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日本の貯蓄率の推移
「経済協力開発機構」であるOECDでは、いろいろな統計を取っていますが、その中には世界各国の貯蓄率の比較というものもあります。
この統計値はGDPに対するパーセンテージとして示されています。
2011年から2014年の41か国で比較されている統計を見ると、日本はほぼ34位、下から8番目という順位になっています。
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1位の中国の40%を超える貯蓄率は富豪層の増大による影響と言われていますので割愛します。
常に20%を誇っているノルウェーをはじめ、10%前後をキープしているスコットランドなどの北欧・欧州と比べると、日本の2011年から2014年までの平均0.9%という数値はあまりにも少なく感じます。
日本の貯蓄率の推移OECDよりピックアップ
2012年 0.4% 34位/41か国中
2013年 1.1% 35位/41か国中
2014年 1.6% 34位/41か国中
※2015年、2016年は4%台に回復しているが、統計が33~39か国での比較となっているため今回は41か国での比較になっている統計を用いています。
貯蓄率0.9%が意味するものは
貯蓄率は可処分所得に対する預貯金増額分の割合で示されますが、簡単に言えば、得たお金の内、いくら余ったかを示すものと言えます。
これは言い換えると、「家計のゆとり」を示す指標ともいえるのです。
例えば、北欧のように10-20%の貯蓄率があるということは、給与が急に10%カットになっても今まで通り暮らせますよということが言えます。
もちろん、貯蓄率が高いということは、貯蓄もそれなりにしやすく、いざという時にも備えられている証とも言えます。
逆に、日本のように0.9%というような貯蓄率だと給与が1%下がろうものなら家計はすぐに赤字ですよと言っているようなものです。
これは国の平均なので、ご自身の家計では貯蓄率は20%以上余裕であるという方は大丈夫かもしれませんが、給与は年々上がっていく一方だから大丈夫と考えているのであれば甘いです。
社会保険料も年金もじりじりと基本負担は増え、それは収入と共にその負担率は上がるようになっています。
我が家の場合もそうですが、給与の額面は増えても手取りは減ってしまったという家計は少なくないのではないでしょうか?
また、40歳を超えると介護保険料の負担もあり、加えて多くの企業では役職定年という言葉のあるように、50~55歳で年収のピークを迎えるような給与システムはいまだにあります。
つまり、社会保険料などの負担率は上がり、給与は頭打ちになるその状況で、0.9%という国民貯蓄率は納得できるものですし、一家庭としても、危機感を持って見つめるべき数値だと思えるのです。
とはいっても、実はここ2年ほどは4%台の回復傾向にあるようですが、それでも、北欧・欧州の半分程度となります。
北欧・欧州と日本の貯蓄率の違いは何からくるのか
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貯蓄率の高い北欧・欧州と低迷する日本の貯蓄率の違いは何からくるのか考察してみましょう。
社会保険料や物価においては北欧・欧州の方が高いくらいです。家賃だって高いと聞きます。
けれど、子どもの教育費などはかからないか低費用の国が多く、義務教育期間においては授業料だけではなく、教科書から鉛筆、ノート、給食代などの全ての費用が無償という国もあります。
加えて試験にパスして進学していく日本の教育制度と異なり、塾や習い事、お受験などに多額の費用をかけるような教育体系でもありません。
子どもの医療費もかからない国が多いのも特徴です。
そして、生活が慎ましいのも特徴と言えます。
都会や観光地では土日に営業するお店も増えているようですが、日曜日はお店はお休みで、することも行くところもないから家族で公園にピクニックにいくとか、DIYにいそしむとかそんなイメージが溢れます。
それに対して日本では、お休みの日はテーマパークに行くとか、外食をするとか、お金をかけて楽しむという印象があります。
教育費の面においても、国からの優遇は確かにものすごく差があるのですが、それ以上に、子どもにお金をかけることこそ愛情と言わんばかりに、習い事に一段上の教育に、お金をかける国民性も見て取れる気がします。
かつては1997年以前は10%台の高い貯蓄率が続いていた
日本人がお金をかけて北欧・欧州の人々がお金をかけていないことを比較すると、教育費を含む子どもにかかるお金と休日などの過ごし方に集約される気がします。
もともと、日本人は質素・倹約の文化を持っていました。
10年以上さかのぼり、1997年以前は10%台の高い貯蓄率が続いていたのです。
ちなみに今回は北欧・欧州と書きましたが、実はお隣の韓国も日本より高い貯蓄率を計上しており、北欧だから、国の制度が違うからとは一概には言えないこともあるでしょう。
けれど、イザという時に困らない蓄えの習慣「貯蓄率」を意識してみて生活してみることは、家計の助けになるだけでなくリスクマネジメントにも貢献すると思います。(執筆者:小柳 結生)