インターネットの世界には様々な情報が溢れており、その情報が正しいとは限らない場合もあります。
特に、専門的な分野になるとその傾向が顕著になり、誤った情報を鵜呑みにしてしまう方も多数いらっしゃいます。
今回は、住宅ローンの代表的な種別である「変動金利」と「固定金利」について、金融機関の利益である「利ざや」の観点から正しい情報をお伝えします。
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目次
「変動金利」と「固定金利」の違いについて
住宅ローンは長期に渡る融資になるため、毎月の返済額を安定させることが最優先の課題でした。
そこで、借入期間中は返済額が変わらない「固定金利」が、政府系金融機関である住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)により提供されました。
しかし、固定金利は借入期間中のリスクを金融機関側が負担することになるため、金利水準ではどうしても高くなりがちでした。
そこで、金利水準を引き下げるかわりに、利用者に金利変動リスクを負担してもらう「変動金利」が提供されるようになりました。
変動金利は、確かに利用者が金利変動リスクを負いますが、住宅ローンという公共性に鑑み、金利水準が上昇しても5年間返済額が変わらない「5年ルール」や、5年後の返済額の上昇率は1.25倍以内とする「125%ルール」などが、一部の金融機関を除いて適用されています。
銀行の資金調達方法を正しく理解する
ここでインターネットの情報として「金融機関が変動金利を勧めるので、金融機関は変動金利の方が儲かる」などというような誤った情報が現在も見受けられます。
前章の記述を読んで頂ければ、直ぐに理解できると思いますが、「変動金利」は利用者が金利変動リスクを負い、「固定金利」は金融機関が金利変動リスクを負います。
当然ながら、リスクを負う側が、そのリスク相当分を利ざやで賄うのが通常であり、そう考えると「変動金利」の方が利ざやが低く、「固定金利」の方が利ざやが高くなります。
そして、金融機関は今月分の資金を前月の内に手当する必要があり、銀行の利益が乗っていない純粋な調達金利を「ベースレート」と呼んでいます。
まとめ
このような情報がきちんと説明されていれば、「変動金利の方が儲かる」というような誤った情報が拡散することはないと思うのですが、金融機関側も資金調達の詳細までは説明しません。
ただいずれにしても、「金融機関が勧めるから」とか、「儲かるから」といった理由に左右されるのは、借入額や借入期間が長い住宅ローンではお勧めできません。
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住宅ローンが、固定金利から始まったことを考えると、現在の金利水準1%台である固定金利は、非常に低い水準でお勧めです。
また、返済期間が比較的短期間であれば、変動金利を検討されるのも良いでしょう。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)