平成29年の年末、外れ馬券の必要経費算入を巡って2つの異なる最高裁判決が出ています。
一方は認められ、もう一方は認めないというもの。
「どういうこと?」と首をかしげた方もいらっしゃると思います。
この判決を理解し、そして迫ってきた平成29年分確定申告にいかしていきましょう。
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目次
なぜ判決が分かれたのか?
競馬の払戻金は原則一時所得で、外れ馬券は必要経費ではない
競馬の払戻金は、従来「営利目的の継続的な行為による収入とは言えないもの」とされ、国税庁のタックスアンサーでも一時所得の1つとして紹介されていました。
一時所得の計算式は
ですがこの場合の必要経費は、収入を得るために直接要した支出に限定されます。
一時所得に該当する競馬の払戻金に対しては、収入を得るために直接要した当たり馬券代は必要経費にできますが、外れ馬券代を必要経費に算入することはできません。
満期保険金にあたる一時所得であれば、払ってきた保険料総額を必要経費にすることはできます。
雑所得にあたるケースとは
競馬払戻金が雑所得に該当すると最高裁で認められた例は2例あります。
しかし、いずれもソフトウェア・インターネットサービスを利用して、JRA競馬場のほぼ全レースを対象に(少なくとも目標にして)、大量に網羅的に購入していました。
そして、全体として黒字が出ています。
営利目的がありかつ反復継続性を伴って雑所得となり、外れ馬券代が必要経費になるということです。
趣味の範囲でレースを選択して購入しているようなケースでは、雑所得に該当するとは言えないため、外れ馬券の必要経費算入を認めない最高裁判決も出ています。
通常は一時金扱いのほうが税軽減になる
満期保険金を1回でもらう場合と分割でもらう場合、税制上前者は一時所得になり、後者は雑所得になります。
雑所得の算式は
であり、必要経費は、
になります。
この場合は雑所得・一時所得ともに保険料総額が必要経費になるので、一時所得のように50万円控除して2で割るほうが所得税・住民税は軽減されます。
競馬払戻金の場合は雑所得になると、収入を得るための間接的な必要経費にあたる外れ馬券代なども認められるので、裁判で争われているようなケースでは雑所得のほうが有利になります。
平成27年3月の最高裁判決の例では、一時所得では総額約29億円のものが、雑所得で計算すると総額約1.4億円にまで減っています。
反復継続性のある雑所得の必要経費
雑所得に該当するものとして代表的なのが、
・ FX取引
・ 先物取引
・ ビットコイン
・ その他副業の所得
にあたるものです。
FX・先物取引に関しては分離課税の雑所得になり、3年間の損失繰越も可能です。
年金に関しては必要経費が収入額に応じて自動的に決まりますが、その他に関しては支払ったものを請求書・領収書等に基づいて入れることができます。
競馬払戻金が雑所得と認められたケースに関しては、外れ馬券代の他、ソフトサービスの利用料も雑所得の必要経費として認められています。
FX取引・先物取引・ビットコインといった金融取引の必要経費として、書籍代・セミナー代・通信料・PC関連経費を必要経費に入れておいたほうがいいです(株式取引の場合は譲渡所得なので異なります)。
ただし事業と私用兼用の場合は、事業割合を例えば20%などと見積もってその割合だけ(実費1万円なら2千円を)経費とします。
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外れ馬券判決に学ぶ必要経費算入の注意点
ただ競馬払戻金を巡る訴訟の判決から解釈すると、反復継続性が無ければ必要経費の範囲が直接的なものに限定され、有れば必要経費は間接的なものも認められるということになります。
FXやビットコインなどにおいて取引のない月があるなど、雑所得とはいえ反復継続性がない場合にまで上記のような経費(特に通信料や光熱費のような毎月かかる固定費)が認められるかは疑問です。
微妙なケースは国税当局や税理士等と相談した上で申告となるでしょうが、取引の継続性と照らし合わせて、書籍代などの直接的とは言えない経費まで算入するか判断したほうがいいです。(執筆者:石谷 彰彦)