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担任だった先生の、忘れられない進路指導

私が中学生だったころの進路指導ですから、もう20年くらい前のことになりましょうか。
世の中には「1つでも難しい高校を目指さねばならない!」というような指導をされる先生もいるということですから、こういう先生にあたったのはラッキーだったと思います。
私がABCのどの高校を受験したのか、そしてその後の進路はどうだったのかをここで問題にするつもりはありません。
そして卒業した高校で人生が決定するとも思いません。
だけど、この先生のこの発想は、私の人生の重要な指針の1つになっていると感じているのです。
「ご近所」でマイホームを3種類に分ける
受験校決定とマイホーム購入は、非常に似ていると思います。どちらも、新しい生活のスタート地点を選んでいるんですもの。
そういう観点で、今回はマイホームを高校になぞらえて、3種類に分けてみました。
(1) 戸建分譲住宅 ~都市部の高校タイプ~
都市部では、ある程度の広さの地域に数十校の高校が存在します。
受験生は、それだけたくさんの選択肢から受験先を選ばなければなりません。そうなると自然に、各高校に入学する生徒の学力が固定されてきます。
塾のホームページを調べれば、偏差値1ポイント刻みに高校がランキングされる状態ですね。
戸建分譲住宅での新生活は、まさにそんな高校で迎える新学期に似ています。
マイホームの価格帯はどの区画でもほぼ横並びなのですから、似たような所得水準、もしかしたら似たような価値観、消費生活、家族形態(子の年齢)、学歴? の家庭が集まって「ご近所」を形成することになるでしょう。
(2) 高層マンション ~地方の高校タイプ~
都市部の高校で序列化が進むのに対し、地方の高校はそうはいきません。
中学生が通学の便を考えたとき、受験できる選択肢は数校に留まることも珍しくありません。
このため、偏差値50ちょっとの生徒と東大を狙うような生徒が同じ高校で生活することだって考えられるのです。
高層マンションの販売価格は、一般に眺望の良い上階ほど跳ね上がります。
同じ棟でも最低価格と最高価格では倍以上の開きが生じることもある高層マンションの新生活。
その「ご近所」関係は、まさに様々な学力の生徒が混在する田舎の高校での人間関係そのものです。
いや、どれだけのお金を支払って居住しているか(≒どれだけリッチか)が、住まう部屋で一目瞭然な点は異なるのでしょうか。
(3) 中古住宅 ~転入生タイプ~
中古住宅に限らず、1軒2軒だけで販売されている新築住宅もこのカテゴリーに入るでしょう。
つまり、すでに形成されている「ご近所」に、途中加入するということです。まるで転入生のように。
「ご近所」こそマイホームの価値!
私がこんなにも「ご近所」にこだわるのは、これこそがマイホームの価値だと思うからです。
子どもをのびのび育てたいなら、その同年代のお友だちが「ご近所」にたくさんいるかどうかはとっても重要。
まぁ近隣の高齢者の寵愛を一身に受けるというパターンもあるのでしょうが。
反対に、「ご近所」の方々とそりが合わなくなってしまうと、どんなにハイスペックな設備で便利な立地だとしても、なんだか楽しくなくなりそうじゃないですか?
3タイプ別「ご近所」の良いところと注意すべきところ

(1) 戸建分譲住宅 ~都市部の高校タイプ~
最大の長所は、似かよった家計規模の家族が集まってくる可能性が高いというところでしょう。
このため、車の種類(台数)や旅行の回数(行先)、着ている(着せている衣服)、要するに生活スタイル全般にも大した差は生じないはずです。
その分、子育てや夫馴らし、親戚づきあいなどの悩みだって、井戸端で抵抗なく分かち合えるのではないでしょうか。
ただし、一時的な臨時収入や無理なローンを組むなどして、このタイプで一回り高い価格帯に住んでしまうと悲劇を呼ぶかもしれません。
極端な例では、周りのお友だちは私立の小学校に入学したのに、わが子に同じことはさせられないとか。
「差」は幸福感に大きな影響を与えるといった調査結果もあります。
旅行や衣食など何かにつけ、その差が大きくなればなるほど、子どもに我慢をさせることが増えるように思います。
(2) 高層マンション ~地方の高校タイプ~
このタイプの「ご近所」は(1)とは正反対に、歴然とした差が当たり前に存在するのが特徴です。
子どもの教育に関して言えば、「世の中にはいろんな人がいる」ということを教えるにはぴったりの環境ではないでしょうか。
差があったとしても、特定のグループがマイノリティとなるわけではありませんから。
ただしこのタイプでは、少し前のドラマでも話題になった「ママカースト」が気になります。
所得や消費の大きさで人間の優劣など付けられるはずもありませんから、そのあたりのところで凛としていられる度量があれば安心ですね。
(3) 中古住宅 ~転入生タイプ~
このタイプはデメリットから指摘しましょう。ズバリ既存のコミュニティに入りにくいところです。
場合によっては暗黙の了解を破ってしまい、異分子のレッテルを張られたところから新生活のスタートを切らねばならないことになるかもしれませんね。
しかし、ものは考えようです。
このタイプの物件ではすでに「ご近所」が形成されているので、そのコミュニティが健全かどうかを事前にリサーチできるという、他にはない長所があります。
何も噂話を聞き込む必要はありません。ゴミの出方や公園のようす、建物や敷地の手入れの様子などから、健康な生活をしている地域かどうかが見て取れるはずです。
またこのタイプの住宅では「小さな子がいるのはわが家だけ」ということにもなりかねませんが、それだってリサーチで充分に確認できることです。
最後に

あくまでもおおざっぱな分類ですので、(1)タイプのマンションや(2)タイプの戸建分譲住宅も存在することは断っておきます。重要なのは価格帯のバラつきなんですね。
一生一度の買い物であるマイホーム。
ですが、マイホームを買って手に入れたいのは、その後の幸せな生活のはずです。
幸せのかたちは人それぞれですが、この記事では私が重要視する幸せを押し売りしてしまったかもしれませんね。
ですがこの記事が、マイホーム購入検討の折には、マイホームそれ自体だけではなく、その後の生活を想像するきっかけとなってくれれば幸いです。(執筆者:徳田 仁美)