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教育無償化
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教育無償化をめぐってはこども保険で国民負担する案が出ていますが、一方で教育国債を発行する案も依然としてあります。
こども保険
幼児教育(保育料)無償化
教育国債
高等教育(大学授業料)無償化
どのステージを無償化するのかという点でまず違いますが、教育国債を発行する場合でも「出世払い」という国民負担を求める案があるため、行方を注視していったほうがいいでしょう。
出世払いの意味
平成29年9月より政府は検討していく予定ですが、平成29年8月13日の日経新聞報道・同28日の共同通信社配信記事では、オーストラリアのHECSを参考に制度づくりをするとされています。
所得に応じて支払義務の有無があり給与天引きされる
学生には教育国債を充当(本来学生に負担してもらう授業料も国からの補助金を充当して、学生負担は免除となる)するけど、成績優秀者や学ぶ意欲がある人は、卒業後は場合により返還を求めるというものです。
「場合により」とは、一定の所得以上になった場合は返還義務が出てくるという意味です。
オーストラリアのHECSでは課税所得の0~8%(割合は所得に応じて変わる)返還します。0%の要件にあてはまればその年は返還しません。
また返還義務が生じた場合には、社会保険料や税金のように給与から天引き(源泉徴収)する方式が考えられています。
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奨学金との共通点
すでに出世払い返還と近い形で、無利息型の奨学金には所得連動返還方式の返還方法も存在します。
これは、住民税課税対象所得の9%分を年間で支払い、月額にして2,000円に達しない場合は月2,000円を払うというものです。通常、貸与型奨学金は定額で返還します。
返還額が所得に応じた割合になっている点は、出世払いの構想とも似通っています。
また所得連動返還方式はマイナンバーを活用した形で導入していますが、出世払い方式も同様にマイナンバーの活用をしていくものと考えられます。
奨学金との違い
出世払いは払い方に特徴があります。奨学金の返還は定額方式・所得連動返還方式どちらも口座振替で払っていきます。出世払いはオーストラリアのHECSを参考にするということは、給与からの天引きです。
また所得連動返還型奨学金は返還義務が常にあり、最低でも月2,000円は返還しないといけませんが、出世払い方式は所得によっては返還しなくて良くなることが想定されます。
最後に
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出世払い方式は「高等教育無償化」財源確保の一案として出ているので、従来の奨学金より手厚くかつ返還義務が緩くなることが想定されます。
無償化ではあるけど少しでも財源確保したいことから、無理のない範囲で確実に取れる方式ということで出世払いなのでしょう。
社会人になってからの奨学金返還不能は社会問題になっており、それもふまえて方式が決まると考えられます。
なお課税所得に応じて返還額が決まる方式の場合、医療費控除や保険料控除など年末調整・確定申告できちんと活用しておくとよいです。(執筆者:石谷 彰彦)