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世界有数の豊かな国日本
戦後の高度経済成長と1980年代のバブル景気を経て、日本は世界有数の富裕な国家になった。
日本国の国民の平均的な生活水準は地球上に存在する190余のほとんどの国の人々より高い。
反面、日本人の所得(=人件費)も世界の一般的なそれよりずっと大きく、日本円の価値もずっと高くなっているので、かつてのように安くて良いモノを作って世界中に輸出して貿易で稼ぐ、というようないわば単純かつ効果的な稼ぎ方はできなくなった。
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豊かさを感じることができなくなっている若年層
昔は次から次へと舞い込んでくる仕事をただがむしゃらにこなすだけで日本人は豊かになれたのであるが、今は以前のように日本人全体が皆で一緒に富んでゆくというは容易ではない。
平均的な所有資産の水準は世界でもトップクラスであっても、実際日本人の金融資産の多くが中高年以上の人に所属し、若年層にそれほど豊かさを感じることができない原因はそこにある。
さらに日本が近代的な国家に変貌を遂げてゆく過程で福祉を充実させてきたことがここに来て逆に仇(あだ)となっている部分もある。
経済的には比較的厳しい環境にある若者世代から徴収したお金で比較的富裕な高齢者の生活を支えるというかたちになり世代間の経済格差の広がりを助長しているのだ。
歴史の巡り合わせによる日本の若年層がその上の世代より損な立場にあるのは残念ながら疑いのないところだろう。
しかし視野を世界に広げてみると日本人はまだまだ恵まれていると言える。
格差の大きい近隣の国
付近の国を見回してみると、中国は戸籍による差別など人権保護が著しく不十分であり、所得格差はトップと最下位の省で5倍もある。
韓国でも国民の経済格差や貧困問題は深刻だ、さらに地続きの中国や北朝鮮の脅威に晒され続けており社会の重圧は激しく自殺率は世界でトップクラスである。
戦闘やテロの続く中東諸国など紛争地域では命の安全さえ保障されず、世界のほとんどは庶民にはまったくチャンスのない開発途上国ばかりだ。
さらにGDPで世界トップのアメリカでさえ上位1%の人が国の40%の富を独占し、医療保険に加入できない貧困層は5,000万人もいて、一度の大きな病気や怪我で再起不能となってしまう。
ある意味、世界の歴史の中でも有数の機会に恵まれた日本の中高年以上の世代と比べて嘆いていても仕方のないことだ。
今自分の生きている時代と場所は一般的に見て決して悪くはないということを再認識して元気を出して生きてゆこう。
現代の日本人が恵まれていること
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世界のほとんどの国に比べて生活水準が高いという点のほかに現代日本人が特に恵まれているか、と私に問われれば「起業がしやすい」ことと「移動がしやすい」とことを挙げたい。
「起業がしやすい」ということ
日本には新規の起業を促進するための補助金や創業融資が充実していて、日本国民・日本居住者で特に金銭的な瑕疵のない生活をしていればほとんどの人が自己資金が乏しくてもこうしたお金を利用して開業することが可能だ。
もちろん事業を始めたら上手に運営して行く必要はあるが、きちんと黒字の決算と納税ができていればさらに金融機関から資金を調達してビジネスを拡大してゆくことができる。
実際これらの制度を利用して起業に挑戦する人は全体から見ればごくわずかだがこうして公的機関がほとんどすべての人にビジネスをはじめる機会を用意している国は世界的にも珍しい。
ただ、これらのチャンスは日本に居住している人が対象なので、日本国籍とは言え海外に住んでいる私などは利用することができない。
「移動がしやすい」ということ
正直、補助金や創業融資を利用できるというのは羨ましい限りである。「移動がしやすい」ということ。
日本のパスポートは世界の170カ国にビザ無しで入国ができる。
これだけの数の国家に自由に出入りできるパスポートは世界でも非常に限られていて、特に新興国の国民から見れば願っても得られない条件なのである。
そして日本は税制上の属地主義を採っていて、きちんとした居住資格を持って海外の国の居住者になれば納税はその国に対しておこなえば良い。
従って、日本よりも税率の低い国に移住することができれば合法的に税コストを下げることができ、手取りの金額を増やすことが可能なのだ。
これらのことは日本居住者か海外居住者かのどちらかしか利用できないが、ほぼすべての日本国民に開かれたチャンスであることは間違いがないのである。(執筆者:玉利 将彦)