昭和39年(1964年)に起きた新潟地震を契機として、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とした「地震保険に関する法律」が制定されました。
この法律に基づき、政府による再保険制度を基盤とする地震保険制度が昭和41年(1996年)6月1日に発足しました。
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地震保険制度は、本来、保険制度に馴染みにくい地震リスクについて、官民一体で制度を運営することにより成り立っています。
補償内容等に一定の制限はあるものの、補償に対する国民のニーズに応えるべく、過去の震災経験や社会経済の進展にともない
●地震保険金額の限度額の引上げ
●地震保険を付帯できる火災保険の種類の拡大
●建物の耐震性能に応じた保険料割引制度の導入、および1回の地震等による保険金の総支払限度額の引上げ
などの改善が重ねられ、今日に至っています。
地震保険にご加入されている方も、今後ご加入を検討されている方も、地震保険について今一度理解しておきましょう。
【地震保険の概要】 ※出典:財務省
・地震保険は地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による損害を補償する地震災害専用の保険です。
・地震保険の対象は居住用の建物と家財です。
・火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されません。
・地震保険は、火災保険に付帯する方式での契約となりますので、火災保険への加入が前提となります。地震保険は火災保険とセットでご契約ください。すでに火災保険を契約されている方は、契約期間の中途からでも地震保険に加入できます。
・地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することにより成り立っています。
【政府による再保険】 ※出典:財務省
・地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し、再保険料の受入れ、管理・運用のほか、民間のみでは対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計において区分経理しています。
・1回の地震等により政府が支払うべき再保険金の総額は、毎年度、国会の議決を経た金額を超えない範囲内のものでなければならないとされています。
・平成28年4月現在、その金額は10兆9,902億円であり、民間保険責任額と合計した1回の地震等による保険金の総支払限度額は11.3兆円です。
・総支払限度額は、これまでも関東大震災クラスの地震と同等規模の巨大地震が発生した場合においても対応可能な範囲として決定されています。過去、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの巨大地震が発生した際にも、保険金の支払額は総支払限度額内であり、円滑に保険金が支払われております。
・なお、万一、この額を超える被害地震が発生したときには、被害の実態に即し、また、被災者生活再建支援制度の活用など他施策も考慮しつつ、保険制度の枠内にとらわれず幅広い観点から、財源の確保も含め、適時適切に政策判断が行われるものと考えております。
財務省が平成26年度決算で発表している特別会計の積立金残高は、平成27年3月31日時点で、1兆521億円となっています。
さらに、平成28年4月に発生した熊本地震の損害保険協会発表(平成28年6月27日付)による支払総額は3,285億円となっています。
これでは、もし関東大震災クラスの震災が来たらどうなるのでしょう? 地震保険の総支払限度額11.3兆円には全く足りていません。
不足分はどうなるのか? 財務省に聞いてみました。
財務省によると、政府再保険金の支払が歳出予算額及び準備金を超える場合は、借入または一般会計からの繰入により資金調達を行うとしています。簡単に言うと借金をしてでも何とかするという事ですね。
2017年1月に地震保険の大幅改定があります。補償内容の一部改定については今回の注目点であります。
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目次
1. 保険料の改定
政府の研究機関が作成する地震の研究データの見直し等を踏まえ、損害保険料率算出機構が将来の地震の危険度に基づき料率を見直した結果、基本料率を改定する必要が生じたものです。
地震保険の保険料は全国平均で大きく引き上げとなりますが、お客さまのご負担をおさえるため、保険料の改定を数回に分けて段階的に行います。
※次回以降の保険料改定は、今後の研究データの見直し等の影響を踏まえて実施される予定であり、改定時期・改定率ともに未定です。
全国平均で5.1%の値上げとなりますが、都道府県および建物の構造区分により改定率は異なりますのでご注意ください。
【保険料具体例】※割引なし
建物地震保険金額1,000万円の場合
現行保険料3万2,600円⇒改定後保険料3万6,300円(3,700円値上)
建物地震保険金額1,000万円の場合
現行保険料2万4,400円⇒改定後保険料27,900円(3,500円値上)
建物地震保険金額1,000万円の場合
現行保険料1万6,500円⇒改定後保険料18,400円(1,900円値上)
2. 補償内容の一部改定(損害区分の細分化)
これまでの地震保険では、保険の対象に生じた損害の程度に応じて、「全損」「半損」「一部損」の3つに損害区分を分け、その区分ごとに保険金額の一定割合を保険金としてお支払いしていました。
今般、より損害の実態に照らした損害区分とするとともに、僅かな損害割合の差で保険金が大きな較差がつくことへのご不満の解消に向けて、損害区分間の保険金支払割合の較差を縮小させるため、「半損」を分割して保険金額の60%をお支払いする「大半損」と、保険金額の30%をお支払いする「小半損」に細分化されます。
これに伴い、地震保険損害認定基準の改定、明確化が行われます。
また、損害区分の細分化に伴い、損害の認定基準を以下のとおり改定となります。
※時価とは、保険の対象と同等のものを新たに建築または購入するのに必要な金額から使用による消耗分を差し引いた金額をいいます。
【保険金支払具体例】※地震保険金額1,000万円の場合
支払保険金額
改定前1,000万円⇒改定後1,000万円
(変更なし)
支払保険金額
改定前500万円⇒改定後600万円
(+100万円)
支払保険金額
改定前500万円⇒改定後300万円
(-200万円)
支払保険金額
改定前50万円⇒改定後50万円
(変更なし)
3. 割引確認資料の拡大
地震保険の割引制度をより利用しやすいものとするために、割引適用時の確認資料を拡大されます。
既に地震保険をご契約いただいている場合でも、新たに割引適用できる、もしくは割引率が拡大する可能性がありますので是非ご確認ください。
最初に述べたように、補償内容等に一定の制限はあるものの、補償に対する国民のニーズに応えるべく、過去の震災経験や社会経済の進展にともない
● 地震保険金額の限度額の引上げ、
● 地震保険を付帯できる火災保険の種類の拡大、
● 建物の耐震性能に応じた保険料割引制度の導入、および1回の地震等による保険金の総支払限度額の引上げ
などの改善が重ねられ、今日に至っています。
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ここまで頻繁に大規模震災が起こっても地震保険加入率はなかなか上がりません。
その背景には「支払い基準がわかりずらいこと」、「地震保険料が高いと考えられていること」、「保険料の割には補償が小さいこと」等があります。今後、地震保険料はさらに段階的にですが値上げしていく予定です。
地震保険をもっとわかりやすく、保険料も抑えて欲しいという国民のニーズと、度重なる震災での保険金支払額増加に対応できるだけの国の財源確保。
それぞれの立場からバランスのとれた地震保険制度にするためにどうするか、今回の改定で終わらせることなく地震保険については地震大国である日本として今後も官民一体の大きな課題だと思います。(執筆者:高倉 純子)