離婚の話が出てきたとき、未成年の子どもがいると
が大きく問題になります。
特に子どもが小さいと、高校へ進学した後の教育費が、きちんとまかなえるか不安になるところです。
実際のところ、教育費を全額カバーするのは難しいにしても、少しでも足しにしたいところです。
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目次
養育費を決める「養育費算定表」
養育費を決めるときには、一般的に「養育費算定表」という表を使います。
これは15年位前になりますが、東京と大阪の家庭裁判所の裁判官が中心になって、養育費の金額を計算するにあたり、効率よく取り決め、手続きを早く進められるよう考えられたものです。
夫・妻の収入に応じて、税金や仕事にかかる費用(スーツなど洋服代・交通費など)や住宅費、医療費などを、法律と統計資料に基づいて標準的な割合で計算しています。
また、夫・妻、未成年者の生活費についても、標準的な生活費を指数化しています。
インターネットでも見れますので、ご覧になった方もおられることでしょう。
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なお、教育費については公立学校の学校教育費をベースにしています。
不足分については、個別に支払い方法や割合について協議をする条項を設けたり、収入にゆとりがある一方(通常は夫)が全額持つ、といった条項を設けることが多いです。
相手の収入をどうみて計算するか
問題は、この「養育費算定表」を使って養育費を決めるにも、相手の収入が分からない、あるいは自営業などで年により金額の変動があったり、実際の収入とかけ離れていることが疑われる場合、収入をどうみて計算するかです。
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相手の収入が分からない場合は?
相手が結婚当初から、あるいは途中から給与明細を見せてくれず、お金の管理を自分でしていたので、
・賞与があるのかどうか
・賞与をいくらもらっているのか
などが分からないという場合があります。
そういった場合には、勤め先が分かっていれば弁護士に依頼をして、弁護士会照会で収入の開示を求める方法があります。
ただ、そうなると「離婚問題が生じていると会社に知れてしまう」こと、「個人情報の関係で会社が応じない可能性がある」ことから、やや取りづらい方法です。
話し合いで、相手がかたくなに収入資料を示さないのであれば、いきなり上のような照会の方法を使うよりも、離婚調停で、他の条件面の交渉とともに、調停委員を通じて収入資料の開示を求めた方がスムーズなこともあります。
それでも開示をしてくれないときは、裁判所を通じて調査を求める方法もあります。
あるいは「賃金センサス」(厚生労働省統計情報部が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたもの)で、職種別か、学歴・年齢別で収入を推計することで、養育費を決めることもあります。
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相手が自営業で金額の変動が大きい・収入額に疑問があるときは?
自営業の場合にも、養育費算定表を使って計算できますが、ベースにするのは、課税標準を計算するときの収入金額(売上金額)ではなく、課税される所得金額によります。
ただ、この場合すでに標準的な金額は、養育費算定表で考慮されているはずの、社会保険料・医療費などがさらに控除されていたり、実際には支出していない配偶者控除・基礎控除などもされています。
ですから、特にこれら支出をしていないものは戻した上での計算になります。
業種によっては年ごとに売上の変動が激しく、課税される所得が、数百万あるかと思うと、別の年にはゼロ・あるいはマイナスということもあります。
こういったときには、何年かの平均で計算していくか、場合によっては、「賃金センサス」で業種ごとの賃金の平均値を基準にして推計する方法もあります。
これは自営業の場合で、自分で毎年確定申告をしていて、課税される所得額を計算する際に、売上や必要経費などを調整していると思われる場合にも使うことができます。
また、相手が自分で会社経営をしていて、役員報酬として給与を受け取っている場合、離婚の話が出てから急に役員報酬額を下げるという場合もあります。
そういうときは、そもそも会社の経営状況として役員報酬を下げる必要があるのか、会社の決算資料等の開示を求めることになるでしょう。
無職の場合には?
以前は仕事をしていたが今は無職である場合、女性なら今は専業主婦だが、働こうと思えばパートで働けるということもあります。
今、無職でも資格などがあったり、定職について働いていた経験があって、定職に就くことができそうな場合であれば、その職種での「賃金センサス」による推計をすることがあります。
専業主婦でも働ける事情があれば、就くことができそうな職業の平均賃金をベースに計算することも考えられますが、特に女性については、働いたことがある期間が短かったりブランクがあると、どちらかといえば、収入ゼロで計算することが多い印象があります。
いずれにせよ、養育費は子どもが将来困らないように、健やかな成長をサポートするためのものですので、できるだけ親同士が話し合って決められる方がよいと思います。(執筆者:片島 由賀)