民泊、せどり、ライターなど、2017年は「副業元年」と言われるほど、副業で稼ぐ正社員が激増しました。
代わりに確定申告難民となる人も急増。
中には「年20万円以下の副業収入でも、経費を申告したら税金が戻ってくる」といううわさもあるようです。
実際の副業の確定申告はどうなっているのでしょうか。
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目次
正社員の副業は原則「雑所得」
まず、正社員が副業をした場合、副業で得た所得は「雑所得」に該当します。
所得税には、正社員やバイト・パートの方が受け取っている「給与所得」の他、「事業所得」、「不動産所得」などがあるのですが、そのいずれにも該当しないとされるのが「雑所得」です。
雑所得の計算ルール
雑所得の計算ルールは次のようになっています。
※毎年1月1日から12月31日までの期間
総収入金額とは、副業で受け取った売上金額を言います。
必要経費は、副業を行うために直接かかった経費のことです。
必要経費といっても、家賃やスマホ代、水道光熱費のように、1つの支払いに、副業分とプライベート分が混じっていることもあるかと思います。
その場合は、使用スペースや使用時間、使用頻度など、誰が見ても客観的かつ合理的だと見られる基準で按分し、副業分のみ経費計上することになります。
また、給与所得を一つの会社だけから受け取り、給与以外の所得の合計額が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です。
冒頭で「年20万円以下の副業収入なら」とありますが、おそらく売上のことを指しているのでしょう。
しかし、ここでいう「所得」とは、年間売上のことではありません。
「総収入金額-必要経費」、つまり「利益」の部分にあたります。
また、「所得、つまり利益部分が20万円以下で確定申告不要」なのは所得税法のみの規定です。
そのため、住民税については市区町村などの役所で確定申告が必要になります。
「雑所得」で赤字になっても節税にならない
冒頭の「経費を申告したら税金が戻ってくる」というのはどういう意味なのでしょうか。
これはおそらく「事業所得や不動産所得などで赤字申告をしたら、源泉徴収された税金が還付される」ということを意味しているのではないかと思われます。
「事業所得」、「不動産所得」、「山林所得」などがあり、かつ、それぞれの区分で赤字、つまり収入以上に必要経費がかかった場合、「損益通算」という仕組により、他の所得と相殺することができます。
マイナスの所得を他のプラスの所得と相殺するので、合計所得金額は年末調整時よりも下がります。
結果、所得税額も下がるので還付が発生することがあります。
人によっては「副業で赤字になっても税金でトクをする」仕組みに見えることもあるかもしれません。
正社員の方の副業のほとんどは雑所得に該当
残念ながら、正社員の方の副業のほとんどは雑所得に該当します。
雑所得の場合、赤字が発生してもゼロでカウントされるので、年末調整時の税額と変わりません。
さらに給与収入とそれ以外の収入の比較検討がなされます。
独立自営をし、相当の規模を備えているのでない限り、民泊やせどりなどでの所得を雑所得以外の所得で申告するのは困難です。
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さいごに
5年ほど前、正社員の副業が事業所得として申告されるケースが多発、適正とは言えない還付が問題となった時期がありました。
以来、税務署では、正社員の副業申告のチェックを厳しく行い、申告書内容のバランスなどに目を光らせている模様です。
冒頭の都市伝説を信じ込むのではなく、税務署や税理士会による無料相談などを活用し、適正に申告していただければと思います。(執筆者:鈴木 まゆ子)