境界確定していない土地を持っている場合、土地家屋調査士から
と連絡があれば、あなたはどう対応しますか?
通常は、関係者が立ち会いの場で話し合いをして決めるのが普通だと思います。
困ったことに、依頼主の土地を増やそうと現地状況にあわない境界線の提案をしたり、相手が素人であることをいいことに一方的な主張をしたり、他人の意見に耳をかさない悪質な土地家屋調査士が現在もいるようです。
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土地境界が1cm違うだけで数十万円の差になることもありトラブルに発展することもあります。
境界確定の立ち合いにも注意が必要ですので、参考にしてください。
依頼主の土地を増やそうと故意に境界同意を取りつけた事実が公になれば、土地家屋調査士の資格は剥奪されますので、法的処置をとればいいのですが、トラブルは未然に防止したいものです。
目次
土地は登記しているので安心と考えがちですが、法務局の資料は昔の「公図」を使用していると正確でないことがあります
法務局には「地図」*1) と「公図」*2) が備え付けられています。【*1) 、*2) の解説は1番最後に】
「地図」は不動産登記法で規定される図面で、精度が高く、現地復元能力があります。
しかし、多くの地区で整備が追いつかず、代わりに「地図」に準ずる図面「公図」が使われています。
「公図」は「地図」に準ずる図面で、精度は低く現地復元能力がありません。
しかし、土地の位置・形状・面積・隣地との関係を表しており、土地が何番の土地と接しているのか、公有地(道路、水路、公園、公共用地など)とどのように接しているのかなどを知ることができます。
「公図」は古いものでは、明治時代の地租改正時に作成されていますので、精度は劣ります。
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国土交通省は「地籍調査」*3) *4) *5)で「境界」*6) の位置や面積を正確にすべく努力していますが、なかなか進んでいません
「国土調査」の一環で市町村が主体となって調査し、境界の位置と面積を測量する「地籍調査」を実施しています。
正確な地図を作成しようと努力していますが、なかなか進んでいないのが実情で、進捗率はおおよそ全国平均で52%、都市部では、権利関係がややこしく平均より28%低い24%となっています。
少なくとも古くから売買されていない土地の多くは、境界確定が未実施で境界の位置や面積が正確ではない土地が多いと考えられます。【*3) ~*6) の解説は1番最後に】
民間の境界確定は、依頼主が土地家屋調査士に依頼しておこなわれます
境界確定の目的は
・ 隣との境界をはっきりさせたい
・ 境界標が設置されていないので設置したい
・ 登記簿の面積が実際と違うので直したい
・ 公図(地図)の形が違うので直したいなど
です。
およその作業の流れ
(1) 事前調査として、管轄の法務局や役所で登記簿、地図・公図、地積測量図*7) などの資料を調べ、現地調査でコンクリート杭や金属鋲などの境界標識など現状を確認します。【*7)の解説は1番最後に】
(2) 関係する役所や所有者が、現地で立ち合い境界確認をします。
土地境界は民有地同士「民民境界」や公有地(道路、水路、公園、公共用地など)の「官民境界」も存在します。
「官民境界」の場合には、役所関係者の現地の立ち合いもあります。
境界について関係者全員が納得の上で、コンクリート杭や金属鋲など永続性のある境界標識を土地家屋調査士が設置します。
これらの境界標識は、勝手に移動させたり抜いたりすると法律で罰せられます。
(3) 境界確定図面と署名押印をします。
境界確定図は、実測平面図、側面図、境界確認書、境界標等の写真などの正式図面に関係者の署名押印したものを役所へ提出します。
(4) 登記測量業務の報酬(土地家屋調査士への報酬)は、依頼主が全額負担します。
境界線確定の注意点
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・ 立ち合いのオープニングでは、代理人であることや代理人本人である証明書を提示してもらいます。
「土地家屋調査士会員証」、市に提出の「境界明示申請書」、「代理人届」など提示を求め確認をしておきましょう。
・ 隣地との土地境界は、新しい分譲地など区画が明確な場合は問題ありませんが、古くから売買されていない土地や贈与や相続した土地は、境界線が確定していない場合が多いと考えられます。
土地境界が1cm違うだけで数十万円の差になることもありトラブルに発展することもあります。
・ 因果関係のないポイントを直線でむすんだり、依頼主に都合のいい境界を主張して、依頼主の土地を増やそうと故意に同意を取りつけようとする場合があります。
土地家屋調査士の提案は専門家として尊重すべきですが、法的拘束力はなく、関係者の納得の上で合意です。
対抗策は、「現地の状況で境界を判断」して現状にあった境界を主張しましょう。
市役所、法務局に相談したり、市に事情を説明し市から行政指導してもらうとスムーズに事が進むことがあります。
主張は文書で申し入れましょう。
費用はかかりますが、他の土地家屋調査士に依頼することも考えましょう。
「筆界特定制度」を活用して問題解決をはかったり、悪質な場合は、法的処置をとれば土地家屋調査士の権利はく奪も可能です。
・ 隣接する土地で、既に確定している内容(水路の終点など)は覆せない様に思えますが、合理的な理由があれば、現実に合わせて変更することは可能です。
・ 測定方法の違いによる測定精度・誤差についての許容範囲もありますので覚えておきましょう。
ことばの解説【*1)~*7) まで】
*1)「地図」
法務局にある「地図」は不動産登記法第14条第1項に規定される図面であり、土地の面積や距離、形状、位置について正確性が高く、境界を一定の誤差の範囲内で復元可能な図面です。
しかし、多くの地区で整備が追いつかず、代わりに「地図」に準ずる図面「公図」が使われています。
*2) 「公図」(地図に準ずる図面)
一般的には「公図」と呼ばれ、主に明治時代に租税徴収の目的で作成された図面のことを言い、不動産登記法第14条1項地図が備え付けられるまでの間、これに代わるものとして法務局に備え付けられている図面です。
「地図に準ずる図面」は、土地の面積や距離については正確性が低く、現地復元能力はありません。
しかし、土地の配列や形状の概略を記載した図面とされていて、位置・形状・面積・隣地との関係を表し、当該土地が何番の土地と接しているのか、公共用地(道路・水路・里道など)とどのように接しているのかなどを知ることができます。
*3) 「地籍調査」
国土調査法に基づく 「国土調査」の一環で市町村が主体となって一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。
「地籍調査」で境界確定ができる場合もありますが、なかなか進んでいないのが実情で、進捗率は全国平均で約52%、権利関係がややこしく平均より28%低い都市部で約24%となっています。
*4) 「地籍」
いわば「土地に関する戸籍」のことで行政のさまざまな場面で活用されています。
土地に関する記録は登記所において管理され、土地の位置や形状等を示す情報として備え付けられています。
固定資産税算出の際の基礎情報となるなど、市町村におけるさまざまな行政事務の基礎資料として活用されています。
*5) 「地籍図」
地籍調査に基づき作成された図面で、法務局の登記簿に記載され不動産登記法第14条1項地図として登記所に備え付けられます。
*6) 「土地の境界」
「筆界」と「所有権界」とがあります。
「筆界」とは
不動産登記法123条1号で定義されていて地番と地番の境界を意味し「公法上の境界」とも呼ばれ土地の区画を示します。
法務局で取り扱っている境界は全て「筆界」です。
登記記録や公図、地積測量図などの境界も全て「筆界」です。
筆界は個人が簡単に変更することはできず、変更をするためには分筆登記や合筆登記などの公的な処理が必要です。
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「所有権界」とは
土地の所有者同士が合意の上で、お互いに取り決めた境界を意味し「私法上の境界」とも呼ばれ所有権の範囲を示します。
所有権界の決定は民間人同士で行うため、公的な記録の境界と実際の境界が異なる場合もあります。
所有権界は所有者間の合意などで自由に変更ができるため、後に位置を変更したとしても分筆登記や合筆登記などの公的な処理は必要ありません。
「筆界」は、「所有権界」とは一致することが多いですが、一致しない場合もあります。
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*7) 「地積測量図」
地積とは土地の面積のことで、測量の結果を明らかにする法的な図面で、登記申請の際に添付します。
土地の形状や境界標位置、面積計算についての根拠を示しています。以上。(執筆者:淺井 敏次)