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「かぼちゃの馬車」事件
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スマートデイズが販売した女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の破綻で、投資家だけでなく、融資したスルガ銀行に対しても8月頃に金融庁による行政処分の可能性が出てきました。
「かぼちゃの馬車」は、普通のサラリーマンをオーナーとしてシェアハウスに投資させるというもの。
元手がそれほどなくても、オーナーになると確実に儲かり、老後資金を確保できるという触れ込みでした。
「かぼちゃの馬車」の具体的なしくみ
1. オーナー希望者が銀行から借金してシェアハウスをスマートデイズから購入します。
2. 購入した物件については、オーナーがこの物件をスマートデイズ社に貸してまとまったお金をもらうというサブリース契約をします。
この契約で、スマートデイズは、空室の有無にかかわらず一定の収入を保証します。
しかも、入居者の募集から物件の管理、家賃の徴収など事務的なことは、すべてスマートデイズが行います。
例えば、
もし、この当初の説明どおりならば、スマートデイズは物件を売ったり管理したりして儲かり、銀行は高額な融資ができて儲かり、投資者は家賃の一部が入って儲かるとなっていたはずです。
なぜこのシステムは破綻したのでしょうか
一番悪いのは、採算の合わない物件に騙してお金を投じさせたスマートデイズであり、個人の返済能力を無視して多額の貸し込みをした銀行です。
ただ、騙されてお気の毒ではありますが、ちょっと考えればわかるような詐欺の手口に乗ってしまった被害者にも、まったく問題がないとは言えません。
投資の世界では、儲るなら人にはやらせないのが原則
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というのは、もしこのシステムが成功するものだったとしたら、なぜ普通のサラリーマンに、濡れ手に粟で儲かるような投資をさせたのでしょうか。
本当に儲かるなら、個人投資家になど売らずに、最初からスマートデイズが銀行からお金を借りて、すべて自分でやっているはずでしょう。
けれど、わざわざ宣伝費をかけてまで個人投資家を募ったのは、
・ スマートデイズには破綻の構図が見えていた。
・ 銀行としてもそれがわかっているのでスマートデイズにはお金は貸せない。
・ 個人相手なら、最悪の場合でも親戚などから必死でお金を工面して返すと計算していた。
と考えられます。
「すべて自分でやればもっと儲かる」を実践した人
日本で初めてウィークリーマンションを始めたツカサの川又三智彦元社長でした。
川又氏は、バブル時代、サラリーマンをやめて短期貸しのワンルームマンションをはじめました。
川又氏の考えたスキームは、
1. ワンルームマンションを建てる
2. その物件を担保に銀行からお金を借り、そのお金でまた新しいマンションを手に入れる
3. それを担保にまた銀行からお金を借りる
というものでした。
これを繰り返し、最盛期には所有部屋数は4,000室になりました。
借金も1,500億円ありましたが、地価が上がって評価額が3,000億円になっていたので、瞬く間に差し引き1,500億円を持つ資産家となりました。
これは、当時、川又氏から直接聞いた話ですが、多くの銀行が、夜討ち朝駆けで何とかお金を借りてくれないかと家の前に待ちかまえていたそうです。
ところが、バブルが弾け、地価が下がり、物件の評価額もつるべ落としに下がりました。
そうなると、あれだけ借りてくれと言って来ていた銀行も、手のひらを返すように、今まで貸した金を返してくれと言って来たのだそうです。
結果、資金繰りに詰まって、川又氏は経営破綻しました。
不動産では、「キャピタルゲイン」も「インカムゲイン」も狙うのは難しい
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投資で利益を得る場合、
・ 値上がり益のキャピタルゲインで儲けるか
・ 配当など決まって受け取れる利益のインカムゲインで儲けるか
・ その両方を狙うか
ということです。
アパートやマンション経営は、地価が上がっている時には、キャピタルゲインもインカムゲインも両方を狙うことができます。
地価が下がり続ける中では、どちらも狙えない
地価が上がらないのでキャビタルゲインを狙えないのは当然ですが、地価が下がっているということは土地に対するニーズが減っているということ、物件の数に比べて借りる人が減っているということです。
実際に、人口が減少しているのにアパートやマンションは増え続けていて、賃貸業者同士の競争が激しくなっています。
こうした中では、家賃など上がるわけがありません。
特に、2017年はアパートが急増しました。
相続税の実質増税によって、持っている土地にアパートを建てざるを得ない人が増えたためです。
もし、
これが成功するなら、スマートデイズの社長も川又氏のように自分で投資したでしょうし、銀行も、スマートデイズに多額の融資をしたはずです。
本当にうまい儲け話は、知っている人の間だけで回され、外には出ません。
皆さんまでは回ってくるということはないのです。
もしそんな話と出会ったら、詐欺ではないかと疑ったほうがいいでしょう。(執筆者:荻原 博子)