都内在住の読者の方から
という質問がありました。
そこで「教育無償化」についてのアンサー記事を書こうと思います。
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目次
子供1人の教育費ってどのくらいかかる?
以前の記事「子ども1人育てるのに必要な費用はどのくらい? 出産育児で、国からもらえるお金や制度、もぜんぶ教えてください。」でも書いたのですが、子供1人の教育費は結構かかるものです。
文部科学省の平成26年度学習費調査によれば、子供1人に付きかかる教育費(学校外活動費含む)は、幼稚園、小学、中学、高校、大学全部公立だった場合、総額約727万円、全部私立だった場合は総額約2,172万円です。
幼稚園私立、小中公立、高校大学私立だと約1,186万円、もし大学が国公立なら約986万円幼稚園私立、小中高公立、大学私立だと約1,010万円、大学が公立なら約810万円です。
この記事では主に小中学校の教育費について、解説していますが、今回は政府の「教育無償化」の対象である、幼稚園や高校での教育費に焦点を当ててみたいと思います。
幼稚園でかかる教育費
幼稚園での教育費について平成26年度と平成28年度を確認してみましょう。
平成28年度の公立幼稚園
年少から3年だと約70万円
私立幼稚園は年平均 48万2,000円
年少から3年だと約145万円
平成26年度の公立幼稚園
年少から3年だと約66万6,000円
私立幼稚園は年平均 49万8,000円
年少から3年だと約149万4,000円
ですので、2年間で少し教育費は下がっていることになります。
幼稚園無償化はどうなる?
政府がまとめた子育て支援策によれば、再来年から段階的に保育園や幼稚園の保育料、授業料の免除となる予定です。
幼児教育では3~5歳のすべての子ども(保護者の所得制限なし)の認可保育所や幼稚園、認定こども園の費用を無償化し、0~2歳児は年収約260万円未満の住民税非課税世帯を無償化する予定です。
認可外保育所などをどこまで無償化するかは来年夏頃までに詳細を明らかにしていく予定とのことです。
幼稚園入園、パパママを助けてくれるその他の制度は?
4歳から小学校就学前には、多くの自治体が「幼稚園就園補助金」を支給しています。
→ 幼稚園を通して支給申請しているところが多いです。
子持ち世帯に家賃補助を行う自治体もあり。
→ 兵庫県相生市が新婚世帯家賃補助、定住者に最高50万円補助、保育園幼稚園児の保育料補助、幼稚園給食無料など行っています。
お住いの自治体のHPなどで確認してみましょう。
高校でかかる教育費
一方、文部科学省による平成28年度学習費調査によれば、全日制の公立高校普通科の学習費(学校外活動費含む)の平均額は年51万6,000円、3年間で約154万8,000円(平成26年度が年46万8,000円、3年間で約140万円)です。
全日制の私立高校普通科の学習費(学校外活動費含む)の平均額は、約107万3,000円、3年間で約321万9,000円(平成26年度は約101万7,000円、3年間で約305万1,000)円です。
3年間の高校教育費平均額、2年間で公立が約14万8,000円、約私立が16万8,000円値上がりしていることになり、月額だと5,000円の負担増です。
これは、一般家庭には結構負担になります。
保護者の負担を軽減する策として、私立高校も含めて無償化されれば、意欲と能力のある子供が親の経済的事情に左右されることなく進学できる可能性が高くなるでしょう。
高校無償化はどうなる?
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公立高等学校が無償化され、授業料無料になったのは、2010年4月からです。
1. 高等学校就学支援金
全ての意志ある生徒が安心して教育を受けられるよう、高等学校等の授業料に充てる ため高等学校等就学支援金を支給することで、家庭の教育費負担の軽減を図ろうというものです(文部科学省HPより)
2020年4月以降、私立高等学校等の生徒については,就学支援金として授業料に充てるために一定額(11万8,800円を学校設置者が受け取り。
低所得世帯の生徒については11万8,800円を1.5~2.5倍した額)を支給します。
年収250万円(※)未満程度(市町村民税所得割 非課税) 29万7,000円(2.5倍)
年収250~350万円(※)未満程度(市町村民税所得割額 5万1,300円未満)23万7,600円(2.0倍)
年収350~590万円(※)未満程度(市町村民税所得割額 15万4,500円未満)17万8,200円(1.5倍)
年収590万円未満の家庭は実質的に私立高校も無償になります。
年収が910万円(※)以上程度(市町村民税所得割額 30万4,200円以上)世帯には、就学支援金は支給しない方針です。
2. 高校生等奨学給付金
全ての意志ある生徒が安心して教育を受けられるよう、生活保護世帯や低所得世帯の授業料以外の 教育費負担を軽減するため、高校生等奨学給付金により支援を行うものです。
この給付金は、兄弟姉妹の人数などにより金額が異なっています。
2019年度より兄弟姉妹が高校生等のみの場合に、1人は第1子単価としていたものを、すべて多子単価とすることを予定しています。
住民税非課税世帯【全日制等】の第1子単価が変更になる予定です。
・ 私立の高等学校等に在学する者 年額 8万4,000円 → 9万5,900円(+1万1,900円)
ちなみに住民税非課税世帯【全日制等】の多子単価は以下の金額ですが、
・私立の高等学校等に在学する者 年額 13万8,000円
多子世帯支援のための給付要件の見直しが行われる予定です。
現行
15歳(中学生を除く)以上23歳未満の兄弟姉妹がいる場合 → 第2子単価適用
見直し
12歳(小学生を除く)以上23歳未満の兄弟姉妹がいる場合 → 多子単価適用
児童手当の所得基準が変更に!
子供の学費などを負担するのに家計が助かる児童手当のことについてお話します。
国では児童手当の手続きを電子申請で行えるように検討中ですが、2019年度以降、支給条件などが変更になる予定です。
児童手当は子どものいる世帯に支給される手当で、
3歳以上小学校修了前は、第1子・第2子が月1万円、第3子以降が月1万5,000円
主に世帯主に支給されます。
下記の所得を超えると、1子につき月額5,000円の特例給付が支給されます。
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所得制限の額は、共働きの場合夫婦合算の所得で決まるようになります。
現在は世帯の大黒柱の所得をもとに児童手当支給額を判断する方式(上図参照)ですが、夫婦の所得を合算して支給の有無を判断する方式に切り替えられます。
一定以上の収入がある共働き世帯は児童手当の支給額が減る可能性や月5,000円の特例給付も減額になる可能性もあるでしょう。
児童扶養手当の受給方法が変更に!
子供が18歳年度末までひとり親家庭に配られる児童扶養手当ですが、手当がもらえる所得基準は現行の年収130万円未満から160万円未満に引き上げられます。
4か月ごとにまとめて支給する方式から、2か月ごとに年6回支給する方式に変更されます。
乳幼児医療費が18歳年度末までの自治体もあり
・ 18歳年度末まで入院・通院の医療費が無料の自治体もあり。(福島県全域、東京都千代田区、日の出町 奥多摩町、埼玉県滑川町、栃木県太田原市、北海道松前町も高校卒業まで乳幼児医療費が補助)。
・ 大学・短大・専門学校向けには、奨学金申請もできます。給付型奨学金も増えてきています。
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乳幼児医療費が22歳までの自治体もあり
・22歳年度末(大学生・専門学校生)まで入院・通院の医療費が無料で所得制限も一部負担金もなし → 北海道南富良野町
乳幼児(子供)医療費の補助を、中学卒業や高校卒業までに広げる自治体が急増しています。
出産に祝い金を支給したり、給食費を補助する自治体も増えています。
例えば、東京都奥多摩町は、給食費補助だけでなく、保育園の待機児童も無とのことで、首都圏在住としたらありがたいことですね。
お子さん3人以上の病後時預かりも小6まであり。15年以上定住で住宅補助金が最高200万円まで支給です。
子育て世帯にとって、子どもがいくつまで医療費の補助が受けられるかは大きいし、給食費の補助などもできれば受けたいですよね。
隣の町なのに大きく違うこともあります。お引越しを考える場合、ぜひ、市区町村のHPなどで確認してみましょう。
大学進学! どうしても学費が足りなかったら?
まずは日本学生支援機構の利用を考えましょう。
日本学生支援機構と無利子奨学金には、年収300万円程度の収入を得るまで、返還期限を猶予する「所得連動返還型無利子奨学金制度」2014年度から創設され、現行の10年猶予より手厚くなりました。
2014年度以降は、無利子の第1種奨学金の利用者が増えているそうです。
私大授業料が5年連続で上がり、平均額が年約87万円の授業料がかかるそうです。
進学を考える場合は、高校でなるべくお金をかけないで済めばそれにこしたことがありません。
新しい制度を利用して、将来に備えたいものです。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)