こんにちは、石川です。私はファイナンシャル・プランナーとして「終活」講演会で講師をすることがありますが、「終活」という演題で告知をすると、実に多くの高齢者が集まります。
高知市などの地方都市でも、新聞社が終活セミナーをすると広告をだすと、例えそれが毎年同じような内容のものであっても、毎年、常に500人は軽く集まるんです!
若者向けのライフプランセミナーでは閑古鳥が鳴くのに……です。

目次
2パターンある終活
私も行政や、社会福祉協議会などの依頼を受けて「終活」、「高齢者とお金」、「エンディングノート」などの演題でお話するのですが、最近、必ずお話する「枕詞」があります。
それは「終活には2種類あるんですよ!」ということです。
一つは「元気で」、「活発な」高齢者が参加するような「終活」。
そしてもう一つは「そんな場所に行くことすらできない高齢者がひっそりとする終活」です。
下流老人や老後破綻は「特別なこと」ではない
私は今、国の事業である「生活困窮者自立支援事業」の中の「家計相談」を受け持っています(高知県・高知市・香美市です)
この事業は生活に困っている方が自立できるようにサポートして、生活保護などにならないように支援していく事業ですが、皆さん、どんな人が相談に来られると思いますか?
例を挙げると
・ 「精神的な病気になってしまい、会社を辞めて、求職活動もままならない人」
というアクシデントから困窮になってしまった現役世代や
・ 「奥さんの病期や介護で、医療費などが継続的にかかるので、貯蓄が底をついてしまったお年寄り」
などです。
とくに、高齢者で生活保護を受けている人や、保護基準以下の年金で何とか暮らしている高齢者など、「そうなってしまってからではすでに打つ手がない」お年寄りも珍しくありません。

ですから、下流老人や老後破綻は、私には「特別なこと」ではなく、
「生活に困らず人生を全うできるのは、たまたま運がよかっただけでは?」
という穿ったと批判されそうな見方すらしてしまうのです。
そして、このような高齢者にとっては、終活とは「人生を悔いなく生きる」ということではなく、「無事に人生を終えたい」ということなんです。
これこそ、まさに「二つの終活」が描かれていると言えるのではないでしょうか?
「なぜ、老後破綻してしまったのか?」という原因を明らかにするべき
そんなことを考えていると、著名なFPやコメンテーターが「老後破綻なんか、なかなかするものではない!」ということをおっしゃっていて、とても驚きました。
・ 退職後の生き方を再考すれば、お金がかからない生活スタイルもある。
それらは決して間違いではありませんし、そういう金融リテラシーを身に着けることは、確かに老後破綻を避けることになるでしょう。
しかし、ここで課題にすべきことは「どうすれば将来お金に困らないか?」というノウハウだけでなく、「なぜ、老後破綻してしまったのか?」という原因を明らかにすることでもあるのでは、と思うのです。
つまり、老後破綻しないようにこうすればいい、というアドバイスだけでなく、老後破綻の現実を広く伝え、その実態を啓蒙することも重要ではないのでしょうか?
これから「家計の専門家」がどんどん必要になる

私は決して「老後不安」を煽るつもりまありませんし、煽った末に高齢者に金融商品を販売してやろうなんて、これっぽっちも考えていません。
むしろ地域福祉の現場で生活に困窮している人への家計相談をするファイナンシャル・プランナーとして、また、老後破綻の実例を沢山見てきた一人として、「この現実」をファイナンシャルプランナーとしてしっかりと受け止めて、それから問題解決に進んでいくような「家計の専門家」が日本中に増えることを望んでいます。
そういう「家計の専門家」が増えることによって、「老後破綻を防ぐための金融リテラシー」も、自然と普及すると思うからです。
その結果、誰もが「人生の後半期を不安なく生きる」ことができるようになるのではないでしょうか? ではまた、お会いしましょう!(執筆者:石川 智)