八時五時、または九時六時で会社勤めするのが一般的な働き方だが、この働き方に大きな変化が生じ始めている。フリーランスとして働く人が増えているのだ。
最近よく見聞きするフリーランスだが、フリーランスと会社員では何が違うのか。お金を稼ぎ、生きていくのにはどちらが最適なのか。フリーランスと会社員両方の目線で分析してみたい。
目次
会社員が得られるもの~保証と保障~
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冒頭でもふれたが、会社員の基本は八時五時、または九時六時の定時でお勤めするのだが、最近はフレックスタイムを導入する企業があり、必ずしも定時での出勤・退社とは限らない。
会社員が一企業に属し、会社員として働く大きなメリットは「保証と保障」ではないだろうか。
会社員は厚生年金に加入できるので、退職後の年金が保証される。一定期間以上会社に属すれば退職時に退職金を受取れるし、何らかの事情で会社を辞めたときは失業保険を受けられることもある。
その上、年に2回ボーナスを受取れるのだから、今と将来の生活が保障されていると言える。後述するが、フリーランスから見れば、保障に関してはバラ色の人生だ。
しかし、これら保証と保障を得るための代償は小さくない。
会社が指定した時間内は会社のために働き、自分の意思と反して残業を強いられることがある。楽しいとは全く思えないプロジェクトに取り組まなければならないのも、当然の義務だ。
そうなると、身体だけでなく精神的にも会社の奴隷となる。「社畜」という言葉が生まれたのも、何ら不思議ではない。
会社に属するのだから会社の人間として全身全霊を尽くして働くのは当たり前というのが、会社勤めが好きな人の言い分だ。当然と思えるならまだ良い。
社畜として働くことに過大なストレスを感じる人が少なくないのも現実である。生活の中で適度なストレスは必要なものだが、過大なストレスは時に命にかかわることもあるのだから、軽視できない事実だろう。
実際、ストレスと寿命は密接な関係があるようだ。医学博士の米山公啓氏は、「ストレスと寿命が関係あることは確かです」と述べている。(引用元:日刊ゲンダイ) 日本人男性の平均寿命が日本人女性よりも短いのは、長期間会社の中で被るストレスと無関係ではないということだ。
もちろん、会社員としての仕事を生き甲斐に感じている人もおり、すべての会社員が「自分が家畜」だとは思っていないだろうが、自由になる時間が圧倒的に少ないのは事実だ。自由を犠牲にして保障を得る。これが一般的な会社員の立場である。
フリーランスが得られるもの~自由な時間~
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会社員が犠牲にしている自分の自由な時間を手にできるのが、時代の変化の象徴となっているフリーランスだ。
フリーランスと言っても、職種は幅広い。Webデザイナー、翻訳家、プログラミング、アフィリエイト、加えて筆者のようにライティング業を手がけるフリーランスも少なくない。
それらフリーランスとして活動する人の共通点は、基本的に会社には属さず、クライアント(または顧客)から直接仕事を依頼されることだ。青色申告ならば個人事業主と言い換えることができる。
フリーランスは出社・退社時間がない。好きな時に寝て好きな時に起きられると言えば少々極端かもしれないが、自分のライフスタイルに合わせて仕事ができるだけでなく、会社員では得られない自由な時間を手にできることが人を魅了する要素の一つだ。
京都大学卒業でニート経験のある人気ブロガーphaさん(ブログ:phaの日記)も、今では収入があり “ニート” ではないものの、「たくさん寝たかったから会社を辞めた」経験の持ち主。今の彼もフリーランスにあたると言えるだろう
スタイルは様々だが、時間的に自由を得られるというのがフリーランスの特徴である。
しかし、自由を得る反面、会社員のような将来の保証と保障はなく、期待できるのはごく限られたものだ。
年金は国民年金に、健康保険は国民健康保険に加入できるので、最低限の保障は得られるが、個人事業に退職金や失業保険といった制度はなく、失業や定年後の保障はない。というか、「定年」という概念はないのかもしれない。働ける限り働いて稼がなければならない可能性がある。
それでもフリーランスで生活を賄っていくもう一つの魅力が、過大なストレスを避けられる点だ。ストレスの根源となる人間関係に悩まされることがなく、glass ceiling(ガラスの天井。昇級などに伴う見えない障碍のこと)を気にする必要もない。
クライアントから依頼された仕事のほとんどは納期があり、時間という見えない圧力を感じることがある。それでも、会社の中で感じるストレスとは比較にならないほど、微々たるものだ。会社員とフリーランスの両方を経験した筆者はそう感じている。
自由を取るか、それとも保障か。そんな狭間で、早稲田新卒の一人が自由の道を選んだことがネット上でちょっとした騒ぎになっている。
「八木仁平」さんは、自身のブログ「やぎろぐ」の「【新卒フリーランス】早稲田を卒業したのでキャンピングカー生活始めます」の記事中で、早稲田新卒で就職でなくフリーランスという道を選択することを宣言した。しかも、キャンピングカーで生活を始めるというのだ。
彼がなぜフリーランスという道を選んだのか、それは直接記事を読めば分かる。他ブログの一会社員からすると、「もったいない」というのが率直な意見らしいが、いずれにしろ有名大学出の人気ブロガーがフリーランスという道を選んだのは紛れもない事実だ。
これが今の時代の流れを象徴していると言っても過言ではないだろう。多くの人間が自由なスタイルでお金を稼ぎ生活することを望んでいる。
スキルがあれば誰でも稼げる
フリーランスは時間的に自由だが、簡単に稼げるほど甘くはないだろうという意見がある。この点に関して否定はしない。付け加えるなら、何かしかスキルがあると稼ぎやすくなる。
翻訳でもライティングでもWebデザインでも何でも良い。クライアントが「あなたにやって欲しい」と思える技術があると、仕事を獲得しやすい。
フリーランスのメリット、「時間」を一つの技術にするのも悪くない。時間がないとできないようなPC作業ができるならば、それはあなたの武器になる。
いずれにしろ、フリーランスとして稼ぐためにある程度のスキルを磨くことが、重要なステップになるだろう。言い換えると、スキルがあれば誰でも稼げるようになるのだ。
フリーランスと会社員の違い~生き方~
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フリーランスと会社員それぞれにメリットがありデメリットがあるのは分かる。しかし、根本的な違いは生き方のコンセプトではないか。
どんな人生にするか、何を目指して生きていくか。その方向性は各人異なり、その方向性によって選択する働き方が変わってくるのだ。だから、どちらが正解でどちらが誤りという明確な答えはないのだろう。
逆を言えば、フリーランスと会社員のどちらを選択しても、人生の終焉を迎えるときに過去を振り返り満足できるのなら、その人にとって「正解」なのだと思う。
筆者の父は45年ほど一会社員として働き退職した。退職後はどちらかというと家に引きこもり気味だ。体調があまり思わしくないのだが、原因は長年面したストレスらしい。
退職したのだからストレスがなくなり、セカンドライフを思う存分満喫できるかと、少なくとも息子として、父親が充実した第二の人生を歩むことを願っていた。しかし、現実はそう甘くない。これまでのストレスが余りにも大きかったようだ。
父親の背中を見る度に、会社員ではなくフリーランスとしてやっていきたいと感じる自分がいる。筆者にとっては、それが “正解” なのだと。
会社員から見たフリーランス
しかし、ネット上でなぜフリーランスと会社員ブログがもめているのだろうか。あえて名前は出さないが、あるプロ・ブロガーを「負け犬」だと、一会社員ブロガーは自身のブログで言い放つ。
会社の荒波にもまれつつも八時五時を会社に捧げる会社員が、ほとんど仕事もしていないような人間を目にし、しかもその人が生活を謳歌していたとしたらどう思うだろうか。
タレントの大泉洋を輩出した北海道ローカルテレビ番組「水曜どうでしょう」の2011年作、「原付日本列島制覇 東京-紀伊半島-高知」の第2話にて、そんな会社員の気持ちを大泉洋が代弁していたように思える。
海沿いをカブで走る大泉洋。夏休みを謳歌する人を見て一言、「仕事しろってんだよ」と。
自分は身を粉にして働いているのに、なぜあなたは遊んでいるの? という気持ちになったのだろう。フリーな時間を手にしたフリーランスを目にしたとき、会社員も同じように感じるのかもしれない。
前出の会社員ブロガーも、同じく前出のフリーランスを見て何かもどかしい気持ちを抱いたかどうかは分からない。
ただ言えるのは、二人の方向性は双極にある。尊重の気持ちがなければ、お互い理解し合うことは難しいかもしれない。
終身雇用形態は終焉 時代は変わりつつある
バブルがはじけた後、日本の終身雇用形態は崩壊したと認識している。終身雇用がなくなったわけではないが、それ以外の選択肢が増えたのだ。
長年会社に忠義を示してきた正社員が大量にリストラされ、会社にとって好都合な派遣社員が急増した。
その後さらに時代は変わり、ネット環境が普及した今では「新しい働き方」としてフリーランスが急増している。
そう、終身雇用形態がすべてではない。働き方を自分で選択する時代に突入しており、会社員かそれともフリーランスかを選択する時代、いや、選択すべき時代と言える。
誤解して欲しくないのは、会社員が良い悪い、またはフリーランスが良い悪いと、ここで推奨するつもりは全くない。ただし、会社員だけが生きる道だった時代はすでに過ぎ去ったということを覚えておいてほしい。
自由を得るフリーランス、それとも保障を得る会社員。あなたはどちらを選びますか? (執筆者:堀 聖人)