先日新聞を読んでいたら、2018年5月25日の衆議員法務委員会において、「成人年齢を18歳に引き下げする民法改正案が可決された」という記事が掲載されておりました。
この後は、同月内にも衆議員本会議で可決され、参議院に送付される見込みのようです。
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もし改正案が成立した場合には、2022年4月から、女性が結婚できる年齢が16歳から18歳に引き上げられて、男女共に18歳になります。
また18歳になれば、一人で各種ローンなどの契約を交わしたり、クレジットカードを作ったりできるようになります。
その一方で、お酒やタバコなどについては、健康への影響を考慮して、引き続き20歳を基準にするようです。
また国民年金に加入して、保険料の納付を開始する年齢も、引き続き20歳を基準にするようです。
つまり、現在のところは保険料の負担増は予定されていないのですが、インターネットで検索していたら、「政府が成人年齢を引き下げするのは、18歳から年金の保険料を徴収するのが目的」という、18歳への引き下げを予想する記事を見かけました。
ですが、ただ「年金の保険料を徴収するのが目的」なら、次のようなもっと効率的な方法があると思うのです。
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目次
学校を卒業するまで保険料の納付が猶予される「学生納付特例」
「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の方は、国民年金に加入しなければならない」という、加入年齢の下限と上限が、法律に定められております。
この下限を改正して、新たな成人年齢と同じにすれば、18歳から国民年金の保険料を徴収できるのです。
しかし、例えば学生については、申請して保険料の納付が猶予される「学生納付特例」を受ければ、学校を卒業するまでの間、国民年金の保険料を納付する必要はありません。
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また最近は、高校を卒業した方の7割くらいは、大学(短大)や専門学校に進学しているというデータがあります。
そのため、国民年金に加入する年齢の下限を18歳に引き下げしても、新たに保険料を徴収できる方は、あまり増えないような気がするのです。
なお、高校を卒業した後に就職して正社員になると、一般的には入社してから退職するまで、「厚生年金保険」に加入します。
つまり、「厚生年金保険」は現在でも、20歳になる前に保険料が徴収されているため、成人年齢が引き下げられたとしても、新たに保険料を徴収できる方は増えないのです。
社会保険の適用は、2016年10月1日から拡大へ
会社員や公務員が加入する「厚生年金保険」には、70歳という加入年齢の上限がありますが、加入年齢の下限はありません。
ですから、高校を卒業した後にすぐ就職して正社員になれば、上記のように20歳になる前でも、厚生年金保険に加入するのです。
またパートやアルバイトなどについては、2016年10月1日から社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用が拡大されました。
そのため、次のような要件をすべて満たすと、20歳になる前であっても、厚生年金保険に加入する必要があります。
(B)1か月あたりの決まった賃金が「8万8,000円以上」であること
(C)雇用期間の見込みが「1年以上」であること
(D)学生ではないこと
(E)従業員数が「501人以上」の会社で働いていること
なお(E)の要件が改正され、社会保険に加入することについて、労使(労働者と使用者)の合意がある場合には、従業員数が「500人以下」の会社でも、2017年4月1日から厚生年金保険に加入するようになりました。
学生を「厚生年金保険」に加入させた方が、保険料を徴収できる
学生の方がアルバイトをしても、厚生年金保険に加入しないのは(D)の要件を満たさないからです。
また労働時間が短い場合には、(A)や(B)の要件も満たさないと考えられます。
ただ逆に考えれば、(D)の要件を撤廃して、(A)や(B)の要件をもっと低くすれば、20歳になる前の学生でも、厚生年金保険に加入する可能性が出てくるのです。
これらを実施した方が、国民年金に加入する年齢を引き下げするより、保険料を徴収できる方が増えるうえに、政府にとって効率が良いと思います。
なぜ効率が良いのかというと、勤務先の会社が給与から保険料を控除して、学生の代わりに納付してくれるため、納付書を送付する手間がかからず、また納付を催促する必要がないからです。
あくまでも個人的な予想であり、このような改正が実施される予定はありませんが、社会保険の適用は少しずつ拡大されているため、まったくあり得ない話ではないと思います。
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「学生納付特例」を受けた期間は、年金額には反映されない
20歳から60歳までの40年間に渡って、一度も欠かさずに国民年金の保険料を納付すると、2018年度額で77万9,300円(月額:6万4,941円)となる満額の老齢基礎年金を、原則65歳から受給できます。
なお、厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われているため、厚生年金保険に加入した期間のうち、20歳以上60歳未満の期間については、40年間の中に含めることができます。
このように、40年(480月)で満額を受給できるということは、国民年金の保険料を1か月未納にすると、1,623円(77万9,300円 ÷ 480月)くらい老齢基礎年金が減額します。
「学生納付特例」を受けた期間は、「老齢基礎年金」を受給するために必要となる受給資格期間には反映されますが、年金額には反映されないため、就職後に追納しないと、未納期間と同じような取り扱いになってしまうのです。
そうなると、国民年金に加入する年齢が18歳まで引き下げられ、「学生納付特例」を4年(48月)に渡って受けた場合、「老齢基礎年金」は7万7,904円(1,623円 × 48月)くらい減額する可能性があります。
これだけ老齢基礎年金が減額すると、老後の生活に影響を与えますから、家計に余裕がある時に追納して、満額に近づけたいところです。
ただ追納は義務ではありませんから、例えば奨学金の返済で家計に余裕がなく、追納できなかったとしても、給与、預貯金、自動車などの財産を、差し押さえられることはありません。
「障害基礎年金」を受給するには、保険料の納付要件を満たす必要がある
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国民年金の加入者が病気やケガなどにより、一定の障害状態になった場合には「障害基礎年金」を受給できる可能性があります。
ただ未納期間が多くなり、保険料の納付要件を満たせなくなると、「障害基礎年金」を受給できなくなってしまうのです。
「学生納付特例」を受けた期間は、上記のように追納しないと、年金額には反映されませんが、未納期間とは違うのです。
ですから、例えば在学中に一定の障害状態になった時に、「学生納付特例」を受けた期間しかなかったとしても、保険料の納付要件を満たせるのです。
このような理由があるため、学生の方はきちんと国民年金の加入手続きを済ませたうえで、「学生納付特例」を受けた方が良いのです。(執筆者:木村 公司)