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悲観的な予想に反して起こった「トランプノミクス」
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45代目のアメリカ大統領を決める投票が、日本時間で11月8日の午後8時から始まり、9日の朝から次々に開票されていきました。
ジャーナリストや政治評論家などの多くは、ドナルド・トランプ氏よりヒラリー・クリントン氏の当選を、予想していたと思います。
そのため大きな混乱はないだろういう安心感から、9日の東京株式市場で日経平均株価は、小幅な値上がりで推移していきました。
しかし開票が進み、ドナルド・トランプ氏の優勢が伝わると、日経平均株価は一時1,000円を超える、大幅な値下がりになりました。
また9日の夕方頃に始まった、ヨーロッパの主な株式市場も、大幅な値下がりでスタートしました。
こういった状態を受け、エコノミストやアナリストなどの多くは、「トランプリスク」が現実のものになるとして、今後の株価について悲観的な予想をしていたと思います。
しかしアメリカのマスコミは、当選したドナルド・トランプ氏の政策を「トランプノミクス」と称え、その期待感から9日の夜のニューヨーク株式市場でNYダウは、日経平均株価とは逆に値上がりしました。
またその影響により10日の東京株式市場で、日経平均株価は大幅に値上がりして、前日の暴落を帳消しにしました。
プロの予想が外れるなら素人はもっと当たらない
今回のアメリカの大統領選挙を通じて、政治や経済のプロの予想は、なかなか当たらないものだと思いました。
こういったプロ達は、今後の世界経済や株価などについて、相変わらず予想を繰り返しておりますが、ドナルド・トランプ氏は政治家の経験がなく、その手腕は未知数なだけに、予想が当たるとは思えないのです。
そうなると株なんか買わないで、お金は預貯金の口座に入れておくのが、安全という話になります。
投資に対して税制上の優遇を与える安倍内閣
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預貯金の口座にお金を入れておけば、確かに安全かもしれませんが、現在は金利が低く、全くお金が増えないという現実があります。
また安倍内閣は国民を貯蓄から投資に向けるため、投資をする方に対して、様々な税制上の優遇を与えております。
それは例えば株や投資信託の譲渡益、配当金、分配金を、年間120万まで非課税にするNISAの創設であり、2017年1月に実施が予定されている、個人型の確定拠出年金の対象者の拡充です。
こういった税制上の優遇を受けるため、安倍内閣が推進する貯蓄から投資の流れに、乗ってみようと思う方もいるはずです。
ただこの流れに乗った場合には、プロでも困難な株価の予想という問題が待っておりますので、やはり止めておこうと考えるかもしれません。
もしこういった理由で投資に踏み出せないのなら、次のような「予想しない投資法」で、投資を始めれば良いと思うのです。
どの銘柄が値上がりするかを予想しない
株に関する雑誌やサイトなどを見ると、「ドナルド・トランプ氏の当選で、この銘柄が値上がりする」などといった、特集が組まれております。
こういった特集を見て、気になった方もいるかと思いますが、予想しない投資法では、予想しても当たらないという前提に立ち、このような予想はしないのです。
その代わりに「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」という言葉の通りに、東証1部に上場している全銘柄を購入するのです。
ただ個人で全銘柄を購入しようとすると、大変な資金が必要になりますので、少ない資金でそれを可能にする、TOPIXに連動した運用を目指す「インデックスファンド」を購入します。
全銘柄を購入する場合、値上がりした銘柄だけでなく、値下がりした銘柄も購入するので、TOPIXに連動した運用を目指すインデックスファンドは、東証1部に上場している全銘柄の、平均的な値動きになります。
平均的な値動きになるということは、これを購入すると、他者より大きく儲けることはできませんが、他者より大きく損をすることもありません。
当たるか外れるかわからないプロの予想を信じて、一か八かの勝負をするよりも、TOPIXに連動した運用を目指すインデックスファンドを購入して、市場全体の平均的な収益を手にした方が、堅実で良いと思うのです。
どの国の株が値上がりするかを予想しない
アメリカの大統領選挙の開票日は、冒頭に記載しましたように、東京株式市場やヨーロッパの主な株式市場と、ニューヨーク株式市場では、全く違った値動きになりました。
しかしプロであっても、こういった値動きになることを予想できなかったのですから、素人が予想できるわけがありません。
そのためどの国の株が値上がりしても対応できるように、日本だけではなく、アメリカやヨーロッパの国の株も購入しておくのです。
しかも日本と同じように、特定の銘柄を購入するのではなく、市場全体を購入します。
TOPIXとMSCIコクサイ・ インデックスを購入する方法
それを可能にするのが、「MSCIコクサイ・ インデックス」に連動した運用を目指すインデックスファンドです。
これとTOPIXに連動した運用を目指すインデックスファンドを購入しておけば、日本、ヨーロッパ、アメリカの株式市場の、どれが値上がりしても、市場全体の平均的な収益を手にできます。
この両者を購入する比率は、世界市場における時価総額から考えて、TOPIXが1割、MSCIコクサイ・ インデックスが9割というのが、ひとつの目安になると思うのです。
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購入や売却のタイミングを予想で決めない
こういったインデックスファンドを売買する場合、できるだけ安い時に購入して、できるだけ高い時に売却すれば儲かります。
しかしこういったタイミングを予想するのは、プロでも難しいのですから、初めから予想はしないのです。
その代わりに例えば給与の振込口座から、毎月決まった日に、決まった金額を、自動的に引き落とし、こういったインデックスファンドを購入するように設定しておきます。
売却のタイミングも予想で決めるのではなく、自分がお金を必要とする時に、必要な分だけ売却します。
また「売却するのは毎年(毎月)、資産の5%までにする」などといった、売却のルールをあらかじめ定めておき、そのルールに従って売却します。
こうすると無駄使いを防げると同時に、インデックスファンドが値下がりしている時には、受け取る金額が少なくなるので、資産の減少を防止できるのです。
目新しくないからこそ普遍性がある
株価の予想はしないで、インデックスファンドを購入するという、ここに記載したような投資法は、1973年に「ウォール街のランダム・ウォーカー」が出版されてから、現在に至るまでに、多くの本などで解説されております。
そのため投資の勉強を少しでもした方にとっては、特に目新しいものではないと思います。
ただ目新しくないからこそ、どんな時代でも通用する投資法と考えられ、ドナルド・トランプ氏が大統領になり、先がわからない時代が到来しても、それは変わらないと思うのです。(執筆者:木村 公司)