不動産所得や事業所得がある人の多くは毎年確定申告をする必要があります。65万円の青色申告特別控除を受ける場合、複式簿記による帳簿書類の作成が必須となります。
そこで欠かせないのが会計ソフトですが、ここ数年でクラウド型の会計ソフトが急速に普及してきました。このクラウド型の会計ソフトは、確定申告をする上で非常に便利なツールとなります。
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目次
従来の会計ソフトとは何が違うか
従来の会計ソフトと比べて、クラウド型の会計ソフトは次のような点に特徴があります。
(1)パソコンへのインストールが不要
従来のパッケージ型の会計ソフトはプログラムを自分のパソコンにインストールして使用します。CDからインストール、あるいはプログラムをメーカーのホームページからダウンロードしてインストールする必要があります。
クラウド型の会計ソフトはパソコン自体にプログラムをインストールするのではなく、インターネット上でサービスサイトにログインして使用します。
(2)インターネットに繋がればどこでも作業ができる
会計ソフトに限らずクラウド型のサービスに共通することですが、インターネットに繋がる環境であればどこでも作業することができます。
パソコンにインストールする必要がないため、windows以外のOSのタブレット端末やスマートフォンで作業をすることも可能です。
(3)ネットバンキングや電子マネー、クレジットカード決済情報との連携
クラウド型会計ソフトの最大の利点がこれです。従来型の会計ソフトでも導入が進んでいくことが予想されますが、現状は圧倒的にクラウド型の会計ソフトがこの分野においては秀でています。
ネットバンキングや電子マネー、クレジットカードのIDやパスワードを紐づけることにより、取引データをクラウド型の会計ソフトが自動取得します。
また過去の取引データから、システム上で売上高や各経費の勘定科目を自動的に判断し、登録してくれるという機能もあります。
(4)各種クラウド型サービスとの連携
クラウド型の会計ソフトと連動できるのは、ネットバンキングやクレジットカードの取引情報だけではありません。各種クラウド型サービスのデータも会計データとして取り込むことができます。
タブレット端末を利用したPOSレジシステムとの連携が代表的な例で、店舗の売上データを会計データに連動させることができます。
(5)バージョンアップ料が不要
従来型の会計ソフトは、新機能の付加や税制改正への対応のためにバージョンアップ料を支払う必要がありました。
クラウド型の会計ソフトは基本的に料金にバージョンアップ料が含まれているため、追加で料金を支払う必要がありません。
クラウド型会計ソフトの弱点
大変便利なクラウド型会計ソフトですが、従来型の会計ソフトに比べて次のような点で劣っています。
(1)オフラインでは作業できない
インターネットに繋がっていないオフラインの環境では全く作業できないという欠点があります。オフラインの環境で会計業務を行いたい場合はクラウド型の会計ソフトの使用は不可能となります。
また通信回線が不安定な場合、動作が不安定になるという欠点もあります。
(2)セキュリティの問題
クラウド型会計ソフトの各連携機能は各サービスのIDとパスワードの入力が欠かせません。この点で、セキュリティ上のリスクが生じることになります。
各メーカーは当然セキュリティ対策には万全を期していますが、リスクが0になるということはありません。
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クラウド型の会計ソフトによる確定申告書の作成
代表的なクラウド型の会計ソフトには、税務署への確定申告のために必要な書類を作成する機能もあります。
会計上のデータに基づき青色申告決算書を作成することができ、直感的な操作により確定申告書を作成することもできます。
また、E-taxをするのに必要な機材等が揃っている場合は、作成した確定申告書のデータを使ってE-taxにより確定申告をすることができます。
まとめ
クラウド型の会計ソフトは、不動産所得や事業所得がある方にとっては非常に便利なものです。しかし、完全に自動で確定申告ができるというものではありません。
確実な確定申告をするためには、今までと同様に確実な所得税の知識が必要になります。
売上高や賃貸収入の計上基準、必要経費の可否など、システムでは処理できない箇所については納税者本人が責任を持って判断する必要があります。
クラウド型の会計ソフトを使用する場合、ソフトが出来ることとそうでないことを理解することも大切です。(執筆者:高垣 英紀)