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特例が、2018年内に次々と終了します
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国民年金の保険料は原則として、翌月の末日までに納付しなければならないため、例えば2018年1月の保険料は、2018年2月28日が納付期限になります。
その一方で保険料の徴収権の時効は原則として、保険料の納付期限から2年になるため、この期間内ならまだ納付できます。
これを過ぎてしまうと未納と確定するため、日本年金機構は国民年金の被保険者から、保険料を徴収できなくなると同時に、国民年金の被保険者が保険料を納付したいと思っても、納付できなくなってしまうのです。
ただ国民年金法の第96条第5項には、保険料を納付しない方に督促状が送付されると、時効が中断すると記載されています。
このように時効が中断すると、進行中の時効は振り出しに戻ります。
つまり納付期限から2年が経過すると一律に、未納と確定するわけではないのですが、何らかの事情で督促状が送付されずに、未納になってしまう場合があるのです。
未納の期間が多くなるほど、老齢基礎年金の金額は少なくなる
国民年金から支給される年金としては、原則65歳から支給される「老齢基礎年金」があります。
また一定の障害状態になった時に支給される「障害基礎年金」、自分が死亡した時に遺族に対して支給される、「遺族基礎年金」や「寡婦年金」もあります。
これらの年金を受給するには、一定の保険料の納付要件を満たしている必要があるため、未納が多い方については、受給できなくなる場合があるのです。
また老齢基礎年金の金額は、20歳から60歳までの40年に渡って保険料を納付して、満額を受給できた場合には、2017年度額で77万9,300円(月額6万4,941 円)になりますが、未納の期間が多くなるほど金額が少なくなるのです。
例えば老齢基礎年金を受給するために必要な期間、いわゆる「受給資格期間」の10年しか保険料を納付しなかった場合には、その金額は2017年度額で19万4,825円(月額1万6,235 円)になります。
満額でも決して多い金額ではなく、10年だと普通に生活できる金額ではないため、未納はできるだけ少ない方が良いのです。
国民年金の被保険者の種別は3種類に分かれている
日本国内に住所を有している20歳以上60歳未満の方は、原則として国民年金に加入しなければなりません。
またその被保険者の種別は、保険料の納付方法などの違いによって、次の3種類に分かれているのです。
第1号被保険者
学生、自営業者、フリーランス、無職の方などは、第1号被保険者という取り扱いになり、国民年金の保険料は納付書などによって、自分で納付する必要があります。
第2号被保険者
会社員や公務員の方などは、第2号被保険者という取り扱いになり、国民年金の保険料は給与から天引きされた後に、お勤め先が納付します。
つまり給与から天引きされている厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として活用されているため、20歳から60歳までの40年に渡って、厚生年金保険の被保険者だった場合にも、満額の老齢基礎年金を受給できるのです。
第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている配偶者の方は、男女を問わず第3号被保険者という取り扱いになります。
国民年金の保険料は第2号被保険者が加入している年金制度が負担してくれるため、自分で納付する必要はありません。
種別の切り替えを忘れて未納になると、保険料を納付できなくなる
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このように第3号被保険者になるには、「(A) 第2号被保険者」に「(B) 扶養されている」という、二つの要件を満たす必要があります。
例えば配偶者が会社員を辞めて、自営業者になった場合には、(A)の要件を満たせなくなるため、第3号被保険者は第1号被保険者に変わります。
また第3号被保険者の年収が130万円以上になると、(B)の要件を満たせなくなるため、第3号被保険者は第1号被保険者に変わります。
そのため市区町村役場の窓口などに行って、種別の切り替えの手続きをする必要があるのですが、忘れる方が多かったのです。
この手続きを忘れたままにして、保険料の納付期限から2年が経過すると、上記のように未納と確定するため、国民年金の被保険者が保険料を納付したいと思っても、納付できなくなってしまいます。
3号不整合期間に関する保険料は、2018年3月31日までに納付する
こういったケースのように年金記録の上では、第1号被保険者の期間になるのに、種別の切り替えの手続きを忘れたため、第3号被保険者のままになっている期間は、「3号不整合期間」と呼ばれております。
この3号不整合期間が多くなると、未納と確定した期間が多くなるため、将来に老齢基礎年金を受給できなくなったり、将来に受給できる老齢基礎年金が少なくなったりするので、二つの特例が実施されております。
特例1.) 特定期間該当届提出
その一つ目は「特定期間該当届」を提出すると、保険料の納付期限から2年が経過して未納と確定した期間も含めて、受給資格期間を満たしているのかを判断されるのです。
ただ保険料は納付されていないため、受給資格期間を満たして老齢基礎年金を受給できても、その金額は少ないままです。
特例2.) 最大10年分の保険料を納付できるようにする
そこで3号不整合期間に関する、最大10年分の保険料を納付できるようにするという、二つ目の特例が実施されております。
この特例は2015年4月1日から2018年3月31日までの、3年の時限措置になっているため、その期限を迎えるまで、あとわずかの期間しかないのです。
後納制度は10年から5年に短縮して、2018年9月30日に終了する
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2018年内に終了が予定されている、未納と確定した期間を納付済にできる特例がもう一つあり、それは「後納制度」になります。
保険料の納付期限から2年が経過して、未納と確定した期間は上記のように、国民年金の被保険者が保険料を納付したいと思っても、納付できなくなります。
しかし後納制度を活用すれば、過去5年分の保険料に限って、特例で納付できるのです。
ただ特例で保険料を納付できるのは、2015年10月1日から2018年9月30日(日曜)までの、3年の時限措置になっているため、その期限を迎えるまで、あと数か月の期間しかないのです。
なお後納制度はもともと、過去10年分の保険料を特例で納付できる制度として、2012年10月1日から2015年9月30日までの、3年の時限措置で開始されました。
それが次の3年については、5年に短縮されておりますから、後納制度は2018年9月30日で、終了する可能性が高いと考えられます。
そうなると過去の未納を納付済にできる、最後のチャンスになるのかもしれません。(執筆者:木村 公司)