そんな相談がもっとも多い。
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目次
運用をせずに資金を銀行に貯めている日本人が多い
日本人には40歳ぐらいになれば、割とこうしてまとまった資金を運用をせずに銀行に貯めている人は少なくない。
失われた20年だの何の言っても、世界で3番目のGDP(国内総生産)を誇る国なのである。
突出した成功をしなくても真面目に20年も働いていて、浪費せずに普通に暮らしていれば知らず知らずのうちにそれぐらいのおカネは貯まるのだ。
一方、仕事は忙しいし、勤務時間も長いから株や不動産、FX、先物などの投資で積極的に資産運用をする人は全体から見るとごくわずか。
昔友人に勧められた生命保険に加入していたり、少しは勉強を始めてみようと思ったときに買った投資信託を保有しているぐらい。
それ以外のお金は銀行の普通預金に預けていて、「低金利で寝かせておくのは勿体ないな。」と心のどこかで感じながらもいつの間にか時間が過ぎてしまう。
私の体感ではあるがそれが当たらずとも遠からずの平均的日本人の資産状況だろう。
そして、「政府の累積債務の問題」とか、「少子高齢化が進むと年金がヤバい」とか、「マイナンバー制の導入」などのニュースや書物など、目にしたのをきっかけに「何とかしなければ!」と動き出す。
そういう状態にある人におこなうアドバイスはほぼ決まっている。まずは資産が減らないように対策するのだ。
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「現金を銀行に寝かせること」の2つのリスク
具体的には、「場所の分散」と「通貨の分散」をおこなうのである。
冒頭の例のように2,000万円の現金を銀行に寝かせていること。国内ではごく普通のことなのでなかなか気づきにくいが、これは海外から見ると二つの意味で「一極集中」という大きなリスクを背負っている。
1. 資産すべてを一つの国においている
まず一つ目は世界に200カ国近くあるうちのただ1つの国だけに資産を置いておくということに対する危険性である。
国家は自国領土の範囲内において法律を制定したり、政策をおこなったりできるが、他国に対してそうした権力を行使することはできない。
少々極端な例だが、預金が1カ国に集中している状態でその国で、「今お金が足りないから、銀行預金を差し押さえてその50%を税金として徴収します!」という政策が実行されればなす術(すべ)がない。
それを避けるためには預金の一部をその国の施政の及ぶ範囲外のところに分散しておかなければならないのだ。
2. 日本円だけで保有している
もう一つはやはり数多く存在する通貨のうちで日本円というただひとつの通貨で保有しているということである。
自分の預金が1種類の通貨に集中していると、その通貨の価値が下落した場合、世界レベルで見た自分の資産は目減りしてしまう。
例えば冒頭の2,000万円は4年前のUSD1=JPY80のとき、USD25万の価値があった。ところがUSD1=JPY100の今、その2,000万円はUSD20万である。USD5万以上の減少。
アメリカ人の平均年収が約4万ドルなので、為替差損だけで実に平均的アメリカ人の1年以上の収入を失ったことになる。凄まじい目減りである。
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それを防ぐためにはどうするべきであったか?
理想的には3年前に手持ちの2,000万円をすべて米ドルに変えておけば良かったのである。そうすれば今でUSD25万を持っていることになるし、仮にそれを現在の日本円に換算すれば2,500万円になる。
まあそんな100点満点の芸当を出来る人は誰もいまい。だがせめて4年前に半分でも米ドルに替えておけば目減りはUSD2万5,000程度で収まっているのである。
さらに世界には米ドルの他にもユーロやポンドや人民元やスイスフラン、オーストラリアドル等々、それぞれが異なる為替変動をするいろいろな通貨がある。
将来どれが上昇してどれが下落するのかを正確に知るのは困難なことだが、それぞれをある程度並行して保有すれば「どれかが下がればどれが上がる」という状態になり、世界レベルでの自分の資産の全体価値はそれほど変動しなくなる。
これが「場所の分散」と「通貨の分散」である。(執筆者:玉利 将彦)