自動車事故で被害者となった時、入院や治療ですぐにでもお金が必要になりますよね。
しかし、自動車保険の保険金は、示談などで解決して初めて支払われるのが一般的です。
それでもどうしてもすぐにお金が必要な時に利用するとお得な制度が、「仮渡金」と「内払金」です。
今回は、この2つの制度について見ていきましょう。
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目次
保険金の支払いまでには時間がかかる
自動車保険の保険金が支払われるまでには、実際にはかなりの時間を要します。
平均で1か月程度かかる
自動車保険会社「三井ダイレクト損保」によれば、車両保険の保険金支払所要日数は以下のようになっています。
30日以内支払率 : 63.5%
事故解決まで同じスタッフが一貫して担当することで、スピーディーな事故対応を謳っている同社でさえ、事故連絡受付日から保険金支払日まで平均で1か月程度かかります。
そうでない他の損保会社はもっと日数がかかりそうですね。
被害者請求を利用しても時間がかかる
自賠責保険には「被害者請求」(自動車損害賠償保障法16条)という制度があり、加害者が加入している自賠責保険会社に対して直接賠償金の支払いができる制度です。
ただし、この制度では原則として損害額が確定して、示談や和解が成立もしくは判決が確定してから、保険金が支払われます。
自賠責保険の支払基準に沿った支払いを求めるなら、自賠責保険損害調査事務所の調査を待たなければならないので、やはり時間がかかります。
被害者のみが利用できる「仮渡金」
どうしてもすぐに当座の保険金を受け取りたい、そんなときに使える制度が、自賠責保険の「仮渡金」です。
仮渡金制度を利用すれば、損害賠償額が確定する前であっても、当座の支払いを自賠責保険会社に請求できます。
仮渡金の金額
自動車損害賠償保障法17条1項、自動車損害賠償保障法施行令5条によって、仮渡金の金額にも上限が以下のように設けられています。
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請求方法、請求回数について
仮渡金の請求に際しては、以下のような書類が必要となります。
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仮渡金の請求は1回のみ可能で、請求1週間後をめどに支払いされます。
完治後の精算で実際にかかった金額の書類を提出するのですが、その金額が仮渡金を下回ると残りを返却しなければなりません。
被害者、加害者の双方が利用できる「内払金」
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仮渡金は被害者のみが自賠責保険会社に請求できる制度ですが、被害者だけでなく加害者も任意保険会社に当座のお金を請求する制度を「内払金」と呼びます。
事故の傷害により発生した治療費や休業補償費用、入院費などの合計金額が10万円以上となった場合、10万円ずつ保険金が支払われます。
すでにその費用を支払済みの場合、その金額が10万円を超えるたびに請求が可能な点が、仮渡金との違いです。
注意点
内払金請求のためには、仮渡金の必要書類に加えて、支払ったことを証明する書類を提出しなければなりません。
また、傷害のみが対象で、死亡や後遺障害の場合は対象外です。
(執筆者:角野 達仁)