控除を受けられる、年収141万円を超えないようにするため、労働時間を調整すると思うのです。
ただこの取り扱いに男女差はないので、妻が夫の生活を支える逆扶養のケースでは、妻が夫を対象にして、配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができます。
また扶養する子などを対象にした「扶養控除」は、一般的に夫の所得から控除しますが、逆扶養のケースならば、妻の所得から控除しても良いのです。
もしお勤めしている会社に、逆扶養のことを知られたくないなら、年末調整ではなく確定申告で、これらの控除を受けます。
このように配偶者控除(配偶者特別控除)や扶養控除において、特に男女差はないのですが、男女差のある所得控除も存在します。
例えば「夫と死別もしくは離婚した後に結婚していない方」や、「夫の生死が明らかでない一定の方」が受けられる「寡婦控除」は、次のような要件1か2の、いずれかを満たせば良いのです。
扶養親族か生計を一にする子がいる
【要件2】
合計所得金額が500万円以下
しかし「妻と死別もしくは離婚した後に結婚していない方」や、「妻の生死が明らかでない一定の方」が受けられる「寡夫控除」は、この要件1と2の、両者を満たす必要があります。
逆扶養と社会保険上の扶養
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主として健康保険の加入者に生計を維持されている、その直系尊属(父母や祖父母など)、配偶者(内縁関係も含む)、子、孫、弟妹は、健康保険の被扶養者になることができます。
また健康保険の被扶養者になった配偶者は原則として、国民年金の第3号被保険者にもなるので、自分で国民年金の保険料を納付する必要がありません。
この中で重要な点は「生計を維持されている」という部分で、被扶養者になろうとする者の年間収入が、原則130万円未満で、かつ、健康保険の加入者の年間収入の、2分の1未満である場合には、主として健康保険の加入者に、生計を維持されていると認められます。
ただ被扶養者になろうとする者の年間収入が、原則130万円未満で、かつ、健康保険の加入者の年間収入を、上回らない場合には、主として健康保険の加入者に、生計を維持されていると認められるケースもあります。
多くの家庭では正社員の夫が、健康保険や厚生年金保険に加入して、専業主婦の妻や学生の子などを、健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者にしていると思います。
しかしこの取り扱いに男女差はないので、上記のような要件を満たしていれば、健康保険や厚生年金保険に加入する妻が、夫や学生の子などを、健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者にできるのです。
実際に厚生労働省年金局が作成している、「平成25年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を見てみると、平成25年度末の第3号被保険者の人数は945万人で、そのうちの11万人は男性となっております。
ちょっと少ない感じがしますが、平成9年は4万でしたから、3倍程度は増えているのです。
このように健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者の取り扱いにおいて、特に男女差はないのですが、遺族厚生年金の支給要件においては男女差がありますので、その点には注意が必要になります。
例えば厚生年金保険に加入する夫が死亡した場合、妻は他の要件を満たせば、年齢に関係なく遺族厚生年金を受給できます。
しかし厚生年金保険に加入する妻が死亡した場合には、妻の死亡時に夫が55歳以上でないと、遺族厚生年金を受給できません。
社会保険の適用拡大をチャンスと捉える
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平成28年10月から、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトであっても、健康保険や厚生年金保険に加入する必要があります。
・給与の月額が8万8,000円以上(年収なら106万円以上)
・勤務期間が1年以上
・学生でないこと
・従業員の数が501人以上の会社に勤務していること
これにより給与の手取りが減るなどのマイナス面もありますが、夫が病気で働けなくなった場合、もしくは脱サラして自営業を始めたけれども、なかなか上手くいかない場合などは、逆にチャンスだと思うのです。
その理由として妻が健康保険や厚生年金保険に加入して、夫を健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者にすれば、夫は国民健康保険や国民年金の保険料を納付する必要がなくなり、家計全体としては節約になるからです。(執筆者:木村 公司)