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イギリスのEU離脱決定で円が急騰
イギリスのEU離脱が決まった6月24日の外国為替市場で、主要通貨に対して、軒並み円が買われた。
EU離脱が決まるまでは、1ドル=103円だった円相場は、わずか4分間で、99円まで急騰。(日経平均は1,286円の下げ)
欧米諸国で保護主義とポピュリズムが勢いを増して、グローバル経済に負の連鎖を想像させ、不安におびえた投資家が、一気に円買いに動いた結果だ。
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円が安全通貨たるゆえん
市場心理の悪化により円高がすすむことはこれまでも見られた。
2011年3月の東日本大震災後の円高(70円台)
マーケットでは、スイスフラン同様、円は「安全通貨」の代名詞だ。
ではなぜ、巨額の財政赤字を抱え、経済成長が進まない日本の通貨である円が安全通貨になるのか?
物価と為替相場との関係
商品やサービスの価格が持続的に下がるデフレのもとでは、通貨の価値が上がる。少ないお金で商品やサービスが買えてしまえる状態、つまりデフレ下では、購買力が上がる。
一般的に購買力が上がる通貨を持つ方が得なので、為替相場上でも円を持つことのメリットが意識されるわけだ。
世界経済が不安な状態では、購買力が下がりにくい円を買っておこう。そんな心理が働いてもおかしくはないのだ。
デフレ通貨だからこそ、円が安全通貨になるのである。
金利とゼロ金利政策との関係
日本のように成長力が弱い国は経済を刺激するため、中央銀行(日本では日銀)が金融緩和を行うケースが多い。
日銀がゼロ金利政策を導入したのが17年前。以後、ゼロ金利解除を2回行いましたが、再び低金利状態に戻り、現在ではマイナス金利政策のもと、長期金利(10年国債の利回り)はマイナス0.2%台になっている。
金利が低い通貨は売られやすいというのが金融の世界の常識。だれも金利が低い金融商品を買いたくはない。
リスクオン(投資家がリスクをとって積極的に運用していく状態)の場面では、低金利の通貨を借りて、金利が高い通貨を買うキャリー取引が活発になる。しかも円の場合、流動性が高いので、この取引に使われやすくなる。
ところが、リスクオフ(市場が混乱し投資家がリスクをとりにくい状況)の場面では、リスクをとることに不安になった投資家はキャリー取引を手仕舞うケースが多くなり、低金利で流動性の高い通貨である円が買い戻され、円が急騰するのだ。
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市場混乱時には、同時に円高がすすみショックが増長される
イギリスのEU離脱が伝わった6月24日の株価下落率は、日本が、イギリスやドイツ、アメリカよりも大きかった。
このように投資家がリスク回避的になる時には、同時に円が急騰し、日本の株式市場は、ショックが増長されるケースが多くなるのだ。(執筆者:釜口 博)