マネーの達人読者の方から、こんな質問を受けました。

厚生労働省の調べによれば、平均初婚年齢は全国平均では男31.1歳、女29.7歳、東京都に至っては男32.4歳、女30.5歳です
。全出産における高齢(35歳以上)出産の割合(第2子以降も含める)は年々増えていて約28%、母親の第1子平均出産年齢は30.7歳(厚生労働省 平成27年人口動態調査より)、父親は平均初婚年齢から類推(国立社会保障研究所調べにより)すると約33歳です。
特に両親ともに年齢が高い場合、その後のライフプランも気になるところです。確かに子供の教育費は心配でしょう。ちなみに私たち夫婦も遅くに子供ができたので、子供の教育費には気を配っています。
目次
高齢夫婦で子供ができてからのライフプラン
子供が成人していないのに、そろそろ年金……というため息も聞こえてきそうです。子供の教育費捻出については、夫の年齢や職業、妻の稼ぎと周囲のバックアップ体制、祖父母などの協力状況などによっても異なります。
例えば1人目のお子さんが生まれたとき、パパが45歳だったとします。お子さんが15歳のときパパは60歳、20歳のときにパパは65歳。中学、高校、大学と子供の学費がかかるころ、パパのお給料が下がり、年金暮らしになる可能性が高いです。
年金暮らしの中から学費を捻出しなければならない状況。ゆとりがない状況の中、もし住宅ローンや家賃などがあったら? 年金は生活費に消え、学費は奨学金の貸与。2重3重にローンを組む可能性もあります。
子供を持つことを考える段階、妊娠した段階からその後のライフプランについて考えることも必要でしょう。検討すべきことを7つお伝えいたします。
1. 稼げるうちに住むところを確保する。
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「賃貸で家賃を払う」、「住宅を購入する。」、「相続で家を持つ。」住まいについては大まかにどれかになると思います。どれを選ぶか稼げるうちに決めておいた方がいいでしょう。
なるべくならお金がかからず、できれば気兼ねもない方が快適です。年金から家賃を出すのはかなり大変と感じるなら、住宅購入か相続での持ち家を検討しましょう。
家賃の額や持ち家なら固定資産税の額や相続税、賃貸と持ち家のどちらが出費は少なくて済むか、父母や義父母への気兼ねなども含め、しっかり比較検討してみましょう。
住宅購入を決めたのなら、頭金をできるだけ多めに出して(貯金は世帯年収の半分ほどは残し)、住宅ローンは少なめにしておけば後々楽です。子供の学費が多くかかる前に住宅ローンが終われば、その後は住宅ローン返済金額を毎月貯金し、子供の学費や生活費、夫婦の老後に備えておくことが可能です。
「家賃の安いところに住むので賃貸を選ぶ」場合は、子供が成人するまで確実にそこに住めるか確認を取りましょう。公営住宅など倍率が高く入れない場合もあるし、大家さんから何らかの事情で立ち退きを迫られる可能性もあるからです。
相続で持ち家を目指す場合は、住宅ローンや家賃がない分、相続税の心配や他の兄弟姉妹とのトラブル、実父母または義父母への気兼ねなどが夫婦の悩みの種になることも考えられます。相続の場合は親族関係円満を保つような努力が必要になるでしょう。
2. 親の力があれば有効活用しよう!

介護につながりそうな感じではありますが、実親にせよ、義父母にせよ、親の力も活用できるなら活用すれば保育代が浮くし、子供も「味方になってくれる」祖父母を心強く思うでしょう。
祖父母が生前に孫の将来の学費まで負担するには基本的には贈与税がかかりますが、平成25年4月から祖父母が孫に対する教育費を金融機関の専用口座を通して支払った場合は、1500万円(習い事などは500万円)までなら贈与税を取られなくなりました。お金持ちの実父母や義父母なら孫の口座を作ってもらうようにお願いしてみる……という手もあるでしょう。
また子供や孫が住宅を取得するためなら、父母や祖父母から20歳以上の子や孫に対する金銭が最高1200万円まで贈与税が非課税になる制度もあり、将来的には住宅購入資金の贈与は非課税枠が増える予定です。
贈与税の非課税は資産家ジジババの贈与だけではありません。1月1日から12月31日までの1年間に110万円までなら、子供や孫(他人でも)に何を買っても贈与税はかからなりません。
住宅購入資金を贈与するときも例えば庶民がコツコツ貯めた300万円でももちろん非課税なので、使えそうなら使った方がオトクではないでしょうか?
3. 今会社員ならぎりぎりまでしがみついてしまう。

特に大黒柱で家計を支えている方(一般的には夫?)は、ぎりぎりまで会社員でいた方が経済的にはお得でしょう。特に家計の社会保険料負担を考えると会社員の健康保険がお得になることが多いです。
60歳以降、例えお給料が下がることがあっても雇用保険から高年齢雇用継続給付金や高年齢再就職給付金が支給されます。再就職の場合は、同じ雇用保険でも再就職手当と比べ多い方の支給を受けましょう。ハローワークで試算してくれます。
妻も出産後も会社員を続けていると、雇用保険から育児休業給付金や健康保険から出産手当金が支給されるので、退職するよりずっと経済的にはお得です。
4. 定年のない自営業で稼ぐべく考えておく。

夫も妻も当てはまることだと思うのですが、会社員を退職して会社員としての再就職が思い通りにならない場合などは、今までの職歴に沿った仕事、またはとても興味があることを商売にできないか、考えてみましょう。
会社を退職後、いくつか条件を満たせば自営業に踏み切っても、就業手当が雇用保険から支給されることもあります。ちなみに会社員時代からあまりに準備が進んでいて、副業として開業届を出してある場合などは就業手当の条件に当てはまりません。
会社を退職した場合は健康保険を任意継続しておいた方が安くなることがあります。国民健康保険は基本的に家族の頭数で保険料が変わるので、高くつくことが多いのですが減免措置もありますので、退職前に健康保険と国民健康保険の保険料を比較しておきましょう。
5. 高齢で保険に入るなら終身保険より学資保険。

子供が出来てから初めて民間の保険に入るなら、終身保険より学資保険をお勧めします。
若い時から終身保険に入っている方なら、子供が大学入学時には保険を解約しても元本割れはありません。終身保険は保険料が高く、高齢で子供が出来た人が終身保険に入ると子供が学費にかかる頃解約すると保険期間が短く元本割れするからです。
現在は保険会社の運用金利も低く、学資保険の取り扱いをしないところもあるそうです。解約したときの払戻金(解約返戻金)が支払い保険料を超える期間が、某学資保険は8年ほどでしたが、終身保険は低解約返戻金のものだと25年以上かかります。高齢パパが終身保険に入っても、子供の学費を出すときに保険金を当てにできないのです。
学資保険に入る時は、契約者の大黒柱が亡くなった場合に保険料が免除になる特約が付いている保険がいいでしょう。
6. 奨学金の準備は早めに、予約や申し込みは多めに。
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ポピュラーなのは日本学生支援機構の奨学金ですが、これは実質教育ローンです
。子供が学生のうちは金利がかからないのが、金融機関の教育ローンと比べ有利な点です。子供がなるべく現役高校生(卒業後2年以降は高校が窓口にならないこともあり)のうちに予約や申し込みを多めにしておきましょう。
他の奨学金との併用を認めない奨学金もありますが、有利な給付型奨学金が通ったら日本学生支援機構の方は必要に応じ辞退することができるのです。多くの給付型の奨学金は子供の成績が良いことが条件なので、日頃から子供自身も努力が必要です。親も子供の適性や興味の度合いなど観察や話し合いが必要でしょう。
7. 母親の医療保険は、子供を考える時点から入ると有利。
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全出産の4分の1が高齢出産の時代です。高齢出産だからと言って特別出産費用がかかるわけではありませんが、民間の医療保険から給付金の出る帝王切開などは高齢出産の方が比率が高いようです。
民間の医療保険は妊娠してから入れるものもありますが、ほとんどは、この出産に関しての医療費に関しては保険金を支払わない、という特約が付くのです。また不妊治療中や婦人病治療中は入れない医療保険も多いです。
結婚後子供を持ちたいと考える時点から、妊娠前に医療保険に入っておくと、帝王切開や切迫早産になった場合、健康保険の出産手当金や出産育児一時金、高額療養費制度などから、民間の医療保険からも給付金を受け取れば、出産費用はほとんどかからないでしょう。その分幼稚園入園金や習い事代に充ててもいいでしょう。
大黒柱が稼げるうちは子供の学費を支払う時期ではなく、年金暮らしで学費を捻出する可能性の高い高齢夫婦の老後は学費を支払うことに専念したいものです。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)