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社会保険料の変更について
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社会保険料は「定時決定」と「随時改定」と言われる、保険料の見直し時期があります。
「定時決定」
給与によって原則として4月、5月、6月の給与額で大きな見直しが毎年1回行われます。
「随時改定」
一定条件を満たした場合には、年度の途中でも見直しが行われます。
「固定的賃金」(基本給、住宅手当など)の変動により、今までの給与より大幅に変化したなどです。
今回は、年度の途中でも見直しが行われる「随時改定」をピックアップします。
「随時改定」の条件
次の3つの条件を全て満たした場合、給与改定後に初めて給与が支払われた月から起算して4か月目から給与天引きされる社会保険料が変更されます。
条件1
昇給または降給等により「固定的賃金」に変動があったとき。
社会保険料額が算定される基礎となる給与は、「固定的賃金」と「非固定的賃金」に分けられます。
「非固定的賃金」の変動のみでは随時改定は行いません。
また、「賞与」については、「賞与」に社会保険料率が掛けられ社会保険料額を算出するため、「随時改定」の給与には入りません。
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「固定的賃金」
支給額や支給率が決まっているものをいいます。
・ 役職手当
・ 家族手当
・ 住宅手当
・ 通勤手当
など。
「固定的賃金」の変動とは、次のような場合があります。
1. 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
2. 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
3. 日給や時間給の単価(日当、単価)の変更
4. 請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
5. 住宅手当、役職手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
「非固定的賃金」
歩合手当
皆勤手当
精勤手当
など。
条件2
給与(「固定的賃金」)変動月からの3か月間に支給された給与(残業手当等の「非固定的賃金」を含む)の合計額の平均額がこれまでの標準報酬月額と2等級以上の差が生じたとき。
条件3
3か月とも給与の支払基礎日数が17日以上であること。
「随時改定」の意義
毎年1回の「定時決定」により決定された標準報酬月額は、原則その年の9月から翌年の8月まで1年間適用されます。
しかし、この間に昇給や降給などにより給与に大幅な変動があったときは、実態とかけ離れた状態にならないよう次回の「定時決定」を待たずに標準報酬月額を見直します。
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「随時改定」の対象にならない場合
「固定的賃金」の上下があった場合でも「随時改定」にあたらない場合があります。
パターンA
基本給などの「固定的賃金」は上がったが、残業手当などの「非固定的賃金」が減ったため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合
パターンB
基本給などの「固定的賃金」は下がったが、残業手当などの「非固定的賃金」が増えたため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合
このように、社会保険料は1年間固定のものではなくて、年度中の変更があるので注意しましょう。(執筆者:社会保険労務士 高橋 豊)