日本人の死亡原因第一位は癌、といっても
おそらく多くの人がそう思っているでしょう。
しかし、もし現実問題として直面したら。ましてやそれが高齢の親だったら。家族は、どのように親を支えつつ、自分の暮らしを守っていくことができるのでしょうか。
目次
筆者の場合…突然やってきた、癌の宣告
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筆者は6年前、父を癌で亡くしました。当時父は76歳、高血圧や糖尿病はあるものの薬でコントロールができており、食事制限もありません。
プールに通い1日1万歩を目指して歩くほど体調管理に注意し、定期的な通院や癌検診もきちんと受けていました。
ところがある日、「昨日、あり得ないほどお腹が痛かった」と妙に気になる聞きなれない言い方をしたのです。
この「あり得ない痛み」が曲者でした
検査の結果、
微塵も予想していなかった、まさしくドラマのような展開でした。
高齢者の注意したい症状
高齢者の場合、高血圧などで定期的に通院しておられる方も多いでしょう。しかし、油断は禁物です。
たとえ受診していても検診を受けていても、気がかりな症状が続いたら、診察を受けることをおすすめします。
たとえ、「お腹の痛み」というような日常的によくあることでも、
・ 普段言わないようなことを言う
・ 発熱など他にも症状がでる
などは要注意です。
父の闘病生活を振り返ると「ちょっとした日常の異変」こそ、病院に走るサインだったように思われます。
そしてその受診には、できれば普段の様子を知っている人が立ち会うほうがよいと経験から感じます。
高齢になると心配かけたくないとか、弱った自分を認めたくないなどという思いからか、辛い症状があっても、他人には言わないこともみられます。いくら相手が医師でもです。
また、年を取ると痴呆まではいかなくても、自分の症状を忘れていることもあります。
診察に付き添えないなら、医師とのコミュニケーションの方法を検討し、正確な情報が伝わるように配慮してください。
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筆者の場合…先の暮らしを見据え専門家に相談
近年では、治療をスムーズに進めるために癌の告知は本人にもされます。
もちろん、深刻な状態であればダメージを与えない言い方が配慮されますが、しかし癌だからといって、すぐさま暮らしが変わるわけではありません。
筆者の父は当初、身の回りのことは自分でこなし、生活するのに不自由な状態ではありませんでした。
しかし病状を考えると、父が寝込んだらどのように介護、看護していけばよいのか、今後のことを考えておく必要があります。
でも、どこに相談していいのかすらわかりません。考えた挙句、介護職についている友人に連絡をとりました。
すると友人は、一人のケアマネージャーを紹介してくれました。
この出会いこそ、私たち家族の闘病生活を全面的にサポートし支えてくれるものだったのです。
我が家に合った、信頼できるサポートメンバーを見つけよう!
ケアマネージャーは、介護者やその家族から要望を聞き、ケアプランを作成しサービスの手配にあたることを業務としています。
筆者の父は、友人いわく「医療に強いケアマネージャー」を紹介していただきました。
というのもケアマネージャーになるためには、
と定められています。
つまりそれぞれのケアマネージャーにも、得意分野があるように思われます。
求めるサービスは、それぞれの家庭によって異なります。我が家のように、すでに病気を発症している場合には、医療機関との連携は欠かせません。
より希望に沿った暮らしをしていくために、家庭の状況に合ったケアマネージャーと出会うこと、それはとても大切なことです。
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一般的な介護サービスの利用
親の生活に何らかの支障がでる
↓
市区町村にある介護保険課もしくは地域包括支援センターに相談
↓
介護認定を受ける
↓
ケアマネージャーに依頼
という行程をとることが多いようです。行政の窓口でもプロの声は聞けますが、友人知人や親戚など、介護職についている人、または家族がお世話になっている人は周りにいませんか。
身近な人の生の声を聞くことは、より具体的に実生活に役立つことが多々あります。
介護認定の申請は早めの行動を!
ケアマネージャーによるケアプランの作成や、実際のサービスを受けるためには、まず介護認定を受けなくてはなりません。
介護は健康保険のように費用を納めても保険証を持っているだけでは、サービスは受けられません。
介護認定の申請
役所または地域包括センターに申請し、介護認定調査を受けます。
↓
親の現状が要支援、要介護の7つの段階の中でどれにあてはまるか、もしくはあてはまらないか、聞き取り調査が行われます。
↓
かかりつけ医による意見書(主治医意見書)と併せて、利用できるサービスと利用できる金額の上限額が決定されます。
そのため病院の受診と同様に、実際の親の状況を正しく伝えることが大切です。
日頃の状態を把握している人が、同席するようにしましょう。
もし、希望に添う認定結果が出なかった場合、60日以内であれば不服申し立てができます。
サービス開始の前に…家族での意思の共有を
介護サービスを受けるにあたり、実際何を困っているのかどんな支援を必要としているか、家族で話し合い明確にしておく必要があります。
介護サービス
・入浴、食事、排せつなどの身体介護
・掃除、洗濯、調理などの生活援助
・通院のための乗車、降車の介助など
日々の暮らしに欠かせないものが含まれています。しかしなかには家族が同居している場合は、利用できない支援もみられるので確認が必要です。
申請は早目に
病気の親に無理をしてもらわないため、自分の暮らしのためにも早めに申請することが大切です。この認定結果は原則として、
ことになっています。
しかし30日という日数は高齢者の場合、急な病状の変化もみられます。我が家でも、ケアプランが詰められないため待ち焦がれる状況でした。
使える介護保険
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1. 住宅改修
体の状況が変わると、自宅で暮らす中で暮らし方を変えていく必要性も生まれます。
・ 和式トイレが難しい
・ ドアが引き戸であれば…
などの希望もでるでしょう。
介護サービスには要支援、要介護の区分に関係なく、指定の書類を提出すれば住宅改修費の9割相当額が償還払いされます。
支給額は、限度基準額となる20万円の9割が上限となりますが、要介護状態区分が3段階重くなった場合、または転居時には再び20万円までが支給限度基準となります。
2. 特定福祉用具の購入・レンタル
日常生活を少しでもラクにすごせるように、腰掛便座や入浴補助用具、歩行器、つえなどの購入やレンタルにも、介護保険が利用できます。
1割負担の人ならば、購入する場合は4月から翌年3月までの1年間に10万円まで、指定業者から商品の1割の金額で購入できます。またレンタルは、1か月単位でレンタル料金の1割の負担です。
購入するかレンタルかの決定には、要介護度により対象外の商品があったり、使用者の体調や使用期間によって見極めが難しいため、ケアマネージャーなど専門家に相談しましょう。
さいごに
余命半年を宣告された父でしたが、2年頑張ってくれました。その間十分に父を支えられたのか、というと「もっともっとしてあげたかった」という思いと同時に、
私達は、健康な日常生活では介護について考える機会が少ないかもしれません。
「支え」は多い方がいい
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それでも筆者が大きな悔いなく介護生活を終えられたのは、ケアマネージャー、介護ヘルパー、医師、訪問看護師、親戚など多くの人たちの支えがあったからこそです。
上記に記した住宅改修や特定福祉用具のレンタルについても、ケアマネージャーからの指導から知り得た情報でした。
人一人を家族だけで支えるのは正直難しく感じます。たとえ遠く離れて暮らしていても、親が一人暮らしをしていても、同居する家族が少なくても支える方法を模索してください。
大切な親だからこそ、友人知人、親戚、行政あらゆるところに救いを求めましょう。家族みんなが納得できる一日一日を過ごすために。(執筆者:吉田 りょう)