先日税制の改正について調べるため、平成27年12月16日に自民党と公明党から公表された、「平成28年度税制改正大綱」を見ていたら、次のような文章が記載されておりました。
祖父母や両親などの直系尊属が、20歳以上50歳未満の子や孫の結婚、子育て資金を、その者の金融機関の口座などに一括して拠出した場合、子や孫ごとに1,000万円まで、贈与税が課税されません。
これは「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」と呼ばれており、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの、4年間の期間限定で実施されております。

またこの非課税措置により、贈与税が課税されない子育て資金には、次のような不妊治療に要する費用も含まれているのです。
・ 体外受精
・ 顕微授精
・ この他に一般的な不妊治療に要する費用
平成28年度の税制改正大綱には、この非課税措置を拡充して、不妊治療のため、薬局に支払われる医薬品代金についても、贈与税を課税しないと記載されております。
ただ非課税措置が適用されるのは、処方せんに基づき処方されるものに限られるようです。
税制改正大綱に記載されたことは、国会で審議を行い、その後に法改正が実施されますが、今後の審議状況によっては、内容が変わる場合もあります。
目次
特定不妊治療費助成金の概要と改正点
不妊治療の中でも、高度な技術を要する体外受精や顕微授精は、1回あたりの費用が30万円~40万程度となり、また不妊治療に要する費用は平均で、140万円程度になると言われております。
こういった経済的な負担を減らすため各自治体は、「特定不妊治療費助成金」という事業を実施し、不妊治療に要する費用の一部を助成しているのです。
その具体的な内容は自治体によって多少の違いがありますが、基本的には次のようになっております。
対象となる治療
体外受精、顕微授精
対象者
体外受精や顕微授精以外の治療法では、妊娠の見込みがない、または極めて少ないと医師に診断された「法律上の夫婦」
なお現在は年齢制限がないのですが、平成28年4月1日より、治療開始時の妻の年齢が43歳以上の場合、助成が受けられなくなります。
所得制限
申請日の前年において、夫婦合算の所得が730万円以上ある場合には、助成を受けられなくなります。
なお申請日が1月から5月までの場合には、申請日の前々年の所得で判断されます。
金額
外受受精か顕微授精1回につき、最高で15万円(平成28年1月20日以降に治療が終了した方は、初回は最高で30万円になると共に、夫が不妊治療を受けた場合に、最高で15万円を上乗せ)
なお採卵を伴わない凍結杯移植を行なった場合、または採卵をしたけれども、卵を得られないため中止した場合は、1回につき7万5,000円になります。
治療の場所
自治体から指定を受けた医療機関
通算回数
初めて助成を受けるのが平成26年度~平成27年度の場合、妻の年齢が40歳未満なら通算で6回、妻の年齢が40歳以上なら通算で5回、助成を受けられます。
また初めて助成を受けるのが平成28年度以降の場合、妻の年齢が40歳未満なら通算で6回、妻の年齢が40歳以上43歳未満なら通算で3回、助成を受けられます。
手続き
自治体によって多少の違いがありますが、基本的には次のような書類を、住所地の市区町村役場などに提出します。
・ 特定不妊治療費助成事業受診等証明書
・ 戸籍謄本
・ 住民票
・ 医療機関が発行する領収書のコピー
・ 申請日の前年の所得を証明する書類など
申請期限
自治体によって多少の違いがありますが、基本的には1回の治療が終了した日が含まれる年度内、つまり3月末までに、上記のような手続きを行う必要があります。
不妊治療の費用を賄う保険が解禁へ

先日Yahoo!ニュースを読んでいたら金融庁が、不妊治療の費用を賄う保険の販売を、早ければ今月(平成28年3月)中にも、解禁すると記載されておりました。
この不妊治療の費用を賄う保険は、民間の保険会社が販売する医療保険の特約として付加し、保険に加入した後に不妊症と判明すると、給付金が支払われるようです。
つまり保険という性質上、不妊症に備えて加入するものであり、すでに不妊症と判明している方が、加入できるものではありません。
この不妊治療の費用を賄う保険は、内閣総理大臣の諮問機関である金融審議会において、平成25年にも解禁の議論が進んでおりました。
しかし信頼性の高いデータが不足しており、保険会社が保険料を算出するのが難しい、また治療歴を告知しない者をどうするかなどの課題があり、解禁が見送りされた歴史があります。
それから3年の間に、信頼性の高いデータが十分に蓄積されたとは考えられず、実際に解禁できるかは、未知数だと思います。
ただ上記のように特定不妊治療費助成金には、年齢制限や所得制限などがあり、すべての方が受け取れるわけではありません。
そのため助成を受けられない方でも、不妊治療を継続していけるように、不妊治療の費用を賄う保険の解禁を、是非とも実現してほしいものです。(執筆者:木村 公司)