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「就業不能保険」と「所得補償保険」
私たちの多くは、日々働くことによってお金を得ていますが、もしも何らかの理由で働けなくなった場合、どのようにして生計を立てるべきか考えたことはありますか?
社会にはさまざまなセーフティネットがありますが、「就業不能保険」や「所得補償保険」などの民間保険に加入し、自助努力する人が増えています。
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どちらも病気やケガで長期間働けなくなった場合の生活費をサポートする保険です。
お給料のように毎月給付金を受け取り、病気やケガの前後でご自身および家族の生活水準が大きく変わらないようにすることを目的としていますが、2つの保険には細かな違いがいくつかあります。
就業不能保険とは
・販売する会社:生命保険会社
・保障形式:定額払い
・保障期間:中長期型が多い
・保険料:高め
「就業不能保険」の大きな特徴は、生命保険会社が販売する商品であることです。
生命保険であるため、万一のときには契約時にあらかじめ決めた金額を受け取ります。
また、保険期間は60歳、65歳までといった中長期にわたるものが多いのも特徴で、支払う保険料も大きくなります。
所得補償保険とは
・販売する会社:損害保険会社
・保障形式:実損てん補
・保障期間:短期型(更新タイプ)が多い
・保険料:お手頃
「所得保障保険」は、損害保険会社が扱っています。
損害保険の基本は、実損てん補、つまり、損害額に応じた保険金を支払うことです。
就業不能保険や所得補償保険の必要性や、備える金額を考えるために、ケガや病気になった場合の生活を想像してみましょう。
収入が途絶えたとき、収入・支出はどれほど発生するのでしょうか。
支出
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万一の場合の支出を考えてみましょう。
当然必要となるのが毎日の生活費(食費、水道光熱費、家賃、住宅ローン、教育費など)。そして、治療にかかる費用です。
治療費については、負担額が著しく重くならないためのさまざまな制度があります。
高額療養費制度
治療費の自己負担は、収入や年齢にもよりますが基本的には3割です。
しかし、自己負担額が一定の上限を超えると、その超過部分を払い戻す「高額療養費制度」という仕組みが公的医療保険には備わっています。
自己負担の上限額は、収入や年齢によって変わりますが、69歳以下で年収が370万円~770万円の場合、約8万円です。
原因が精神疾患なら「自立支援医療制度」も
働けなくなった原因がうつ病や統合失調症などの精神疾患である場合、自立支援医療制度が役に立つ可能性が高いでしょう。
この制度は、精神疾患の治療目的の通院・投薬にかかる医療費の自己負担割合が1割に軽減されるというものです。
ただし、入院や保険外治療は対象となりません。
収入
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人によってさまざまですが、傷病手当金、労災保険、障害年金などから支給を受けられる可能性があります。
傷病手当金とは
健康保険の被保険者に対し、生活費として給与の一部を支給するものです。
支給される金額は原則標準報酬月額の3分の2。
期間は最長1年6か月です。
傷病手当金の支払い要件は以下のとおりです。
・ 業務外の病気やケガで療養中であること
・ 療養が必要で働くことができないこと
・ 4日以上仕事を休んでいること
・ 給与の支払いがないこと(有給休暇を使用している場合などは傷病手当金は支給されません)
注意したいのが、国民健康保険には傷病手当金の保障がないことです。
つまり、自営業者などは、たとえ上記の状態にあっても受け取れる手当金はありません。
労災保険とは
業務中または通勤中の災害によるケガが原因である場合は、労災保険が役立つ可能性があります。
認められれば、「休業補償給付」を始めとする各種給付を受け取ることができます。
労災保険の休業補償給付は、平均賃金の6割で、最長1年6か月です。
以後も所定の障害状態であれば、継続して「傷病補償年金」を受給できる可能性があります。
障害年金とは
初診から1年6か月を経過しても一定の障害状態にある場合、障害年金の給付を受けることができます。
1級と2級、また厚生年金に加入しているか否かで金額は異なりますが、平成29年4月現在、等級2級の場合の基礎年金の給付額は77万9,300円+子の加算(第1子・第2子22万4,300円、第3子以降7万4,800円)です。
受給要件は以下のとおり。
・ 初診時に国民年金や厚生年金に加入していること
・ 一定の障害状態にあること
・ 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
または初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
生活保護
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扶養してくれる人もいない、資産もない、年金の受給資格もないといった状況であれば、生活保護を受けられる可能性もあります。
他にも、勤務先の会社の福利厚生で何かしら保障を受けられる可能性があります。
万一に備え、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
働けなくなったときに受けられる公的保障制度、そして就業不能保険・所得補償保険の概要を解説しました。
肝心の民間保険の必要性、そして検討すべき人はどんな人なのかは、次回の記事で説明します。(執筆者:近藤 あやこ)