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改憲に向けて始まっている拡張財政の話
拡張財政の話が始まっています。
森友学園や加計学園といった騒ぎがありましたが、今国会の会期末も迫っており官邸の逃げ切りが濃くなってきました。
この後は、2020年の改憲に向けて、本格的な動きが出てくると思われます。
そんな中で、私たちが備えておくべきことは何かを考察してみたいと思います。
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長期金利を0(ゼロ)近辺に固定にして現状維持を続けている理由
日銀政策決定会合は、昨年9月以降ほとんど新しいニュースがありません。それは至極当然のことで、現状維持以外の選択肢があり得ないからです。
今の日本において、金融政策でインフレ目標を達成することは、ほぼ無理と答えが出ました。
しかしながら、日銀が国債買い入れを止めると、0(ゼロ)近辺で維持している長期金利の維持ができません。
長期金利が上昇すると、財政と日銀のバランスシートが毀損します。
日銀は国債を買い過ぎたために、金利上昇で国債価格が下落すると、最大10兆円の債務超過に陥るという試算もあるほどです。
また、現実的ではないですが、これ以上金利を下げると金融システムが壊滅する恐れがあります。
すなわち、1日でも長く国債の買い入れを続け、長期金利を0(ゼロ)近辺に固定すること以外、日銀には政策も手段もありません。これが現状維持を続けている理由です。
国債に限りがあるため続かない政策
問題は市中の国債に限りがあるため、この政策がいつまでも続ける訳にはいきません。(日銀が国債を買いたいのに、売りがなかった日が今年になって既に3回あります。)
異次元緩和という第1の矢が、終わりに近づいていることを頭に入れておくべき時期だと思います。
第1の矢の終わりとは、
・ 金利の引き上げ
・ 日銀のバランスシートの縮小に向かう
ということですので今、低金利で長期固定のローンを組むのは正解でしょう。
政府、国会、日銀は、異次元緩和の出口について、かなりの数の考察を始めているようです。
真剣に向き合わなければいけない時期
黒田総裁の会見では、出口を語るのは時期尚早と聞こえてきますが、真剣に向き合う時期が来ていることは認めざるを得ないはずです。
改憲に向け株価を維持するために、あと1~2年ほど出口戦略の開始を延期したとしても、それ以後異次元緩和を継続するのはまず不可能です。
とはいえ、うかつに出口を語ると、金融市場がパニックになる可能性があります。
株式市場や為替に大混乱を引き起こし、景気の腰を折ることにもなりかねません。
間違えられない出口戦略
早晩、テーパリング(金融緩和の縮小)に転じ、慎重に慎重を期し、長い時間を掛けて金融政策の正常化を進めることになるでしょう。
もしも、出口戦略を間違えるようなことがあれば、世界経済の波乱要因になります。
こうした事情があったからかどうか判りませんが、ベン・バーナンキ前FRB議長が「日本は財政出動に転じるべき」という逃げ道を示しました。
第1の矢が終わっても、まだ第2の矢があると、あらかじめ示しておくことで、出口戦略をスムーズにしようとしたと思えます。
財務省の財政再建よりも、積極財政派の声が大きくなってきています。
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消費増税の文字が消えた「骨太の方針」
6月9日に閣議決定した「骨太の方針」では、消費増税の文字が消え、プライマリーバランスに関する表現も変更されました。
たしかに、第2の矢(財政出動)は、威力を発揮するでしょう。
教育無償化や消費増税の再々延期(あるいは凍結)で、日銀が達成できなかった2%のインフレをあっさり達成できるかもしれません。
それこそが、総理や官邸の狙いとも取れます。2%のインフレ達成と財政出動による株高牽引で、アベノミクスの成功を宣言し、高い支持率を背景に改憲を成し遂げるというシナリオです。
総理の改憲スケジュールどおり行けば、2020年にプライマリーバランスの黒字実現は、ほぼ不可能になります。
5年もすれば現実になる恐れがある
まだまだ先と思う方が大半でしょうが、具体的な日程が目の前に迫りつつあります。
4年にわたり第1の矢(異次元緩和)を射ちつくし、これから第2の矢(財政出動)を射ちまくったとすれば、その後の財政や経済は考えるのも恐ろしい事態が待っています。
それが、5年もすれば現実になる恐れがあることも、しっかりと記憶しておきたいところです。(執筆者:渡辺 紀夫)