と婦人は相談に見えました。相続預金の解約は大変です。
目次
相続預金の手続きの進め方
1. 死亡の事実が分かる戸籍
生きていれば、夫人が代理人で手続きすればよい。死亡していれば預金は相続人全員の共有財産となります。
遺言書の有無
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あれば、とりあえず遺言通り実行することになるが、なければ相続人の確認となる。
2. 相続人の確認
出生から死亡までの戸籍が必要となります。これで死亡時の配偶者と子供は確認できます。もし子供が亡くなっていれば、さらにその子の有無の確認となります。
子がいなければ故人の父方、母から両方の直系尊属の調査、100歳のおばあさんがみえれば意思確認の問題もあります。今回は子供がみえなく、親も亡くなっているため兄弟姉妹(兄が亡くなっているため姪も)等の方が相続人のようです。
3. 分割協議書の作成
戸籍で相続人が確定した、相続人全員の合意で分割協議書の作成です。
問題は分割協議書作成方法です。実は、既に司法書士さんに依頼し土地と他の預金は変えているといいます。この預金は司法書士さんに依頼後仏壇の中からひょっこり出てきたといいます。
分割協議書を見せていただくと土地と預金について記載があるものの、問題の預金については記載がありません。
4. 記載のないものが後日判明したら
(2) 法定割合にする。
(3) 別途協議する。
のいずれかをあらかじめ記載します。
問題の預金は1,000万円です。場合によっては全体の遺産含めた分割協議書の再作成となるかもしれません。
【対策は?】
この記事を読まれたみなさんも自身に相続が発生し、分割協議書を作成される時は「今後判明した遺産(債務を含む)は、……」の記載をお忘れなく。
通常は、配偶者の方が相続するようにお話しいたします。配偶者がいない場合は、誰かひとりを指定することになりますが、もめた末だと 別途協議しか受け入れてもらえなかったりします。
5. 子供のいない方の相続は揉めやすい
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配偶者と相手側の実家とはうまくいってないことの方が多く、割合も法定割合になるケースが多いです。
婦人の話を聞くと夫の実家からさまざまな嫌なことがあったことを話されます。夫の実家の方から連絡ありお話を聞くと「真実はこうだった」と話されます。
相続はどちらが正しいかではない。一日話を聞いただけで故人の人生がわかるわけはない。なんとか全員の落としどころを見つけ、分割もまとまり解約もできました。
夫人自身が亡くなった場合の遺言書作成
今度は夫人自身が亡くなった場合、また分割で揉めないために遺言作成となりました。遺言執行者は私でした。
10年後、夫人がお亡くなりになり、相続人の方より連絡があり手続き開始となりました。
貸金庫の中身を見るのも大変
遺言執行者だからと言って通常はかってに故人の貸金庫の中身を見れないのですが、遺言書に貸金庫の開披の権限をあらかじめ書いておいたため、無事相続人の一人と中身の確認作業ができました。
貸金庫にあった遺言書は別物だった!!
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貸金庫には遺言書のみが入れてありました。当然 私が作成した遺言書の原本と思い確認したのに…びっくりです。
なんと遺言は後日書き換えられており、遺言執行者も別人となっていました。
遺言の作成記録は公正証書遺言であれば確認できる。公証役場に行き確認したところ、確かに遺言は2通あり、私のお手伝いした遺言の日付は古いものでした。その仕事は、新しい遺言書の執行者にお任せすることになりました。
対策は?
遺言書が後で作成いたものが有効であるのは知識では知っていましたが、今回、自らお手伝いし、信頼関係のあった(と思い込んでいた)依頼者がなんの連絡もなく、書き換えをされていたことはショックでした。
後から出てくる遺言書は相続人の一人を排除する内容であるケースもあり、その相続人にとってはマイナスな遺言書になることもあります。
では、これを事前に防止する手段があるのか? と問われると、なかなか難しいと回答せざるをえません。遺言は本人が自由な意思でいつでも書きらえるところが利点でもあるわけですから。
公正役場では公正証書遺言のみですが、どこの公証役場で再作成されても、相続発生後、関係者であれば作成履歴(平成元年以降のもの)を調査していただけます。遺言の検索システムは、昭和64年1月1日以降のものならどこの公証役場でつくられても分かるそうです。遺言執行者となった場合は是非、一番に行ってください。(執筆者:橋本 玄也)