最近読んだ新聞記事によれば、東日本大震災以来貸金庫のニーズが高まり、ちょっとしたブームとなっているそうです。
実は我が家も、震災直後に家計口座のある取引銀行で貸金庫を借りました。
銀行の貸金庫は意外と審査基準が厳しいことで知られています。
そのことから、富裕層しか借りられないのでは? と言われますが、そんなことはありません。
その証拠に、一般的なサラリーマン家庭の我が家でも貸金庫を借りられました。
けれども、貸金庫を借りるにあたり、銀行の方針や背景となる事情により、その基準や対応も違ってくるものなのだと感じる出来事もありました。
そこで、貸金庫のメリットやデメリット、利用料金、審査の基準について、筆者の実体験をもとに説明します。
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目次
貸金庫のメリット・デメリット
貸金庫のメリットは、なんといってもその安全性です。
家庭用の金庫も火災などに強いものがありますが、東日本大震災ではその多くが津波で流され、財産を失った人も多いと聞きます。
しかし、銀行の貸金庫には高い耐震性があり、大きな地震、火災、水害などにも耐えられる構造になっているため、そのようなリスクは限りなく低いと言えます。
だからこそ、今、貸金庫の需要が高まっているのです。
一方、利用者側から見たらデメリットとして考えられるのは以下の4点です。
2. 銀行で定めている貸金庫の営業時間外には利用できない
3. 暗証番号の失念、入室カードや金庫の鍵の紛失の場合は煩雑な手続きが必要
4. 契約者が死亡した場合、銀行預金と同様に貸金庫も凍結される
しかし、銀行からしたらこれは当然のことなのです。
銀行は、お客様の大切な資産や貴重なものを安心してお預けいただける場所として、金融庁の厳しい審査による免許を受けて営業しています。
その性質上、当然のこととして、盗難などのトラブルは絶対にあってはならないのです。
だからこそ、銀行ごとに審査基準を設定し、それに満たない人には貸金庫を貸しません。
また、セキュリティ対策も「そこまでやる?」と思うほど厳密に行うことが、銀行として当然の義務となっています。
そのことをふまえた上で、貸金庫の概要について簡単に説明します。
貸金庫に預けられるもの・預けられないもの
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次は、銀行の貸金庫に預けられるものと預けられないものについて説明します。
実は、貸金庫に預けられるものは意外と多いです。
預けられるもの
保険証書
その他の重要書類(不動産権利証・遺言書など)
印鑑(実印など)
金
貴金属
宝飾品
骨董品
アルバム・思い出の手紙 など
一般的な貸金庫の場合、利用者は貸金庫に入室するための鍵、あるいはカードキーを使って中に入ります。
その後、内部にある自分の金庫を専用のカギで開けて利用する形になりますが、そのどちらか、あるいは両方で、事前に設定した暗証番号を入力します。
ちなみに、そこに行員は介在しません。
ただし、他の銀行では違う方式をとっている場合もあり、その利用方法はさまざまです。
一方、預けられないものは以下の通りです。
預けられないもの
変質の恐れがあるもの
貸金庫のサイズを超過するもの
以上は誰が見ても納得のいく内容ですね。
貸金庫には長く保管しても変質せず、銀行にも損害を与えないものであれば何を入れても問題ありません。
しかしサイズによってはかなりスペースが小さいので、おのずと入れるものは決まってきます。
それが、実際に貸金庫を利用している筆者の実感です。
貸金庫の支払い方法と金額の目安
今度は、貸金庫の利用料の支払い方や、金額などについて説明します。
貸金庫の利用料は半年分を一括で払う方式となっています。
筆者の取引銀行では特大、大、中、小の4種類があり、最高で年間約4万円、最安で約1万円となっています。
我が家の場合、最初は最安のサイズで契約しようと思いましたが、それだと預けたい重要書類が入らなかったため、A4サイズの書類が入るサイズの貸金庫を選びました。
なお、サイズや料金に関しては銀行ごとに違いますので、ご契約をお考えの方は各銀行にお問い合わせください。
貸金庫審査に通るための審査条件
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続いて、貸金庫審査に通るための審査条件についてお話しします。
結論から言えば、貸金庫は銀行の審査に通れば、富裕層でなくても借りられます。
逆に言えば、富裕層でも貸金庫を借りられない場合があるということです。
貸金庫を借りるにあたっての大前提となる条件は、
です。
既に説明したとおり、銀行の貸金庫は何よりも安全性を重視します。
だから、全く素性や資産状況がわからない一見さんは、富裕層であっても貸金庫を借りられません。
そのため、貸金庫を借りたい場合は、まずその銀行の口座を開設する必要があります。
それを前提とした一般的な条件には、次のものがあります。
(2) 住宅ローンなどを利用しており、滞りなく返済している
(3) 税金または公共料金(電気・ガス・水道・NHK)の引き落とし先になっている
(4) 積立預金をしている
(5) 一定以上の預金額がある(預金金額が大きいほどよい)
上記の条件のすべて、あるいは一部を満たしている人は、銀行の優良顧客だとみなされます。
つまり、銀行にとってメリットのある優良顧客であることがわかれば、銀行は原則どなたにも貸金庫を貸すことになっています。
貸金庫の審査条件は銀行によって違う
しかし、これらの条件を満たしていても貸金庫が借りられない場合があります。
その場合は以下の理由が考えられます。
・ 貸金庫がない店舗が多い銀行である
・ 銀行独自の方針で審査が厳しくなっている
我が家の場合、貸金庫を借りる予定の銀行が上記のような状況でしたので、審査が難航しました。
我が家が貸金庫を借りるにあたり満たしていた条件は、上記の(3)、(4)、(5)。
家計のメインバンクとしてフル活用し、貯蓄総額も多い状態でした。
しかしながら、勤務先の取引の関係で、給与振込の口座が家から離れた別の銀行に指定されていたため、その銀行では給与振込の取引はありませんでした。
その点が審査では大きなマイナスとなり、一時的に審査が難航しました。
結果的には我が家の給与所得や資産額などの証明を行ったことに加え、筆者の自宅が銀行支店と同じ学区内にあることが決め手となり、結果無事に借りることができました。
筆者がかつて勤務していた銀行では、「どこの地域に住んでいるか?」という審査基準はなかったため、その点が審査に通るための一つの基準となったことに驚きました。
しかしながら、そこまで厳しい審査基準があるからこそ、銀行の信用度を保てるのだとも思いました。
そう考えれば、そのような厳しい対応にも納得がいくのです。
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貸金庫のメリット・デメリットを知り、上手に利用しよう
今回は筆者の体験談をもとに、貸金庫のメリットやデメリット、利用料金、借りる際の審査基準などについてお話ししました。
利用にあたり多少不便な点はあるものの、他に類を見ないほどの安全性がある貸金庫は、料金以上の利用価値があります。
これからますます貸金庫の需要が高まり、審査にも通りにくくなるかもしれませんが、銀行の優良顧客となれば、富裕層でなくても審査をクリアすることは可能です。
貸金庫を借りる場合は、この記事で説明した審査基準を満たす優良顧客となり、銀行と良好な関係を築くことを心がけるとよいと思います。(執筆者:大岩 楓)