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ようやく手に入れた念願のマイホーム
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そのマイホームに対する思い入れが強い人ほど、住宅ローン返済が苦しくなっても、カードローンやキャッシングなどで何とか手当し、正常復帰できると信じています。
しかし残念ながら、住宅ローン返済が苦しくなるということは、オーバーローンの可能性が強く、早めに抜本策を考えなければ、最悪自宅を手放すことになりかねません。
今回は、住宅ローン返済が苦しくなった時の対処方法について解説します。
延滞の期限は3か月と6か月
金融機関では、延滞してしまう債務者に対して、債権管理の部署を設け、そこで一元管理しています。
3か月までの延滞に対して
コールセンターのオペレーターが延滞している債務者に電話をかけ、延滞している分の入金を促します。
例えば、住宅ローン返済額が毎月10万円、延滞月数が3か月だった場合、遅延損害金も含めて35万円程度の入金が必要です。
ボーナス返済が無ければ、ボーナス分を入金に当てるなどして、その場は何とかしのげるでしょう。
しかし、同じような状況が続いた場合、また延滞を繰り返します。
そうなると、ボーナス分だけでは足りずに、銀行カードローンやクレジットカードのキャッシングで何とか当座をしのごうとします。
3か月の延滞が解消できない
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金融機関でも、3か月の延滞がなかなか解消できない債務者は、住宅ローン返済以外に、上記のような負債がさらに増え、コールセンターの対応だけでは正常復帰は困難と判断します。
個別具体的に債務者を管理する債権管理の担当者が、今後の方針などを、延滞している債務者と話し合います。
例えば専業主婦の世帯であれば、パートなどで世帯の収入を増やせないかや、親族などで援助してくれる人はいないかなど、さまざまなヒアリングし、対応策を考えます。
債権管理の担当者がいくらプロフェッショナルであっても、延滞している債務者に収入増加の方策がなければどうしようもありません。
延滞月数が6か月を超える
延滞月数が6か月を超える期間が続き、債務者にも正常復帰の道がないと判断した場合は、自宅をできるだけ高く売却して、債権回収する方法に移行します。
自宅の売却方法は任意売却も視野に
正常復帰が困難となった場合は、昔は金融機関が抵当権を実行する、「競売(けいばい)」の手続きに進むのが通常でした。
しかし競売では売却価格が低くなり、金融機関や債務者にとっても良い結果となりません。
そこで近年は、金融機関が抵当権を抹消することを条件に、そのような物件を専門に扱う不動産業者に売却を依頼する例が増えてきました。
これを、任意に売却することから、「任意売却」と言います。
「任意売却」であれば、相場よりも低くなるものの、「競売」よりも高く売れるため、金融機関や債務者、不動産業者にとっても落とし所となりやすいのです。
なお、このように自宅を売却しても、残債が残った場合は債務者は返済を続ける義務があります。
場合によっては、金融機関側が債務免除する場合もありますが、契約上は完済する必要があります。
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最善の方法は何より早く相談
文章だけを読むと、淡々と進むように感じられますが、この間には債務者と金融機関の間で、さまざまな思いが交錯します。
そして、最終的に自宅を処分しなければならなくなった債務者の多くは、周りの目を気にして、金融機関への相談が遅れた人たちです。
早めに相談していれば、何らかのアドバイスをもらえたかもしれません。
現在は、地銀を中心にオーバーローンが多発していますが、「金融円滑化法」が施行されていた関係で、相談体制はむしろ強化されています。
住宅ローン返済で苦しくなったら、現在返済中の金融機関に早めにご相談ください。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)