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そもそも遺言信託とは
遺言信託とは、いわゆるメガバンクの商品ではなく、信託銀行が得意とする商品です。
ある方が亡くなられた際に、その方の預金、不動産、有価証券、保険といった資産を相続人に配分していく必要があります。
この業務を一括して代行してもらえるのが、遺言信託と言われる商品なのです。
こうした手続き自体は、相続人間で協議をして、各々の資産の名義変更を行っていく事でも処理はできます。
ご自身でされればコストもかかりません。
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自身で行う相続実務としては
では自身で行うとすると、具体的にはどうしたらよいのでしょうか。
例えば預金で言えば、1行にすべてが集約されているケースはほとんどなく、複数の金融機関に分散されているケースが一般的かと思われます。
この時に、銀行の窓口では相続人が特定できる戸籍抄本等のフルセットの提出が必要となります。
実はこれ、集めるのは結構大変です。また生命保険についても同様の必要書類の準備が必要となります。
しかも、相当面倒な作業が付いてくる
しかも、相続預金、保険等の手続にあたっては、銀行間、保険会社間で手続きが統一されている訳ではなく、あれ持ってこい、これ持ってこいの嵐となります。
あっちの銀行では要らなかったものが、この銀行では要る、あっちの生命保険会社からは追加であれ持ってこいと言われた、という状態となります。
恐らく相続が発生して、事後のお手続きをされるのは40~60歳くらいの働き盛りの方が中心となりがちです。
通常の仕事を抱え、家庭でのいろいろを抱えて、これだけの面倒な事をやりたいと思われるでしょうか?
資産の配分もややこしい
また、遺言書がなかった場合、亡くなられた方の資産をどう配分するかを相続人間で決めていかなくてはいけません。
多くの場合、複数回の面談が必要であり、内容が深くなればなるほど話し合いはややこしくなります。
また本来は関係ないはずの、相続人の夫やら、妻やらが関与してくることが多く、そうなればなるほど、収集つかなくなってきます。
お客さんはこう言っていた
以前、遺言なしで相続手続きを行ったお客様が話されていた事がとても印象的でした。
その方が言うには、
そうすれば、兄貴や妹とお金をどう分けるかなんて議論もしなくて済んだし、親父がこう決めたんだと言われれば、誰も異論はなかったんだ。」
確かにそうですよね。親族間でのお金のやり取りを決めるのは結構きつい作業だと思います。
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総括
遺言信託に係るほとんどの手数料は、相続が発生したタイミングで、亡くなられた方の資産から支払いが行われます。
よって、遺言書作成時点での大きな負担はありません。
近年、争続というキーワードもあるように、遺言書がないことから生じる親族間のトラブルは増加傾向にあります。
こうしたことを考えますと、一定のコストを払ってでも遺言信託は活用すべき商品なのです。(執筆者:松野 のりこ)