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不動産事業で成功し、若手音楽家を支援するマダム
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不動産事業で成功した池田栄子さんは、ビルやマンションを複数所有している。一方で、50年余りピアノ教室を主宰し、門下生を多数輩出。「ピアノを教えることは、私の天職」と言う。長女はフランスで活躍する著名なピアニスト、池田珠代・ジグマノフスキーさん。
不動産事業とピアノの先生、その両輪の接点は、コンサートサロンの運営だ。近年は、不動産事業の収益で若手音楽家支援を行うなど、マダム栄子としての活動に力を注いでいる。
お金は、本来、私達を愉しく、豊かな気分にさせてくれるエネルギー。
あなたが「お金の心地いい側面」を感じた時の話を聞かせて下さい!
マダムの「株こと始め」
お金の話は、たくさんあるのよ(笑)。どのお話が良いかしら? たとえばNTTの公募株を買って、その収益でウィーンフィルのニューイヤーコンサートに家族5人で行った話はいかが?
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―是非、そのお話をお願いします!
私が株式投資を始めたのは、NTTが公募株を募集した時(1987年)です。当時、慶応の海外留学生を受け入れるホストファミリーをしていて、オランダ人の留学生に
と言われてね。「買ってみようかな?」と、何気なく思ったの。そのオランダ人留学生は、今、一橋大学の教授。彼、経済のセンスや嗅覚が、もともと鋭いんだと思うわ。
わらしべ長者の絵本を孫に読ませる
公募株は抽選だったから、(ピアノ教室の)スタッフの名義をかき集めて応募しました。当選するかはわからなかったけれど、名義をお借りする時点で、全員に3万円をお渡しして。これが、勝利の女神が微笑んだ理由だと思っています
―「当選したら御礼に3万円」ではなく、「名義を拝借する時点で3万円」なんですね
そうです。 結局、その時は4口買えて、1口120万円の利益が出た時点で売却したので、総額で約500万円の利益となりました。つまり、ひとりに3万円お配りしたことが、500万円の利益に繋がった訳です。
―まるで、「わらしべ長者」みたいですね。
本当にそうよ(笑)。私、わらしべ長者のお話が大好きなの。今でも、わらしべ長者の絵本を自宅に置いて、孫たちに読み聞かせています。
ってね。
マイルールは、「1割~1割5分上がったら売る」
―栄子さんは、お金をどんなものだと捉えているんですか?
微笑みの女神。運?
―コツコツと額に汗して、積み上げるものではなくて?
もちろん、そういう気持ちもあります。だって元手がなければ、株は買えなかったでしょう? でもね、やっぱり、何ていうのかしら? 嗅覚? 私、株で損をしたことがないの。
―株で損をしたことがない!? バブルの時は、大半の人が損をしたと思っていました
私は値段が下がる前に全部売りました。最初から、そのつもりだったの。NTT株も「100万円の儲けが出た時点で売ろう」と、買う前から決めていました。
今でも、そう。株屋さんに
とお伝えしています。だから、損切ったことはないの。要するに、運が良かったのよ(笑)
マイルールに達しない時は「長期保有」
―運がいいだけで、29年も勝ち続けられるものですか? 何か秘訣はあるんですか?
欲をかかない。パートに出て、1万円得るのって大変でしょ? 株で1万円儲けたら御の字。欲をかかなきゃいいのよ。「もう少し上がるかな? もう少し上がるかな?」っていう、それがダメなのよ。
―でも、反対に、「買ってから下がる」ものはなかったんですか?
なんとかインデックスっていうのが、下がったわね。
―正式名称、ご存じないんですね?
そうよ、覚える気もないわ(笑)。その、なんとかインデックスは、ずーっと下がっていて。 私のマイルールである「1割~1割5分上がったら売る」に、長い間、到達しませんでした。
でも、ある時、銀行から「1割上がりました」と連絡があって売却したので、損はしていません。その時に
と言われました。
NTT株で儲けたお金でウィーンの学友協会のニューイヤーコンサートに
―NTT株で儲けた500万円はどうしたんですか?
家族5人でウィーンの学友協会のニューイヤーコンサートに行きました。ちょうど長女が毎日コンクールのピアノ部門で入賞して、お祝いとしてね。もともと、NTT株を買った目的が「ニューイヤーコンサートに行くこと」だったから。
その時は、長女と次女、娘二人には振袖を着せて、私は訪問着。主人と長男はタキシードを着ました。そのタキシード、主人が勤務していたテレビ局の衣装部屋から借りてきたのよ。テレビ局の衣裳部屋には、タキシードがたくさんあるの(笑)。
―そこ、借りちゃうんですか? 普通、「500万円儲かったから、買おう」と思うのでは?
買いません(断言)。たった1回しか着ないのに、もったいないじゃない。
―そのギャップは、何なんでしょうね?
無駄なことはしないだけ。結局、後からタキシードは買いましたけどね。
―学友協会のニューイヤーコンサートは、いかがでしたか?
人類最高の場所。学友協会のニューイヤーコンサートは、音楽をやる人間にとって人類最高の場所だと思うわ。楽器の音も、リズム感も、何もかもが日本とは全然違う。
私以上に、長女が「良かった、良かった!」と、ものすごく感激して。日本の音大に合格していたのに、それを蹴って、パリの国立音大に留学しました。
こうして振り返ってみると、NTT株を買ったことが、我が家にとって大きな分岐点ね。NTT株を買わなければ、ニューイヤーコンサートには行かなかった。ニューイヤーコンサートに行かなければ、娘は国内の音大に進学していたと思います。
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今、長女はフランスでプロのピアニストとして演奏活動をしつつ、音大の教授をしています。娘婿はフランス人の演奏家で、やはり音大教授。孫は、青い目の男の子だもの(笑)。
こうして取材して頂くと、何だかルンルンな感じの人生に見えるものね。私自身は、私の人生のことを「ドブ掃除人生」と呼んでいるの。ずっと、人の後始末や尻拭いばかり。苦労したことも本当に沢山あることを、ちょっとだけ最後にお伝えしたくなりました(笑)。(執筆者:楢戸 ひかる)