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全国の地銀で、経営統合が加速
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経営統合した地銀に住宅ローンを返済していた場合は、どうなるのでしょうか。
今回は、
・ 地銀統合の背景
・ 地銀に住宅ローンを返済していた人が注意すべき点
について解説します。
なぜ、地銀の収益は悪化しているのか
地銀の収益が悪化している最大の要因は、日銀が実施しているマイナス金利政策です。
日銀の狙いは、この政策により金融機関の貸出が増え、企業活動が活発になることでした。
しかし、大手企業は社債発行などで自ら資金調達できますし、中小企業は資金調達の余裕もなく、結果として金融機関は国債購入など、低利での運用しかできなくなっています。
メガバンクは、海外事業や証券仲介などの手数料ビジネスで何とか活路を見い出していますが、地銀にはそこまでの余裕もなく、ジリ貧の状態になっています。
地銀の数を減らす計画
金融庁が将来の人口減少社会を見据えて、地銀の数を積極的に減らそうとしているのも事実です。
今年の4月に金融庁が公表した「地域金融の課題と競争のあり方」のなかで、2016年3月末のデータを用いて、各都道府県でどの程度の地銀が存続できるかを推計しています。
それによりますと、
・ 2行での競争可能な地域が10地域
・ 2行での競争は不可能だが1行単独ならば存続可能な地域が13地域
・ 1行単独になっても不採算の地域が23地域となっています(東京都はモデルによる判定が不可能)。
この推計は、地銀幹部に大きな衝撃を与え、今後の経営統合は避けられない流れとなっています。
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統合地銀に住宅ローン返済している場合
経営統合した地銀に、住宅ローンを返済している人はどうなるのでしょうか。
現在の経営統合は、先にお互いの持株会社を1つ作り、そこに両行が傘下に入ります。
この段階では、特段の影響はありません。
数行が傘下に入った後に、最終的に存続する銀行と合併するために、各行が資産査定を行います。
法律的には、これを「吸収合併」と言い、存続する銀行を存続会社、消滅する銀行を消滅会社と言います。
ローン返済をきちんとしてる場合
住宅ローンの延滞などが1度もなく、順調に返済している債権は正常債権と見なされ、消滅会社から存続会社へ債権譲渡されます。
返済者の方は返済先だけ変わる可能性があります。
過去に住宅ローンの延滞があった場合
今までは消滅する銀行が待ってくれていたかもしれません。
しかし、存続する銀行はできるだけ不良債権を減らしたいため、場合によっては消滅する銀行が不良債権買取業者(サービサー)に、売却する方向で動くこともあります。
従って、住宅ローンが延滞気味の方で、現在返済中の銀行が経営統合する情報をつかんだ場合は、早めに延滞を解消して、「不良債権扱い」されないようにする必要があります。
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こんな地銀は注意が必要
私が現在、最も危険だと感じているのは、経営統合で主導権を握るために、住宅ローンがオーバーローンとわかりながらも、無理に融資をしている地銀です。
これらの地銀は、メガバンクと金利競争になってもさらに金利を下げるなど、利ざやを取ることより、融資残高を伸ばすことに必死になっています。
仮に、これらの地銀の言われるがままに住宅ローンを借りたとしても、ほとんどがオーバーローンで、経営統合で延滞などが発生していると、不良債権扱いされる可能性が高まります。
地銀から、住宅ローンを借りるのが悪いわけではありませんが、将来の経営統合を見据えて、借入可能額には十分注意する必要があります。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)