近年、大学の入学費用や学費をまかなうために、日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金を利用している人は非常に多くなっています。
現在、2.6人に一人が奨学金を利用しているとされています。
これほど多くの人が利用している制度ですが、そのほとんどが貸与型で将来返済する必要があります。
奨学金を実際に利用している人は、万一、返済が厳しくなって滞納してしまう場合は、取り立てがあったり、信用情報に傷が付いたりすることが心配になるかもしれません。
しかし、滞納の状態になる前にできることがあります。
事前に正しく申し出れば、返済が厳しい時にも日本学生支援機構は比較的柔軟に対応してくれます。
目次
今は払えないなら、返還を延期することも
経済困難、病気、災害、失業などの理由で返済が困難な場合、「返還期限猶予制度」を願い出ることができます。
これは、月々の返還を先送りする制度です。
返還する総額に変更はありませんが、滞納を避けることができます。
1年ごとに願い出る必要がありますが、最長10年間先送りできるので、返還困難な状況が長く続いた場合にも対応できるでしょう。
例えば、収入が少なく返済が困難になったケースを考えましょう。
給料による収入のみの場合、収入が300万円以下であれば、返還期限猶予制度を願い出ることができます。
また、扶養家族がいる場合や、本人や家族のための医療費支出などが多い場合には、収入が300万円を超えても、返還期限猶予を願い出ることができるよう基準が緩和されています。
手続きは、収入証明等とともに必要書類を用意して書面で願い出ることになります。
そのほか、失業や病気、災害などの理由で申し出ることができますが、理由により必要書類や条件が異なるので、返還が厳しくなりそうな時には、日本学生支援機構のホームページで事前に確認したほうがいいでしょう。
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毎月の返還金額を減額してもらう
月々の返還金額のすべてを払うのは難しいけど、一部なら払える人のために「減額返還制度」もあります。
返還期間は長くなりますが、月々の返還額を2分の1か3分の1に減額して返還することができます。
給料による収入のみの場合、325万円以下であれば、減額返還を願い出ることができます。
つまり、「返還期限猶予制度」よりも願い出やすくなっています。
返還総額が減額されるわけではありませんが、月々の返還金額を減額してもらって滞納を避けることができます。
なお、毎年申請する必要がありますが、減額返還は最長で15年可能となっています。
自分に万が一のことがあった場合は「返還免除」も
自分に万が一のことがあったら、奨学金の返済はどうなるのかと心配する人もいるでしょう。
例えば、借りた本人が死亡した場合や障害等で労働能力を失い、返還ができないと認められる場合は、「返還免除」といって返済が免除されることがあります。
この場合は、本人もしくは相続人が日本学生支援機構に相談の上、申請書類等を用意していくことになります。
万が一、自身の死亡や障害を負うなど返済不能な状況になった場合でも、このように連帯保証人や保証人に迷惑が掛からない仕組みもあります。(執筆者:潮見 孝幸)