少子高齢化が進む中で人口増加につなげようと、各自治体は子どもに対する医療費助成を充実させてきましたし、国も後押ししてきました。
幼児教育無償化の動きもあり、この先続いていくようにも見えますが、批判もあるため楽観視はできない状況です。
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自治体によって子どもの医療費「無償化」にも

現役世代の医療費窓口負担割合は通常3割であることに比べると、未就学児の医療費窓口負担割合は2割と、軽減されています。
これをさらに軽減するための医療費助成制度が、全国各地の自治体にあります。
大阪市や横浜市などでは所得制限がついていますが、東京23区などでは所得制限がありません。
しかも23区の多くの区は中学生まで医療費実質無料であり、千代田区・北区は高校生までになり、医療費については「無償化」が実現していると言えます。
また福岡市などのように、入院と外来で助成の仕方を変えている自治体もあります。
各自治体の子供向け医療費助成制度は2005年前後から拡充されていき、充実してきました。
医療費実質無料の恩恵を受けられる自治体に住んでいれば、学資保険の子供向け医療保障も不要だというアドバイスもされてきました。
制度の先行き

とりあえずは現状維持しそう
子ども医療費助成制度を実施する自治体に対して国は補助金を出していますが、子ども医療費助成に関して一旦窓口で支払った分の払い戻しをする方式でなく相殺する方式をとった自治体に対し、補助金を減らすペナルティがありました。このペナルティは、2018年度から廃止の予定です。
また最近も「人づくり革命」なるものが安倍政権の看板政策になりましたが、教育無償化を含んでいます。
となれば子育てに関わり、人づくり革命を側面支援する子ども医療費助成にブレーキを踏むことは考えにくいです。
批判的な見方もあるため注視が必要
とはいえ、子どもに手厚い医療費助成を食い止めようという動きも見られます。
2017年9月4日の日経新聞で、財務省・厚労省が生活保護の医療扶助を見直す方針であることが報じられ、東大阪市のかかりつけ薬局制度を全国に広めていくことが考えられています。
生活保護受給者も医療扶助を受ければ医療費は実質無料ですが、薬の過剰投与というモラルハザードの温床となっているという理由です。
気になるのは同紙では、8月に子ども医療費助成も似たような理屈で問題視していたことです。
財務省サイドの論理に見えますが、確かに無料となれば過剰受診につながりかねませんし、これが原因で窓口支払が何もいらない方式をとる自治体にはペナルティを課していました。
高齢者の医療費が膨らんでいるのでそこが一番の問題ではありますが、国に財政支援強化まで求めてこの助成制度を維持しようという自治体もある以上、過剰な診療につながる材料は財政学者等から批判が出てしまいます。
軽症で救急車を利用することが一時期大きく批判されたように、保険や助成で成り立っている医療の利用に関しては気をつける必要があります。(執筆者:石谷 彰彦)