雇用保険における失業等給付のメインは何と言っても基本手当です。退職後の当面の収入減をいくらかでも抑える為にも、基本手当は重要な要素になります。
しかし、人生に何度も基本手当を支給される事は稀であり、人によっては一つの会社で勤め上げて定年になり、初めての基本手当の支給となるケースもあります。
その為、しばし基本手当の受給に関して情報不足の為、いわゆる「もらい損ね」になってしまう事もあります。
今回はこの基本手当について知っておきたい情報を確認しておきます。
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目次
(1) 基本手当はいつから支給される?
ハローワークに行けばすぐに基本手当が貰えるわけではありません。まず求職の申込日から通算7日間の待期期間(失業している日または傷病のため就職できない日)があります。
定年による退職の場合はこの待期期間を終了すれば支給対象となりますが、自己都合退職の場合はさらに3か月の給付制限期間があります。
(2) 基本手当を貰える日数は?
定年や自己都合退職の場合の基本手当を貰える日数(所定給付日数)は下記のとおりです。
(3) 基本手当はいつまで貰える?
基本手当を受給できる期間(受給期間)は原則「退職の翌日から1年間」です。
しかし、60歳以上の定年で退職して、しばらくゆっくりしたいので就職は望まない人もいるかと思います。その場合は申し出た期間(1年を限度)が本来の期間に加算(つまり最長2年)されます。
この受給期間延長の申出は退職の翌日から2か月以内にハローワークにて行います。
(4) 最も気を付けるべきは「求職の申込」
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最も気を付けるべきは「求職の申込」です。何故でしょうか?
それは、もし「求職の申込」が遅すぎると基本手当がもらえなくなってしまうからです。
(3)で確認したように、基本手当を受給できる期間(受給期間)は原則として退職の翌日から1年間と限定されています。
「求職の申込」が遅れて、この1年のうちに(2)の基本手当を貰える日数(所定給付日数)が収まらなかった場合、はみ出した部分の基本手当は打ち切られてしまいます。
例えば、Aさんがうっかりしていて定年の退職日から8カ月遅れて「求職の申込」を行ったとします。
すると受給期間は残り4カ月(12か月-8か月)しか残されていません。Aさんの所定給付日数が150日(5カ月)とすると、30日分(1か月分)は「もらい損ね」になってしまいます。
同じように自己都合退職のBさんもうっかりしていて8か月遅れて「求職の申込」をしたとします。(1)にありますように3か月の給付制限期間がありますので、8か月+3か月となり、受給期間は残り1か月(12か月-11か月)しか残されていません。
Bさんも所定給付日数が150日(5カ月)としたら、120日分(4か月分)が「もらい損ね」になってしまいます。
退職前にみなさんは(2)の所定給付日数については事前に把握されていますが、「求職の申込」のタイミングにより「もらい損ね」が生じてしまう事は意外にご存知ありません。
くれぐれもせっかくの基本手当の「もらい損ね」がないように気を付けて下さい。(執筆者:松山 靖明)