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フリーランス妻の線引きは年収130万円のまま
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いわゆる「扶養の範囲」の線引きが、今月(2016年10月)から変わる。女性媒体を中心に記事を書いているので、取材をしながら「へぇ、そうなんだ!」と感じたポイントをまとめたのが前回の記事。
もちろん上記も勉強になったが、「フリーランス」という職業形態で仕事をする私が、ピンポイントで響いたのは、ココ。
これは、フリーランスはもちろん、いわゆる主婦クリエイター(手作りサイトで作品を発表する方)をはじめ、「自分で事業を営んでいる妻」全て当てはまる話だ。今回は、そのことについて整理してみたい。
法改正の正式名称は、ご存じ?
そもそも、今回の法改正の正式名称はご存じだろうか?
「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大(pdf)」という名前で、厚生労働省年金局から平成26年9月18日に文書が出ている。
このタイトルが全てを物語っているのだが、今回の法改正は、「短時間労働者(パート)に対して」なのである。つまり雇われている人の話。自分で事業を営んでいる私達に対しての話ではないのだ。
改正の内容を下記しておく。
(2) 賃金月額が月8万8,000円以上(年106万円以上)
(3) 1年以上雇用されることが見込まれる
(4) 従業員501名以上の勤務先で働いている
上記のうち、とりわけ重要なのは、(1) である。詳しくは前回の記事を参照願いたい。
「扶養の範囲」の線引きはふたつ
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では、「自分で事業を営んでいる妻」の社会保険料の線引きはどうなるのだろうか?
…とその前に、せっかくなので、「扶養の範囲」について、ここでおさらいをしてみよう。
「扶養の範囲」
ひとくちに言っても、妻の収入が「扶養の範囲」にあることによって受けられるメリットは大きく分けて2つある。
(2) サラリーマンの妻の場合、社会保険料が免除になること。
ちなみに自営業者の妻の場合は、もともと個人で独立して社会保険料を支払っているので、2つ目の社会保険料免除は関係ない。
社会保険料は「所得」でなく「年収(売上)」でみる
ここでのポイントは、線引きの金額が税金と社会保険では、違うということ。
結論から、先に書いておこう。
税金
「所得」でラインが決まる。
・ パート… 所得38万円以上
※給与所得控除とは、お給料をもらうための必要経費。サラリーマンでいえば「スーツや靴にお金がかかるでしょうから、その分はお給料から差し引いて収入を計算してあげますよ」という金額だ。
パートの「103万円の壁」というのは、上記の計算式から出てくる。つまり、「パートで103万円以上稼ぐと所得が38万円以上となるので、所得税上『扶養の範囲』を外れる」という話だ。(今回は住民税の扶養の範囲は考えない)
・ 個人事主… 所得38万円以上
個人事業主の場合の所得とは、利益のことである。ゆえに上記の計算式で考えて、
となる。
社会保険
「売上」でラインが決まる。
「自分で事業を営んでいる妻」にとって、間違えやすいのは、社会保険の線引きである。社会保険料の線引きは、「売上」(not所得)でみる、という点。所得ではないので、「経費」によって抑えることができない。ここはよく勘違いしやすい点なので、注意が必要だ。
「扶養の範囲」で働く個人事業主妻だから知っておきたいこと
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「扶養の範囲」で働いている個人事業主の場合、事業規模は税理士や社労士といった「士業の先生方」とお付き合いするほどではない。(私もそうだ)
だから、
という理由で、モヤモヤ感を抱えつつも「何となく」やっていないだろうか?
これまで「何となく」やってこられたのは、税金と社会保険が横断管轄されていなかったから。マイナンバーの導入で、今まで通りの「何となく」では、まかり通らなくなるのではないか? 私はそんなふうに感じている。
まとめ
「自分で事業を営んでいる妻が『扶養の範囲』から外れる条件
・ 税金のライン… 年間所得が38万円以上
・ 社会保険のライン… 年間収入が130万円以上と見込まれる。
ただし、社会保険の加入ラインは『社会保険の加入組合によって違ってくる』ので夫の会社に問い合わせしてみるのが確実です。(執筆者:楢戸 ひかる)