目次
子供が家を持っていなければ、相続税がゼロになる?
こんな話を聞いたことありませんか?
これは相続税の課税価格を計算する際、故人の居住用の土地(上限330平方メートル)があり、適用要件を満たせばその土地の評価を80%減額できる制度があり、「小規模宅地等の特例」の話をしているわけです。
その特例の中に「特定居住用宅地等」があり、その要件の中で「家なき子」がある訳です。
例えば路線価で自宅の土地(330㎡)評価額が2,000万円だったとして、相続税の課税としては1,600万円評価を下げられ、課税価格が基礎控除以下となり相続税がゼロになることもある、ということです。

そもそも「小規模宅地等の評価減」の中で「特定居住用宅地等」の要件とは
(1) 配偶者の場合は要件ありません。
(2) 「同居の親族」は相続税の期限までその建物に居住し保有しなければなりません。
以前は二世帯住宅の場合、同居か否かの判定の問題がありましたが、現在は区分所有の建物の登記でなければ適用できます。
(3) 上記以外の場合、つまり取得者が配偶者でもなく、同居人でもない親族。
この場合に「家なき子」の要件が出てくるわけです。
現在、親と同居している人は少ないと思います。
これは相続実務を二十年経験し実感として強く思います。
また相続人の奥さんとお話すれば、夫の両親と同居することは、「税金のためとはいえ、とんでもない」ことだというのが本音のようです。
それだけお互い精神的ストレスがあるということです。
そういった意味では(2)の完全分離型の二世帯住宅でも適用できるようになった(25年度改正)のは実情に即した改正でした。
取得者が配偶者でも同居でない親族である(3)のケース
(ロ) 故人に相続開始の直前において同居していた法定相続人である親族がいないこと
(ハ) 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者(配偶者を含む)の所有する家屋に居住したことがないこと=これが、「家なき子」
(二) 申告期限まで保有していること
等と居住、国籍等の条件は省略いたします)となっています。
つまり、親と同居していなくても、相続人に配偶者がいる場合、同居している法定相続人がいるのに別居の相続人が親の土地を取得しても小規模宅地等の評価減を適用することはできない訳です。
そして自分の面倒を見てくれたその愛人に自分の死亡後その土地建物を遺贈する遺言書を作成いたしました。
さて、この場合Yさんが居住し、同居していた愛人が小規模宅地等の評価減が適用できるでしょうか?
答えは…
適用できません。
なぜなら、愛人は親族でないから(愛人が親族の場合は適用できます)です。
適用できる取得者は親族(遺贈でも適用できます)に限ります。
では、故人の孫が遺言で取得する場合はどうでしょう?
取得しようと考えている子Aさん(二次相続で、同居の相続人はいない場合)は、親とは別居し持ち家の場合、(3)の(ハ)で適用ができません。
では、十代の孫(Aさんの子)は独身でまだ家を所有していません = 家なき子、のため孫に遺贈すれば小規模宅地等の特例が適用できたわけです。
30年の税制改正でその対策ができなくなりました
↓
・ 相続開始前3年以内に3親等内の親族・同族会社・一般社団法人等が所有する家屋に居住したことがない。
・ 相続開始時に居住していた家屋を(相続前に)所有していたことがない
と改正となり、取得者である孫からみて家を所有している子は、三親等内の親族にあたり適用できなくなりました。
そんな対策をしたあなた。その対策見直しが必要かもです。
※経過措置もあるようで、平成32年3月31日までの相続については、平成30年3月31日の時点で旧家なき子の要件をみたしている方は適用できるようです。
除外となる場合

さらに、特定居住用宅地等の特例が使えなくても、貸付事業(アパート、駐車場業等)を行っていた場合、50%(上限200平方メートルまで)減額できる制度もありますが、相続開始3年以内に貸付事業の用に供された土地については除外となりました。
ただし、もともと事業的規模(5棟10室以上)で不動産貸付を行っている方には、今回の改正が適用されませんのでご安心ください。
今後の土地活用の提案があった場合、居住用で適用か貸付用かここでは触れていませんが事業用の土地と、どう組み合わせられるのか、専門家も加え、自ら十分な検討が必要です。
最後に
これらの改正は平成30年4月1日以後の相続開始から適用となります。
今年、相続が発生された方は、適用の開始日も要チエックです。
では、親と同居してなく、家を買ってしまった人は、どうしたら小規模宅地等の特例がつかえるでしょうか?
他人(4親等以上)へ賃貸するか売却し、自分はアパート住まいとなり三年を超え、相続が発生することになれば適用できます。
ただし現在の法律では、です。今回のように将来改正されるかもしれません。
そもそも相続税対策のためにせっかく購入した自宅を賃貸にするのは実情に即しているのでしょうか。(執筆者:橋本 玄也)